ウイルス性髄膜炎患者の看護(症状・看護計画・注意点)

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ウイルス性髄膜炎患者の看護計画
   
齋藤 看護師
齋藤さん(看護師)

このコンテンツは、弊社が看護師免許を確認した看護師が執筆しておりますが、ご自身の責任のもと有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。

脳神経疾患の領域でよくみられる病気である髄膜炎。

近年では、芸能人の方も髄膜炎で入院したという病歴を公表された方もおり、テレビのニュースなどで病名を来たことがある看護師の方もいらっしゃるのではないでしょうか。

髄膜炎とは、脳の髄膜で起こる炎症のことを言います。

髄膜炎には5種類あり、

  • 予後が比較的良好なウィルス性髄膜炎(無菌性髄膜炎)
  • 髄膜炎の中でも重症な細菌性髄膜炎(化膿性髄膜炎)
  • 抗生剤の乱用によって起こる真菌性髄膜炎
  • 結核感染者である小児に起こりやすい結核性髄膜炎
  • がんの髄膜炎転移であるがん性髄膜炎

があります。

ここでは、脳神経外科領域によって最も患者数が多く一般的なウィルス性髄膜炎の患者の症状、看護計画、看護する場合の注意点について説明していきます。

ウィルス性髄膜炎の患者の症状

ウィルス性髄膜炎の患者の症状

患者症状の特徴 ・発熱の症状
・頭痛・下痢の症状
・嘔吐の症状
・項部硬直の症状
(髄膜刺激症状)
・ケルニッヒ徴候

ウィルス性髄膜炎の患者の症状の特徴は発熱、頭痛、嘔吐の3徴候を認めるということです。

これに加えて項部硬直といい、臥位の状態で頭を持ち上げると、通常顎が前胸部につくのに対して顎が着かないという症状や、股関節または膝関節を90度に曲げた後に保人以外の手で下腿を伸展させようとした場合に膝が屈曲したまま伸びないケルニッヒ徴候が見られます。

頭痛や、項部硬直は髄膜刺激症状ともいわれます

38~40℃の発熱も見られるものの、ウィルス性髄膜炎の中では比較的熱の上昇は見られません。

他にも羞明や腹痛、下痢なども患者がよく訴える症状となります。

ウィルス性髄膜炎の患者で看護師が注意しなければならない症状

頭痛、嘔吐は脳神経疾患の患者の多くに見られる症状であるため、ここからウィルス性髄膜炎の判断は難しくなります。

しかし、ケルニッヒ徴候や項部硬直はウィルス性髄膜炎でしか見られない症状です。

ウィルス性髄膜炎と診断されて入院してきた患者ではなく、病棟に元々入院していた患者が例えば、

  • 氷枕を変えようと頭を上げたら首の後ろの痛みや顎を前胸部につけるのが難しいと訴えた場合
  • ケルニッヒ徴候が見られた場合

などはウィルス性髄膜炎を疑う必要があるでしょう。

ウィルス性髄膜炎患者は夏から秋にかけて増える?

ウィルス性髄膜炎患者は夏から秋にかけて増えるため、夏から秋に上記の症状を訴えた場合にはウィルス性髄膜炎の症状と考えて経過を見ても良いでしょう。

補足説明!

補足事項
他にも頭部の手術でドレーンを挿入していたという患者や、ウィルス性の何かしらの疾患につい最近まで感染していたという患者に上記の症状が見られた場合も注意した方が良いでしょう。

ウィルス性髄膜炎の患者の看護計画

ウィルス性髄膜炎の患者の看護計画

ウィルス性髄膜炎は、老若男女問わず発症する疾患で、頭痛と嘔気という苦痛を伴う疾患です。

大人であればウィルスを退治して治れば予後良好であるため、看護目標は以下のようになります。

看護目標 その理由
♯1苦痛を最小限にして治療に集中することができる ・ウィルスを退治して治れば予後良好であるため
・安静を第一とするため
・集中して治療を受ける環境が重要なため
♯2脱水症状を起こさずに経過できる ・嘔気、嘔吐が強い疾患であるため
・脱水を起こしてしまう場合もあるため
♯3合併症を起こさずに経過できる 【疾患に罹患したばかりの急性期の場合】
・脳脊髄圧の上昇による脳ヘルニアもあるため
・ウィルスにより麻痺や聴力障害などの神経症状が出現することもあるため

#1苦痛を最小限にして治療に集中することができる

観察項目(OP) ・バイタルサイン(体温、血圧、脈、SPO2、呼吸回数)
・頭痛、嘔気の有無と程度、嘔吐の有無
・ケルニッヒ徴候、項部硬直の有無
・羞明の有無と程度
・髄液検査の結果
・血液検査の結果
・点滴の内容、施工時間
ケア項目(CP) ・髄膜刺激症状を悪化させないよう室内は暗めに設定する
・嘔吐に対応できるようガーグルベースンを設置する
・発熱が見られれば冷罨法を行い、掛物を調節する
・指示された時間に指示された内容の点滴薬を投薬する
・症状が軽減したら、清拭や口腔ケアを施行し身体の清潔を保つ
・移動時は転倒を予防するため車いすを使用する
教育項目(EP) ・不安なことがあれば看護師を呼ぶよう説明する
・症状が増強した場合も看護師を呼ぶよう説明する
・点滴刺入部に腫れや痛みを感じたら看護師を呼ぶよう説明する
・排せつ時は転倒の危険があるため、看護師が車椅子で連れて行くことを説明する

♯2脱水症状を起こさずに経過できる

観察項目(OP) ・バイタルサイン(体温、血圧、脈、SPO2、呼吸回数)
・頭痛、嘔気の有無と程度、嘔吐の有無
・ケルニッヒ徴候、項部硬直の有無
・食事摂取状況、食欲の有無
・水分摂取状況
・点滴施行の有無と内容量
ケア項目(CP) ・患者が食べやすい食形態を工夫する
・嘔気が無い時に食べられるよう食べやすい補食を用意する
・水分をこまめに摂取できるようベッドサイドの手の届く位置に水分を用意する
教育項目(EP) ・食べられるときに食べられるものを食べるよう説明する
・水分はなるべくこまめに取るよう説明する
・食事量、水分摂取量が低下した場合、点滴を増やさなければならないことを説明する
・医師が許可した場合は患者の好きな食べ物を持ってきてもらうよう家族に説明する

♯3合併症を起こさずに経過することができる

観察項目(OP) ・バイタルサイン(体温、血圧、脈、SPO2、呼吸回数)
・頭痛、嘔気の有無と程度、嘔吐の有無
・ケルニッヒ徴候、項部硬直の有無
・意識レベル
・四肢麻痺の有無と程度
・聴力障害の有無
・点滴施行の有無と内容
・痙攣の有無
・血液、髄液の検査データ
ケア項目(CP) ・指示された点滴を指示された時間に投薬する
・会話や指示動作を行ってもらい四肢麻痺や聴力障害の有無を定期的に評価する
・痙攣が見られた際にすぐ対処できるように痙攣時の対処の物品を準備しておく
・四肢麻痺、聴力障害、意識障害が見られたらすぐに医師へ報告して指示を仰ぐ
教育項目(EP) ・四肢の動かしにくさや聞こえにくさがあったらすぐに看護師へ伝えるよう説明する
・頭痛、嘔気が上昇した場合はすぐに看護師へ報告するよう説明する

ウィルス性髄膜炎の患者の看護の注意点

ウィルス性髄膜炎の患者の看護の注意点

ウィルス性髄膜炎は、比較的若い患者が多い印象です。

若い患者は痛みや辛さを我慢してしまい、結果的に後から重症になってしまうという例も少なくありません。

若くて何も訴えない患者であるからこそ自ら積極的に症状の確認をすることや、苦痛の緩和ができるように介入するべきだと考えます。

見た目や行動からも病状を評価していく必要がある

頭痛、嘔気がひどいため、こちらの質問を煩わしく感じる患者も少なくありません。

少ない質問として、見た目や行動からも病状を評価していくことが必要となります。

患者へ病態や予後の説明や不安を取り除くこと

脳神経外科というあまり慣れない環境に入院し、四肢麻痺や意識障害の患者を見てしまうことで自分もこうなってしまうのかという、不安を感じてしまう患者も少なくありません

ウィルス性髄膜炎の病態や予後をしっかりと説明し、不安を取り除いてあげるようにしましょう。

ポイント!

ポイント

ウィルス性髄膜炎の治療は安静が第一となります。

特に若い患者では少しでも症状が軽快するとあれこれやってしまうこともありますが、完全に治るまでは安静が図れるような看護が必要となります。

まとめ

まとめ

予後良好とされる疾患ですが、中には合併症を起こしてしまう場合もあります。

合併症をいち早く発見できるか、また、合併症を起こさぬように経過するためにも看護は必要不可欠なものとなります。

脳神経疾患の中でも患者層が若いためつい、患者の言い分を信じて介入を控えてしまう看護師も多いですが、患者が若いからこそ、定期的かつ深い看護介入が必要となると考えます。

   
執筆・監修看護師

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