腰部脊椎管狭窄症患者の看護(原因・症状・看護計画・注意点)について

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腰部脊椎管狭窄症患者の看護(原因・症状・看護計画・注意点)について
   
瀬戸 看護師
瀬戸さん(看護師)

このコンテンツは、弊社が看護師免許を確認した看護師が執筆しておりますが、ご自身の責任のもと有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。

腰部脊柱管狭窄症にかかる患者は、高齢者が最も多く、その他にも長時間同じ姿勢で仕事をしている方や、腰に負担がかかる動作を長時間行っている方がかかりやすい病気です。

腰部脊柱管狭窄症を患うと、歩行が困難になること以外にも、排尿障害・神経障害・感覚障害などの症状に悩まされることもあります。

この記事では、腰部脊柱管狭窄症の患者の看護について詳しく説明します。

腰部脊椎管狭窄症の原因について

腰部脊椎管狭窄症の原因について

腰部脊椎管狭窄症の主な原因は、先天性と後天性の2つで分けることができます。それぞれ先天性・後天性の腰部脊椎管狭窄症の原因をまとめました。

病名 病気の原因
先天性の腰部脊椎管狭窄症 生まれつき脊柱管が狭い
後天性の腰部脊椎管狭窄症 ・長時間同じ姿勢で仕事をしている
・腰に負担がかかる動作を長時間行う

先天性・後天性以外にも腰部脊椎管狭窄症の原因がある

腰部脊椎管狭窄症には長年にわたり酷使してきたことによる変形、骨の歪みからくる腰椎すべり症からくるものもあります。女性よりも男性の方が比較的多いとされています。

ポイント!

ポイント

腰部脊椎管狭窄症は保存治療が基本ですが症状によっては手術適応となります。

腰部脊椎管狭窄症の患者の症状について

腰部脊椎管狭窄症の患者の症状について

腰部脊柱管狭窄症患者にみられる症状には、腰痛と腰部から下肢にかけての違和感や痺れ、痛みがあります。その他の症状についても説明します。

強い痛みを伴うため背筋を伸ばしての歩行が困難

腰部脊柱管狭窄症の症状には、歩行時に上手く背筋を伸ばすことが出来ず、更に強い痛みを伴うものがあります。ただし、前かがみであれば歩行は可能であることが多いです。

補足説明!

補足事項

背筋を伸ばした歩行が困難な場合、間欠性跛行(歩行しているうちに痛みが生じ、休むと回復することを繰り返す)が見られることがあります。

腰部脊椎管狭窄症の看護計画について

腰部脊椎管狭窄症の看護計画について

ここでは腰部脊柱管狭窄症の患者の看護計画について、手術前と手術後に分けて説明します。

手術前の腰部脊柱管狭窄症の患者の看護計画

腰部脊柱管狭窄症の患者の手術前は主に、以下4つの計画に分けて立てる必要があります。

  • 手術を行う日までの疼痛の緩和
  • ADL低下防止
  • 環境の変化や手術による精神的ストレス
  • ストレスより生じる睡眠障害の除去

手術前の患者は精神的な不安が大きいので、特に精神的なケアの計画は重要です。

腰部脊柱管狭窄症の手術前に起こる症状ごとの対応方法

腰部脊柱管狭窄症の手術前に患者に起こりやすい症状と、その対応方法を見ていきます。

症状 症状の対応方法
患部の疼痛 ・鎮静剤の確実な投与が必要
・安楽な体位変換を施行し緩和につとめる
疼痛や感覚障害による為歩行困難 ・患者の状態を観察しながらベッド上でのリハビリを行う
・体動制限による筋力・ADLの低下防止を促す
夜間不眠などのストレス症状 ・患者の訴えや不安要素の傾聴を行う
・手術への不安解消のための説明を行う

補足説明!

補足事項
疼痛の訴えだけでは創部が直接見えない分看護が難しいかもしれませんが、様々な観察項目により重症化を防ぐことにもつながります。

手術後の腰部脊柱管狭窄症の患者の看護計画

腰部脊柱管狭窄症の患者の手術後は、主に患部の感染と合併症の予防、全身状態の観察を行う計画を立てます。更に家族と患者の社会復帰への不安などにも計画を立てることが必要になります。

腰部脊柱管狭窄症の手術後に起こりやすい症状と対応方法

腰部脊柱管狭窄症の手術後に患者に起こりやすい症状とその原因、具体的な対応方法について説明します。

術後に起こる症状 原因
創部などの発熱 ・創部への細菌感染
・創部の細菌増殖
【対応方法】
・感染を予防するために消毒時は必ず正しい清潔操作で行う
・創部の出血の量、膿は出ているか、創部周辺の熱感、皮膚の状態を細かく観察する
・高熱が続く場合は炎症反応を見るための採血を行う
・感染症と診断された場合には抗生剤と解熱剤を投与し悪化の予防につとめる
 褥瘡  ベッド上安静による体動困難
【対応方法】  時間ごとの体位変換を行い、皮膚の発赤や痛みが生じていないか確認、観察をする
 深部静脈血栓  長期の臥床
【対応方法】
・指先に循環障害が起きていないか確認し、患者の下肢へ弾性ストッキングを装着させる
・皮膚トラブル防止のため弾性ストッキングによる着脱し常に清潔にしておく
 排便  ベッド上での排泄困難
  【対応方法】カテーテル内と尿パックの浮遊物の有無の観察、尿量や尿の色、比重測定を行う
 尿路感染症  尿道カテーテルの装着
 【対応方法】
・抗生剤と解熱剤の投与を行い、尿道カテーテルを抜去する
・尿道カテーテルを抜去後は自力での排尿を促し、早期離床へ働きかける
 精神的苦痛の症状  ・手術後の予後の不安
・社会復帰への自信喪失
【対応方法】 疼痛のコントロール、正しいコルセット着用の指導などADLの自立、向上に働きかける

腰部脊椎管狭窄症の看護の注意点

腰部脊椎管狭窄症の看護の注意点

腰部脊柱管狭窄症の重症化を防ぐ為の看護の注意点を2つのポイントに分けて説明していきます。

馬尾への狭窄・圧迫をしないように注意する

脊柱管内には脳から続く脊髄が下肢へ伸びていき、神経の束と呼ばれる馬尾神経が通っています。馬尾と呼ばれる部位が狭窄により圧迫されると排尿障害や神経障害、感覚障害を引き起こします

排尿障害・神経障害・感覚障害を発見するための観察が必要

看護師は排尿障害・神経障害・感覚障害を早期発見するために、疼痛の有無の他にも下記の項目についての観察が必要になります。

  • 下腹部痛はあるか
  • 残尿感はあるか
  • 頻尿であるか
  • 尿漏れを起こしていないか

上記のような症状が見られた場合は早急にMRIやレントゲン血液検査が必要になる場合もあります。

ポイント!

ポイント
排尿障害・神経障害・感覚障害の症状の重篤度によっては手術を施行します。

手術適応の患者は術前の疼痛コントロール状況をきちんと把握しておく必要がある

手術適応の患者の場合、手術後の症状を手術前のものと比較するために、術前は

  • 何時間間隔で鎮痛剤を内服していたのか
  • 注射を施行してから効力が切れるまでどの位かかっているか

をきちんと把握しておくことが必要です。

手術適応の腰部脊柱管狭窄症の患者の特徴

手術適応の腰部脊柱管狭窄症の患者の特徴は、ブロック注射や安楽な体位の施行、また歩行時に休憩をとっても何をしていても痛みが緩和しない状態であると狭窄が進み、更に神経を圧迫している状態などが挙げられます。

腰部脊椎管狭窄症患者の看護師が注意するべき症状

腰部脊椎管狭窄症患者の看護師が注意するべき症状

腰部脊柱管狭窄症の患者が引き起こす症状で、看護師が注意しておくべき症状を説明します。

腰痛の悪化と歩行の減少によりADLの低下がみられる

腰部脊柱管狭窄症の患者にADLの低下がみられ担当者場合、廃用症候群を引き起すことにもつながります。例えば、

  • 様々な身体機能の低下
  • 動けないことによる精神的不安
  • 意欲の低下

など、新たな疾患を発症する原因となります。ADLの低下は非常に危険なのです。

身体機能の低下から筋力が衰えて骨密度の低下が見られる

骨密度は平均80%程ですが、身体機能の低下により筋力が衰え、骨密度が70%以下になると骨の強度が落ち、骨粗鬆症となるのです。骨粗鬆症となると骨折しやすくなり、骨折してしまうと更に離床を促すことは困難となります。

痛み軽減の処置後も症状が改善されず感覚障害を起こしている

骨棘のため更に脊柱管が狭窄し神経を圧迫している腰部脊柱管狭窄症の患者には、下記のような症状がみられます。

  • 痛み止め服用・リハビリや神経ブロック注射後も痛みが軽減されない
  • 痛み止めが切れる感覚が短く歩行困難になり更に感覚障害を起こしている

上記のような症状は、患者の観察により発見しやすい症状ではあります。

補足説明!

補足事項
骨棘とは、腰部に負担がかかり軟骨がすり減るとその負担を軽減するよう骨が増殖し、修復した時に棘のように変形することを指します。

まとめ

いかがでしたでしょうか。腰部脊柱管狭窄症は加齢に伴い、誰でも患う可能性が高い疾患です。もちろん看護師も例外ではありません。自分もかかる可能性がある病気であれば、関心を寄せ、知っておくと強みになるでしょう。

この記事が少しでも看護師の知識になり、役立てば幸いです。

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