摂食障害の治療方法と看護のポイントについて

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摂食障害の治療方法と看護のポイントについて
   
沢田紫織 看護師
沢田紫織さん(看護師)

このコンテンツは、弊社が看護師免許を確認した看護師が執筆しておりますが、ご自身の責任のもと有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。

拒食症と過食症を合わせたものを「摂食障害」と呼びます。一般の人達にも広く知れ渡っている精神疾患の1つであり、ひどい場合には精神科での入院治療が必要となります。

摂食障害の患者は、他人との「距離感」が上手く掴めないことも多く、看護師としては患者が依存的にならないよう注意しながら接する必要があります。

このページでは、摂食障害の患者に対応する看護師にぜひ知っておいてほしいポイントについてまとめています。

摂食障害患者の特徴と治療方法

以下が摂食障害患者の特徴です。

  • 極端な体重の変化がある
  • 体重増加への強い恐怖とこだわりがある
  • ボディイメージに対する歪んだ認知がある

また、患者が女性であった場合、極度な体重減少により月経停止となることも珍しくありません。

「食」に対する異常行動が見られる

摂食障害患者は、過食に伴う無茶食いや他人の残飯の盗み食いなど「食」に対する異常行動が見られます。

さらに症状が悪化すると、睡眠薬や下剤、浣腸の乱用、自殺念慮などの反応が見られま、結果的に通常の社会生活が送れなくなってしまいます。

ちょっとしたダイエットが引き金になるケースが多い

中学生や高校生の頃から始めた「ちょっとしたダイエット」が引き金となり、摂食障害になるケースは非常に多いです。

中学生や思春期の子どもたちは、やせることが高く評価されるという社会的評価に振り回され成熟する事に対し過度な嫌悪感を抱いてしまうことがあります。

その結果、本来はする必要のないダイエットに手を出してしまい、心身の健康バランスを崩し、「摂食障害」にまで発展してしまうことがあるのです。

ポイント!

ポイント

摂食障害患者は、母子関係に問題がある人が多いのも特徴です。母親の過干渉によるストレスのため状態が悪化することもあります。

摂食障害の治療方法について

摂食障害の治療方法は、患者の状態や摂食障害を引き起こした背景を考慮し、以下のいずれかが選択されることになります。

治療法 治療の詳細
認知行動療法 過食に至るストレス過程を振り返り
ストレス対処の方法を検討して
食行動を訂正していく。
家族療法 カウンセリングによって
家族(主に母子)間にある
葛藤を解決していく。
薬物療法 強迫的・攻撃的傾向や
抑うつ傾向にある患者に対し
SSRIなどの抗鬱薬を使用する。
身体的療法 栄養障害があるにも関わらず、
患者が治療に非協力的である場合、
鎮静させ経管栄養を実施する。
自助グループ 摂食障害の患者同士が
お互いを支え合いながら、
自己肯定感を高めていく。

どれか1つの治療法を選択するというよりは、複数の治療法を併用していくことが一般的です。

摂食障害患者を担当した際に観察するポイント

看護師が摂食障害患者を担当した際に観察するポイントは以下の通りです。

観察項目 主なチェックポイント
身体面 ・1日の食事量
・便秘の有無
・労作時の疲労度
行動面 ・食べ物や料理への執着心
・食直後の嘔吐
・衝動行動
(自殺企図など)
・活動性亢進
心理面 ・自己評価の低さ
・ボディイメージの歪んだ認知
・抑うつ感
・空虚感
・無力感
・食べ物への渇望

一般病棟に入院している患者であっても、既往歴に摂食障害がある場合は、必ず上記の項目をチェックし、異常の早期発見につとめていくようにしましょう。

看護師が摂食障害患者に接する際のポイント

摂食障害の患者に接する際、看護師はどのような点に配慮するべきなのでしょうか。摂食障害の治療に効果的な看護師の「接し方」について詳しくご紹介していきます。

患者が「ありのままの自分」を受け入れられるよう促していく

摂食障害患者は「ありのままの自分」を受け入れる体験を通して、徐々に人との関係の築き方や歪んだ思考の修正、過食の衝動をコントロール出来るようになります。

また、摂食障害患者は病気に対する嫌悪感から、看護師や他患者や家族とトラブルになることもあるため、患者がありのままの自分を受け入れられるようになるには、看護師が忍耐強く、正面から向き合っていく必要があります。

患者の依存的な態度にも毅然と対応する

摂食障害患者は、自分の欲求を実現する為に医師や看護師を独占しようと、過度に依存的な行動をとることがあります。そのため、看護をする上で気をつけなければいけないのは「患者との距離感を詰めすぎない」ことです。

患者は、自分1人だけでは心の葛藤を解決しきれないため、助けを求めるようにして他人巻き込み、他人との距離感が掴めなくなっていることが多いです。

ポイント!

ポイント

つまり、看護師は患者の内面で生じている感情や思いをアセスメントしながらも一貫した態度でケアをすることが重要です。

まとめ

摂食障害の患者の認知の歪みに寄り添い、修正を助けるのが看護師の最大の役割になります。摂食障害患者の葛藤をよく理解し、適切な距離感で根気強くアを続けなければいけません。家族ケアも必要になる疾患のため、家族の心理や行動もよく観察して欲しいと思います。

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