統合失調症患者の看護(特徴・看護計画・接し方)について

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統合失調症患者の看護(特徴・看護計画・接し方)について
   
沢田紫織 看護師
沢田紫織さん(看護師)

このコンテンツは、弊社が看護師免許を確認した看護師が執筆しておりますが、ご自身の責任のもと有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。

統合失調症は幻覚・妄想・思考滅裂を主な症状とする疾患です。発症前に、不眠、意欲低下、抑うつ気分、神経過敏、強迫観念、情緒不安定などが前駆症状として出現する事が多いことが上げれらます。

症状に関しては急性期と慢性期で以下のように異なります。

  • 急性期:陽性症状
  • 慢性期:陰性症状

統合失調症の原因に関しては、原因がいまだに何で起こるのか明確には分かってない疾患になります。発症は思春期の発症が一番多く、男性は15歳から、女性は25歳からの罹患率(りかんりつ)が多くみれます。

統合失調症患者への治療は、薬物療法、電気けいれん療法(mECT)、認知行動療法、作業療法など、状態に合わせて行っていきます。このページでは統合失調症患者の看護に関するポイントを特徴、看護計画、看護師の接し方と接する時の注意点をお伝えしていきます。

統合失調症患者の特徴を知ろう

先ほど説明したように陽性症状と陰性症状で特徴が異なります。

  • 陽性症状の統合失調症患者の特徴
  • 陽性症状の統合失調症患者の特徴

こちらの2つの患者の特徴について詳しく説明していきます。

陽性症状の統合失調症患者の特徴

陽性症状の統合失調症患者の特徴は以下の通りです

  • 幻覚
  • 妄想
  • 思考滅裂

この3つが陽性症状の主な症状になります。特に入院後は、混乱も大きく、症状がひどくなるケースもあります。「幻覚・妄想・思考滅裂」について詳しく説明していきます。

(1):幻覚の症状について

幻覚の種類 症状
幻聴 ・神の声や宇宙の声、知人の声で、主に自分を批判されている内容の言葉が聞こえる
・指示的な内容も聞こえる
・例)「価値がない」「死ね」「殴れ」など
体感幻覚 ・自分の体の一部を対象とした幻覚
・例)「お腹に動物が居る」など
幻視 ・「誰かが見ている」などの視覚的な幻覚
幻味 ・被害妄想・被毒妄想と関連して、起こる症状
・例)「毒が入っている味がする」「毒を入れられた」など
幻臭 ・臭いの幻覚で、不快感のあるものが多い

幻覚に関しては、幻聴の訴えが非常に多く統合失調症患者に見られます。また、体感幻覚や幻視も多い症状です。

(2):妄想の症状について

妄想の種類 症状
被害妄想 ・被害妄想は、様々なことで自分が被害に遭う、遭っていると思う妄想
・例)攻撃されている、狙われている
・例)見られている
・※人によって妄想の内容は様々
誇大妄想 ・自分が、非常に権力がある人間であると、誤って認識して居る状態のこと
・例)自分はすごい人間であるとか
・例)◯◯さんは自分の事が好きだ、など、誇張した妄想
微小妄想 ・自分はすごく困っている、お金がない、非常に大変な状態であるなど
・ネガティブな面で、現実とは全く違う状況を考えてしまう事を指す

(3):思考滅裂の症状について

支離滅裂の症状は言葉の通り話の内容にまとまりがなく、思考がまとまらない状態です。重度の場合、無関係な言葉を並べるだけの「言葉のサラダ」が見られます。

陽性症状の統合失調症患者の特徴

慢性期に見られる感情鈍麻・意欲自発性の低下などの陰性症状は、社会への参加が難しくなり、引きこもり状態へと変化していきます。

感情鈍麻の症状について

患者の感情の働きが鈍くなり、喜怒哀楽がなくなり減る状態を指します。ただ周囲での出来事の理解はあります。

シュナイダーの1級症状

統合失調症特有の症状です。思考化声、対話形式の幻聴、自分の行動に口出しする幻聴、身体への被影響体験、思考奪取、思考伝播、思考吹、妄想知覚、作為体験などを引き起こします。

統合失調症患者の看護計画

統合失調症患者への看護計画のポイントを患者の観察ポイント、看護ケアのポイントに分けて説明していきます。

患者の観察ポイントについて

患者の状態 観察ポイント
急性期 ・幻覚妄想による言動の有無と程度の観察※1
・辞書疑いの危険性の有無と程度の観察
・症状が日常生活へどのくらい影響しているか観察
慢性期 ・幻覚妄想による言動の有無と程度の観察※1
・辞書疑いの危険性の有無と程度の観察
・症状が日常生活へどのくらい影響しているか観察
患者本人が幻覚・妄想をどの程度認識出来ているか観察

※1幻覚妄想による言動の有無と程度とは幻聴による態度の変化(座る、体を丸め込むなど)、声に対して反応しているかなどです。

看護ケアについて

患者の状態 看護ケアのポイント
急性期 ・症状を誘発するような刺激を遮断する
(隔離をし、人的関わりやテレビやラジオなどの音の刺激からも遮断)
・自傷疑いの恐れがある場合は安全を確保する
・薬物療法により、十分な休息を確保出来るようにする
・拒薬する場合は、患者の思いを受け止め、必要性を伝える
慢性期 ・病識を高める関わりを行う
(どんな時に具合が悪くなるか、兆候やサインを見つける)
(内服継続の必要性を伝える)
・作業療法やレクリエーションへの参加を促し、他者との関わりを持たせる
・SST(生活技能訓練)の実施する※2
回復期 ・幻覚妄想を認識していけるよう促す
・外出・外泊などを通し、社会に戻る準備をする
・退位隠語も内服継続が必要である事を伝える
・いつでも相談して良いというスタンスを伝える

※2:SST(生活技能訓練)とは認知行動療法の技能を用いた系統的な学習訓練による治療法です。他者との関わりの中で、ストレスを抱えやすい統合失調症の方に対し、こんな場面ではこんなやり取りが有効である、ということを、ワークを通して患者に学んでもらいます。

統合失調症患者の治療に効果的な看護師の接し方

統合失調症患者の治療に効果的な看護師としての接し方を7つのポイントに分けて説明していきます。看護師の接し方ひとつで大きく患者の回復度合が左右されます。

:インフォームドコントセントを分かりやすく説明する

なぜ今、入院しなければ行けないのか、なぜ隔離拘束などの制約があるのか、を丁寧に説明し、理解して頂く事が必要です。病識を持っていただけるよう、病気の説明、症状の説明をしっかり行います。

:患者との信頼関係を築く

患者の言い分をきちんと聞くこと、また傾聴の時間を持つ事から始めて、徐々に信頼関係を築いていきましょう。信頼関係を築けると、不安や、状況を伝えてくれるようになり、より良い看護に繋がります。

:幻覚・妄想等が強いときに現実に目を向けさせる

暴力に発展する可能性があるのは、恐怖心からです。または「殴れ」という指示のもと動いている可能性があります。「怖くないですよ」「大丈夫ですよ」と現実に目を向けさせて、安心感を伝えるのが必要です。

また、「入浴の時間ですよ」「食事の時間ですよ」と現実の行動に目を向けさせましょう。

:患者1人で悩ませないこと

自分の症状について、ずっと1人で悩んできた患者が多いです。誰に理解されない、幻覚・妄想の世界について、辛い思いを抱えていたと思います。

しかし、これからは病院がある、主治医がいる、看護師が居る、退院後も同じようにサポートがあるということを伝えていく事が大切です。

:他者との関係性についてのアドバイスを送る

統合失調症の患者は人間関係で疲弊してしまう方が多いです。ストレスに脆弱で、特に人間関係ではストレスを抱えやすいのです。SSTなどを通し、コミュニケーション能力を高めることが先決です。

しかし、SSTは、同じ知能レベルの方々でないと、ワークとして進みにくいので、出来るだけ同じ位の知能レベルの方でやると良いでしょう。

:服薬指導を行う

内服中断から、症状が悪化し、再入院になるケースが非常に多いです。退院後も内服が継続出来るよう、必要性を何度も説明し、理解して頂けるよう努めましょう。

:セルフケア援助

妄想などの世界に居る時、現実的な行動がとれません。セルフケア能力が低下し、毎日同じ服を着ていたり、入浴を拒否したりする場合があります。無理の無い範囲で、セルフケア援助を行って行きましょう。

統合失調症患者に看護師が接する時の注意点

患者の外出時の離院に注意する

回復期になったとき、外出の機会が増え、退院に向けての準備が始まりますが、一見、病識を持って過しているかに見えても、実はまだ病識が持てずに居る患者が居ます。

その場合、入院している事への意味を見いだせずに、外出時、離院してしまう可能性があります。外出時、不穏な様子は無いか、よく患者を観察し、離院に繋がらないよう、「約束」をしっかりと行って送り出すべきです。

もし離院してしまった場合、隔離し、状態が落ち着くまで外出は出来ません。

自殺企図(じさつきと)のある患者

自殺企図(自殺をくわだてること)で「死にたい」など言っている患者に対しては、看護師も警戒し、隔離などの処置を施しますが、全く兆候が見えないのに、自殺未遂をする患者も居ます。

実際に、夜勤帯で洗剤を飲んだという患者が居ました。すぐに処置しましたが、それほどまでに追いつめられていた心理を、看護師が把握出来ていなかったことに看護師として落ち度があります。

ポイント!

ポイント

気分がやや落ち気味だ、危険である、と判断した場合、頻繁に訪室したり、声をかけたり、話を傾聴したり、「気にかけているよ」という安心感を与えることも一つ大切なケアになります。

まとめ

統合失調症患者は、病識が無く、問題行動を起こしたり、引きこもりになって、初めて受診に繋がるケース、実際に警察から引き渡されるケースが多いです。入院後、急性期から退院まで、看護師の関わり方は変わってきますので一番起こりうるリスクと、その状況の時に必要なケアを考えましょう。

看護師として、まずは患者に安静に過して頂き、状態が落ち着いたら病識を持ってもらえるよう関わっていく事です。

本人の言い分は、支離滅裂かもしれませんがそれでも、看護師は傾聴する事を忘れずに居て欲しいです。信頼関係を築き、患者が社会に帰ってからも安全に過せるよう、入院中に最大限のケアをして下さい。

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