このコンテンツは、弊社が看護師免許を確認した看護師が執筆しておりますが、ご自身の責任のもと有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。
強迫観念とは、自分の意志に反して、考えや感情が繰り返し浮かんでくることを指し、強迫行為とは決まった行動を繰り返すことを指します。強迫観念と強迫行為により、本人が苦痛でやめられない状態を強迫性障害と定義しています。
軽度から重度まであり、軽度で生活に支障がきたさなければ治療の対象外にはなる場合もあります。入院されている方は重度の方が多く、非常に追いつめられている患者が多いです。
このページでは看護師が知りたい強迫性障害の看護に関するポイントをご説明していきます。
強迫性障害の患者の特徴を知ろう
発症原因は、児童期から思春期に心に生じる不安をコントロールするためだったと考えられます。更にコントロールすることへのこだわりが増えていき、苦痛へと繋がってしまったと考えられます。
強迫性障害の患者の考え方の特徴を以下の表でご紹介します。
強迫性障害の患者の考え方 | 詳細 |
両極端な考え方 | 0か100か、白か黒かの考え方を持ち合わせており、 「こうでなければいけない」と思い込む感情が大きいことを指す |
グレーゾーンに対する耐性が無い | ・白と黒の中間地点の考え方を持てない ・持つ事に違和感が大きく、結論を急ぐ ・どちらからに近づけようとしてしまう |
不快に対する感じ方が過度に強い | 不快感を強く持ち、払拭しようとして過度に強迫行為をしてしまう |
自分ルールがある | ゆずれない自分のルールが決まっている |
特徴の注意点としては、全ての強迫性障害患者が潔癖ではありません。不快を取り除く人も入れば、ゴミを溜め込む人も居ます。そのため執拗なこだわりがそこにはあります。
強迫性障害患者の看護計画について
観察ポイントと看護 | 看護計画 |
強迫的な行動があるか | 手洗いについてどのくらいの時間をその行動に使っているか (1時間以上かなど) |
強迫観念はあるか | 「菌がついて汚い」と訴えるかなどを観察する |
強迫観念と強迫行為が表裏一体の状態であるか | 「菌が汚い」という強迫観念と、 「菌が手についた」といって手洗いをし続けるかなどを観察 |
他人を巻き込む事はあるか 他者に手伝わせる事があるか |
・手洗いに対し、「水道の蛇口をひねってください」など 看護師や他の患者に言うことがあるか観察 ・押し付けがましく、指示的でないか、 権力性や支配性が無いかも観察※1 |
確認行為が無いか | 「菌がついていますよね、手洗いした方が良いですよね」と 確認行為がないか観察 |
強迫観念・強迫行為がどの範囲か | すべてのことにおいて清潔でないと落ち着かないのか、 ある特定の事なのかを観察 |
自分の思い通りにならないとイライラするか | 暴力的になったり、家族に当たり散らしたり、 特定の家族にだけ衝突するのかなど確認 |
薬物療法で一時的に治まるのか | どのようになると症状が穏やかになるのかを観察 |
対応の仕方にコツがあるのか | 確認行為が済めば、落ち着くのか、 本人が納得するのはどのラインなのかを確認 |
症状の強さに変化が生じているか | 持続時間、いらいらの程度、暴力の激しさ、 過去の行動を振り返る事が出来ているかを観察 |
※1例えば、子供と靴を買いにいった際、子供が並んでいる靴を手に持ち、靴底を触ったら「汚い!」と激怒し手荒いが済むまで許さないなどです。
入院初期の強迫性障害患者の場合
信頼関係を形成する
まずは患者の話を傾聴し、全て受け止める事から始めます。患者は自身の強迫行為に対して後ろめたさを持っているため、最初からオープンにはしてきません。看護師には安心して話して良いということを思って頂けるよう関わっていく事が必要です。
入院中期の強迫性障害患者の場合
症状を自由に出していい環境づくり
薬物療法を組み合わせながら、症状を自由に出していい環境を整えます。自由に出せない事が、一番のストレスになってしまうからです。
しかし、症状自体も苦痛を伴っています。そのため、限界を超える場合はリミットを決めておくと良いでしょう。
具体的な対処行動を試してみる
例えば、先に述べたようにリミットを決めることや、辛くない範囲で、制限をかけることです。そして、論理的に、菌は無い、汚くない、必要ないことはしなくていい、という思考を持つように促すことです。
無理が無く出来そうな行動パターンを見つけていけると良いでしょう。
家族への感謝
自分でも対処出来るというじかんが増える事で、家族に迷惑をかけていたことや家族の有り難みが分かると同時に、自尊心を獲得出来ます。そのアプローチを看護師が行います。
入院後期の強迫性障害患者の場合
強迫性障害患者の患者は、感受性に優れている事が多くあるため、作業療法等でその感受性を生かして取り組める何かを探して、視野を広げていくと良いでしょう。
強迫性障害患者の治療に効果的な看護師の接し方
強迫性障害患者の治療に効果的な看護師の接し方は「待つという接し方をすること」「患者を受け止める時間を持つということ」この2つになります。それぞれ詳しく説明してきます。
待つという接し方をする
強迫行為が長引いても、待つ時間を持つ事が大切です。
- ずっと手を洗っている患者もいます
- ずっと同じ姿勢で寝て、塵や埃をベッドの端に溜めている患者も居ます
無理に、こうしなさい、と指示的になるのは良くありません。患者は、自分のルールがあるため、そのルール通りに動かないと、辛く、ルール通りに動く事も辛いのです。矛盾していますが、そこをよく理解しましょう。
しかし、本人が辛そうなのであれば、優しくストップを提案してあげましょう。
患者の気持ちを受け止める時間を持つ
患者の気持ちを聞く時間を持ちましょう。
- 「どうしてこれが気になるのでしょうか」
- 「どうしてこの行動をしなければいけないのでしょうか」
- 「辛い気持ちはありますか」
と、静かに問いかけてみてください。最初は患者は何も語らないかもしれません。
しかし、患者との信頼関係が出来てくると、ぽつりぽつりと感情を話してくれます。
- 「本当はやめたい」
- 「本当は辛い」
- 「自分が嫌だ」
などです。その際看護師はしっかりと受け止め、受容し共感してください。受け止めてもらえている、と感じる事で、患者の心が和らぎます。
そして信頼関係が築けると、対処行動の提案が出来るようになります。
強迫性障害患者に看護師が接する時の注意点
強迫行為でも患者を責めないこと
どれだけ強迫行為があったとしても責めてはいけません。患者が自分を責めています。
- 「なぜこんな事をしてしまうのだろう」
- 「なぜやめらないのだろう」
といつも自分の中で葛藤しています。
看護師が責めてしまっては、患者の心の拠り所は無くなってしまいます。患者の深層心理をしっかりと理解して欲しいです。
患者を問いたださないこと
患者と信頼関係を築く上で、先に述べたように「どうしてこれが気になるのでしょうか」と質問する事は必要です。
しかし、
- 「何でこんなことしているの!」
- 「何でこうしないの!」
と問いただしたり、指示したいするのは、逆効果です。患者に大きなストレスを与えます。看護師の心ない一言で、患者の繊細な心は脆く崩れます。一言一言丁寧に、接していきましょう。
まとめ
強迫性障害の患者の場合は、その心理を理解した上で看護師として関わらなければいけません。
誰しも強迫的な部分は持っていますが、それが過度に出てしまい苦しんで自分を責めている患者の心理を理解し、受け止め、より生きやすく過せるよう援助していってください。