鼻骨骨折の患者の看護(治療方法・看護計画・注意点・スキル)について

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鼻骨骨折の患者の看護(治療方法・看護計画・注意点・スキル)について
   
くるみ 看護師
くるみさん(看護師)

このコンテンツは、弊社が看護師免許を確認した看護師が執筆しておりますが、ご自身の責任のもと有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。

鼻骨骨折は男性に多く見られ、顔面骨骨折の中でも約10%を占めると言われています。

鼻骨は、とても薄く比較的弱い力であっても簡単に折れてしまうため、

  • 自転車やバイクなどの交通事故
  • スポーツなどで鼻を強く強打する
  • 喧嘩などで鼻を殴られた

等が原因となって起こります。

受傷後は、折れた状態で放置していると折れた状態で骨が癒合してしまいますが、早期に処置をすれば比較的容易に改善されます。

今回は、鼻骨骨折の患者について看護師として必要な知識をまとめました。

鼻骨骨折の患者の治療方法

鼻骨骨折の患者の治療方法

鼻骨骨折には、

  • 鼻出血
  • 内出血
  • 鼻の変形
  • 鼻のつまり
  • 腫脹
  • 疼痛

等の症状があり、骨折の有無ついてはレントゲンやCTで比較的容易に診断することができます。

骨折していた場合の治療方法は、以下で紹介していきます。

鼻骨骨折徒手整復術

鼻骨骨折徒手整復術は、鼻骨骨折受傷まもない段階で浮腫も軽度の状態の時に行われる治療法です。

麻酔をしみこませたガーゼを鼻の中に挿入し麻酔をして、麻酔が効いたことを確認した後に剥離子やワルシャム鉗子などを鼻腔に入れて整復します。

その後、両鼻腔にガーゼなどを挿入し外固定を行い終了しますが、浮腫が強い場合であれば、数日後に実施する場合もあります。

全身麻酔になる場合もある

小児や痛みに神経質な患者に対して全身麻酔で処置を行う場合があり、その際はモニターの管理や手術前・中・後の観察が特に重要になってきます。

術後数日は、痛みが生じる場合がありますが、鎮痛剤の使用でコントロールして両鼻腔のタンポンは3~4日で抜去、外固定は1週間ほどで外します。

鼻骨骨折観血的手術

鼻骨骨折観血的手術は、鼻骨骨折受傷後数日経過してしまったものや、複雑な骨折の場合に行われます。

鼻腔内より鉗子を挿入して整復した後、外固定するまでは徒手整復術と変わりませんが、それ以外に皮膚や粘膜を切開しワイヤーやプレートで直接鼻骨を固定します。

内固定で行うため、治癒するのにも時間がかかります。

鼻骨骨折の患者の看護計画

鼻骨骨折の患者の看護計画

それでは、看護計画について考えていきましょう。

今回の看護計画は、手術を実施した場合についての計画となります。

#1手術施行に対する不安

看護目標 ・検査の必要性、手術のイメージつけ、術後の状態を理解することができる
OP
(観察項目)
・検査・処置、治療に対する理解度
・患者の表情・態度・発言の状況
・不安の程度
・食欲や食事量の状況
・睡眠状態
・手術に対する受け止め方
・術後の状態~社会復帰までの理解
TP
(ケア項目)
・術前検査の実施
(不安を取り除くために言葉遣いや態度に気を付ける)
(プライバシーの守れる場所の確保)
(時間にゆとりを持って説明を実施)
・不安に対する訴えや態度に対してしっかり対応
(内容に応じて医師とも連携をとり説明する)
・医師に相談のもと睡眠導入剤の使用を検討
(不安による睡眠障害が生じる場合)
・医師の説明を聞き、家族に現在の患者の状態を把握してもらう(協力が得られるようにするため)
・手術に対する受け止め方を確認して必要に応じて補足
・術後から退院、社会復帰までの不安を受け止める
EP
(教育項目)
・不安に感じたことがあった場合はいつでも話しても良いことを伝える
・患者からの訴えについては情報共有する
・検査や手術について理解できるまで何度も質問しても良いことを伝える
・不眠時は睡眠導入剤を使用できることを伝える

#2受傷時~術後に疼痛がある

看護目標 ・疼痛の程度を患者自身伝えることができる
・疼痛を緩和することができる
OP
(観察項目)
・疼痛の状態(強さ・持続時間など)
・患者の表情や訴え
TP
(ケア項目)
・医師の指示のもと、適切な鎮痛剤の使用を行う
・患部周囲をアイシングする
(患部は固定しているので触らないように注意)
・疼痛時は患者のそばに寄り添い傾聴する
・疼痛に対する患者の忍耐を褒め励ます
EP
(教育項目)
・疼痛時は我慢しないように説明する
・痛みが増強する時に患者自身で観察・理解し、伝えられるよう指導
・鎮痛剤の効果などを説明し、患者自身で観察・理解できるよう指導

#3ガーゼなどを挿入していることや分泌物貯留による呼吸苦がある

看護目標 ・口呼吸による呼吸苦がない
・咽頭部に流れ込んだ血液などを飲み込まずに喀出できる
OP
(観察項目)
・呼吸状態(呼吸回数、血中酸素濃度、呼吸の深さなど)
・患者の表情や発言
・呼吸苦の有無、程度
・分泌物の性状・量
・咽頭部の違和感など
TP
(ケア項目)
・必要時吸引を実施する
・口腔内の乾燥しないようにうがいを促す
・ゆっくり呼吸をするように促す
・安楽な体位を取る(側臥位やファーラー位など)
・タッチングやマッサージを行う
EP
(教育項目)
・咽頭部に流れ込んだ血液等は吐き出すよう指導
・患者自身で呼吸しやすい体位を伝えるよう指導
・呼吸苦で不安になる場合は我慢しないよう伝える

#4感染

看護目標 ・創部の感染を起こさない
OP
(観察項目)
・バイタルサイン
・分泌物の性状・量(血性や膿様ではないか)
・ガーゼに付着している排出物の性状・量(血性や膿様ではないか)・臭気など
・発赤・腫脹の有無
・創部の疼痛の有無・程度
TP
(ケア項目)
・医師の指示の元、ガーゼ交換を実施する
・性状や量に異常がみられる場合はすぐに医師に報告する
EP
(教育項目)
・疼痛や違和感など生じる場合はすぐに伝えるよう指導
・自分でガーゼ交換や患部に触れないよう伝える
・いつもと違う分泌物が排出される場合は伝えるよう指導

鼻骨骨折の患者の看護の注意点

鼻骨骨折の患者の看護の注意点

鼻骨骨折の患者を看護する際は、どのようなことに注意が必要なのでしょうか。

以下で詳しく見ていきます。

血液を飲み込ませないようにする

鼻骨骨折の患者は、鼻出血が咽頭部に流れ込むことがあるため、その時に患者に吐き出すように促しましょう。

多量に血液を飲み込むと、嘔吐を誘発してしまいます。

適宜咳嗽を促す

鼻骨骨折の患者は、整復後両鼻腔にガーゼなどを詰め込むため鼻呼吸ができなくなります。

そのため、口呼吸がメインになり口腔内の乾燥が起こることから、適宜咳嗽を促すようしましょう。

鼻腔内のガーゼや外固定を勝手に除去しないように伝える

鼻骨骨折の患者には、鼻腔内のガーゼなど外固定を勝手に除去しないように伝えます。

小児や認知症の高齢者の場合は、必要に応じて身体拘束を行うこともあります。

鼻骨骨折の患者への看護で求められるスキル

鼻骨骨折の患者への看護で求められるスキル

鼻骨骨折の患者を看護する際に求められるスキルには、どのようなものがあるのでしょうか。

以下で確認していきましょう。

外来オペにも対応できるスキル

鼻骨骨折は、入院せず外来での治療で完治する場合があり非観血的整復術の場合は、大体が入院をせず外来で処置を行います。

以下のことをしっかり実施できるかが求められます。

患者の準備ができるか ・バイタルサイン測定から手術の準備まで患者に説明しながら行う
外来オペの準備ができるか ・瞬時に必要物品を揃える
(外来オペは突然決まるため)
処置の流れを把握しているか ・術式をしっかり理解
・どのような流れで処置が行われていくのかを把握
(スムーズに処置を行うため)
・必要物品を先読みしつつ介助
臨機応変に動けるか ・患者のケアを行いつつ医師の介助

精神的なケアができる看護師

鼻骨骨折は、比較的若い患者に多く、見た目で分かるくらい変形するため「完全に鼻がまっすぐになるのか」「元通りになるのか」等、ボディイメージの変化を気にする患者が多いです。

そのため、「しっかり治療をすれば、見た目も比較的問題なく治る」という説明をすることが重要で、患者の訴えを傾聴することを大切にしましょう。

まとめ

今回は鼻骨骨折について説明してきましたが、いかがでしたか?

鼻骨骨折は見た目もさることながら、かなりの鼻出血と疼痛を伴うため、患者も不安と痛みとでパニックになる場合もありますが、冷静に対応していくことが必要です。

入院中の看護でも、感染には十分注意することや疼痛管理、不安の対応などをしっかり行うことが大事で、比較的入院日数も少ない疾患であるため、短い入院期間で良い信頼関係を気づけるように看護していきましょう。

   
執筆・監修看護師

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