看護師へ不定愁訴を訴えてくる患者の特徴と対応について

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膀胱がんの患者の症状
   
川野 看護師
川野さん(看護師)

このコンテンツは、弊社が看護師免許を確認した看護師が執筆しておりますが、ご自身の責任のもと有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。

不定愁訴とは、医師により診察がなされ、検査を行っても異常がなく、治療の必要のないもののことを指すと言われています。

「しんどい」「だるい」「身体が重い」など、患者の主観によってなされる不定愁訴にどう対応すればよいのか分からないという看護師も多いのではないでしょうか。

ここでは、看護師へ不定愁訴を訴えてくる患者の特徴や、正しい対応についてご紹介します。

看護師を悩ます患者の不定愁訴とは

不定愁訴に悩む女性看護師

患者からの不定愁訴は多様であり、さまざまな訴えがあります。

その中でもより多く見られるのが倦怠感(だるさ)、不眠、いらだち、くらくらする等といったものが挙げられます。

例えば、

  • 治療後病状が安定し主だった苦痛症状が改善されたにも関わらず「しんどい、だるい」「身体が重い」「頭が重い」
  • 昼夜のリズムを計り眠剤や安定剤等を服用しているにも関わらず、消灯後に「眠れない」とナースコール
  • 夜間の巡回時には入眠しているように見えても熟睡感が得られずに「寝た気がしない」
  • 「いらいらする」「気分が晴れない」等のいらいら感
  • 「何もやる気が起こらない」といった無気力感
  • 「なんだかくらくらする」「ふわっとしたり、立ちくらみしたりする」

などの訴えがよく聞かれます。

看護師が不定愁訴に悩まされる原因は?

しんどいと言われれば体をさすり、必要な薬剤が投与されているのかを確認し、看護師は医師やその他のスタッフと連絡を取り合い協同してその訴えに対処しようと試みます。

しかしながら、

  • その訴えの持つ「なんとなく」という漠然としているところ
  • 明確な治療の対象には当てはまらないところ
  • その訴えが患者の主観に応じて昼夜を問わずになされるところ

以上の点に、看護師は悩まされます。

看護師に不定愁訴を訴える患者の特徴

看護師に不定愁訴を訴える患者

看護師に不定愁訴を訴える患者の特徴として、

  • どちらかと言えば細やかな性質の患者
  • 治療が長期化している患者
  • 安静の必要等で行動に制限を要する患者
  • 慢性期の病気(高血圧、気管支喘息、がんの長期的治療時等)の患者
  • 不意の入院で治療がひと段落した時の患者

などが挙げられます。

患者が不定愁訴を訴える際、その表情は曇っていることがほとんどです。多くは不安そうにしており、イライラした様子を伴うことも少なくありません。

特徴としては、今現在置かれている自分の状況に不安や不満があり、先々の見通しが不安定な患者に、不定愁訴なる訴えが多く見受けられます。

不定愁訴がある患者の年齢や診療科の特徴は?

年齢としては、どの年代にも不定愁訴を訴える患者はいますが、50歳以降のホルモンバランスの変化が生じる年代に多いのではないでしょうか。

とりわけ多く見られる診療科としては、精神科、内科、次いで婦人科等であるでしょう。

患者が看護師に不定愁訴を訴える理由

不定愁訴を訴える高齢男性の患者

個々の患者の持つ背景により様々な理由があるでしょうが、不定愁訴を呈する理由としては、何らかのストレスを強く、または長期的に感じることによる、自律神経系の乱れによるものであるでしょう。

その中には、

  • 「これから自分の体や社会的な立場は一体どうなっていくのだろうか」「この病気はいつになったら良くなるのか」等の不安感
  • 「自分は、誰かに必要とされる自分なのだろうか」といった寂寞とした思いによるもの
  • 過労や過度の重圧等による慢性的な疲労によるもの

などによって不定愁訴を訴えることが多くあります。

補足説明!

補足事項
女性の場合は、特有である更年期障害や月経前症候群等のホルモンバランスの変化との関連が考えられます。

不定愁訴を訴える患者への看護師の正しい対応

不定愁訴に対応する女性看護師

看護師が患者から不定愁訴を訴えられた際の正しい対処法についてご紹介します。

患者の訴えをしっかり聞き安堵感を与える

不定愁訴に対処するうえで、まずは何より患者の訴えをよく聞くことが大事です。

自分の辛い症状についての話をしっかりと聞いてもらったと自覚することが、そのまま安堵感につながり、患者が落ち着きを取り戻すことも少なくありません。

何度も繰り返される訴えに対して、看護師はいらだったり適当に応じたりするのではなく、個々の患者の訴える苦しみに耳を傾け、その思いを推し量り、心に寄り添う姿勢が大切です。

一人の看護師が抱え込むことのないよう配慮する

特に長時間の勤務である夜勤帯においては、度々繰り返される不定愁訴の訴えや、すぐにまた鳴るナースコールの対応に看護師の疲労やストレスも増してしまいます。

看護師自身も適切な休憩を取り、同じ勤務者同士で話し合う等をして、一人の看護師が抱え込むことのないように配慮することも必要でしょう。

ポイント!

ポイント
可能であれば家族や親しい人との時間を豊かに持ち、日々の過ぎ去りや季節の移り変わりを生活に取り入れながら、患者が「自分は一人ではない」と感じられるよう、サポートしていくことが必要であるでしょう。

まとめ

個人により多様な症状を呈し、それそのものが病気とされない不定愁訴を訴える患者に対して、看護師は患者の主観に受容的に耳を傾け、寄り添うことが大切です。

不定愁訴の訴えは何度も繰り返されますが、忍耐強く聴き、その思いを推察し、対症的な看護ケアを行うことが必要でしょう。

   
執筆・監修看護師
川野 看護師
川野 看護師
  • 保有資格:看護師
  • 施設経験:総合病院
  • 専門分野:NICU、消化器内科、呼吸器内科

実習先の総合病院のNICUで1年間、地元の総合病院でNICUや内科病棟で9年間勤務しました。そのうちの2年間は、夜勤や教育等も担いながら、育児との両立でした。かつて、インドのマザー・テレサの施設「死を待つ人の家」でボランティアを経験したこともあります。

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