CVポートを埋め込んだ患者とその家族への看護師の退院指導

  • 公開日:
  • 更新日:
CVポートを埋め込んだ患者とその家族への看護師の退院指導
   
あずさ 看護師
あずささん(看護師)

このコンテンツは、弊社が看護師免許を確認した看護師が執筆しておりますが、ご自身の責任のもと有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。

CVポート(皮下埋め込み型ポート)を埋め込んで退院する患者とその家族への指導をするときには、まず私たち看護師がリスクを十分に理解しなければなりません。

病院で行なう中心静脈栄養のように中心静脈カテーテルを挿入していると、定期的な入れ替えが必要であることや感染のリスクが高いだけでなく、事故(自己)抜去の危険もあります。

そのため、在宅で生活する患者の場合は、外にカテーテルが露出しないCVポート(皮下埋め込み型ポート)を造設することが多いのです。このページでは、CVポートを埋め込んだ患者とその家族への退院指導について詳しく説明していきます。

CVポートにて退院する患者・家族への指導内容

CVポートにて退院する患者・家族への指導内容

CVポートにて退院する患者は、治療が必要であっても比較的病状が安定しており、在宅での生活が可能な患者です。主に以下のような患者が対象となります。

  • 経口摂取では十分に栄養が補えない患者
  • 胃や腸の疾患により胃ろう、腸ろうが行なえない患者
  • ガン末期で中心静脈栄養による輸液、栄養管理が必要な患者

在宅で中心静脈栄養を行なうことができる患者がCVポートにて退院する場合、看護師は以下の指導を行わなければなりません。

合併症のリスク

CVポート関連の合併症は、CVポート造設直後の穿刺による気胸・血胸・カテーテルの先端の位置異常・血管損傷などが考えられ、使用中にも何らかの理由で合併症が起こる可能性があります。

合併症は防ぐことが難しいこと・中には命を落とす恐れが高いものもあることを患者に理解してもらうため指導が必要です。

  • 皮下血腫
  • 敗血症
  • 血管炎
  • 空気塞栓
  • 血栓
  • カテーテル破損

何らかの理由があり体内でカテーテルが破損してしまうものですが、破損の原因をはっきりさせることは困難です。

また、非常に稀ではありますが、万が一破損しCVポートを抜去した後も体内にカテーテルの破損部分が残ってしまった場合は、心臓カテーテルを挿入して破損部分を取り除く処置が必要になります。

また、毎回の穿刺時に十分な消毒をしていたにもかかわらず、血液内に細菌が入り込み敗血症をおこしてしまうことも考えられます。敗血症をおこしてしまうと最悪の場合命を落とす恐れもあります。

このような合併症のリスクがあることをしっかり理解してもらった上で、在宅退院に向けた指導を開始しましょう。

CVポートからの点滴方法

患者自身で点滴を行なう場合、指導をしながら患者がどこまでできるのかをアセスメントしていきます。チェックポイントは以下の通りです。

  • 輸液剤の準備
  • ダブルバック製剤の開通
  • 輸液剤のゴム栓を消毒して点滴チューブを刺し込む
  • 点滴チューブに輸液剤を満たす
  • カフティーポンプの準備をして流量を設定する
  • チューブをカフティーポンプにセットする
  • CVポート部を消毒してCVポート専用の針(ヒューバー針)を穿刺、固定する
  • 輸液を開始して、終了したら抜針する
  • アラームがなったときに対応できる

患者の性格や理解度などを全体的に評価して、CVポートからの点滴を行なう流れを指導します。

患者家族にも指導して患者の安全を図る

患者自身で点滴をできない場合、同居している家族・点滴を行なうときに側にいられる人に指導を行ないます。

患者自身がCVポートの合併症のリスク・CVポートの管理・輸液の取り扱い・清潔操作・カフティーポンプの操作など何か一点でも不十分であれば、誰かがその部分を代わりに行なわなくては安全に治療を継続することができません。

指導する内容は、患者本人に行なうものと同じです。

ポイント!

ポイント

自分ではない誰かに医療行為を行なうことに抵抗がある家族もいます。手順や方法を指導するだけでなく必要に応じて心のケアを行なうことも大切です。

指導する際に注意するポイント

指導する際に注意するポイント

指導を行なう看護師は、勤務の都合により毎回同じ看護師とは限りませんが、どの看護師が指導しても同じ質の指導ができなくてはなりません

統一で使用する手順書を使用し、指導計画を患者や家族の理解度に合わせて立案し、指導した結果を共有できるようにします。

  • 指導計画と共に指導内容、指導経過を記録できるものを準備する
  • 何ができたら合格とするのか明確な基準をつくる(できた回数で決めるなど)

他の看護師としっかり情報を共有し合い、患者の混乱を招かないよう指導することがポイントとなります。他にも、指導の際に注意するポイントをご紹介します。

在宅で十分な治療が行えるかどうか厳しくチェックする

命にも関わる合併症のリスクがある以上、確実に安全に実施できないと在宅でCVポートからの点滴を行なうことリスクはさらに大きくなります。

そのため、患者や家族の理解力や理解できるまでのスピードを把握した上で指導期間を設け、患者自身または家族では「CVポートによる輸液管理ができない」という判断をすることも必要です。

補足説明!

補足事項

在宅で十分な治療が行なえないとなったときには、転院や施設入所、また患者や家族ではなく訪問看護師が行なうなど安全に治療を継続できる方法を新たに考えなければなりません。

患者の退院後の生活スタイルを把握しておく

CVポートを造設して退院する患者の中には、自身で準備をして点滴を実施する患者もいます。その場合、その患者の退院後の生活スタイルを把握する必要があります。

たとえば、1日中自宅で過ごす患者の場合は点滴棒などを自宅に用意すれば24時間持続で点滴を行なうこともできますが、外出するような患者の場合、点滴を行なえる時間をどの時間帯に確保するのかを考える必要があります。

さらに、医師の指示の輸液量、滴下時間も合わせて、患者がどの時間帯にどれだけの時間を使って点滴を行なうのかを考えていかなければなりません。

まとめ

私たち看護師は医療や看護を学び、その行為を行なうことを仕事としていますが、患者や家族は輸液製剤やチューブ・カフティーポンプを触ったこともない方ばかりです。年齢も違えば理解力にも差があります。

指導をする際は、病院ではなく在宅で行なうということを忘れずに指導することが重要です。指導したからできて当然ではなく、指導をしてもできないこともあることを理解して指導を進めていきましょう

   
執筆・監修看護師

その他看護知識の関連記事

おすすめの記事