頬骨骨折の患者の看護(症状・看護計画・注意点・スキル)について

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頬骨骨折の患者の看護(症状・看護計画・注意点・スキル)について
   
くるみ 看護師
くるみさん(看護師)

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頬は、多数の骨が連続して構成されており(前頭骨・蝶形骨・上顎骨・側頭骨など)、これらのどの部分が骨折しても「頬骨骨折」と呼びます。

頬骨骨折は、スポーツや交通事故などで生じる骨折で男女比としては、男性の方が多いですが女性でも発症します。

頬骨骨折を放置すると、

  • 顔の変形が残る
  • 眼球運動などの眼の障害が残る

等の可能性があるため、しっかりと治療をすることが必要です。

今回は、頬骨骨折の分類・症状・治療方法・看護計画・患者の注意点・求められるスキルについて詳しく説明していきます。

頬骨骨折の分類・症状

頬骨骨折の分類・症状

頬骨骨折の分類や症状には、どのようなものが見られるのでしょうか。

それぞれについて詳しく説明していきます。

頬骨骨折の分類

頬骨骨折には、以下の2つに分類することができます。

頬骨体部骨折 ・頬骨弓以外が折れたもの
・体部の骨は前方に突出している
・体部の骨折では、骨の突出がなくなり平坦になる
・眼窩付近の骨折は、眼球運動の異常や視力障害、複視などが見られる
頬骨弓骨折 ・頬骨弓が折れてしまったもの
・顔の側面が凹む、側頭筋に食い込むと開口障害が生じる(弓部は側面突出しているため)
・体部骨折のようなしびれや眼の障害は見られない

頬骨骨折の症状

頬骨骨折の症状は、

  • 皮下出血
  • 腫脹
  • 疼痛
  • しびれ
  • 頭痛
  • 眼の障害(眼球陥没、視力障害、複視)
  • 顔の変形
  • 開口障害
  • 血管損傷
  • 知覚麻痺

等があります。

特に注意してほしい症状については、以下の通りです。

顔の変形 ・受傷後腫脹がひどく、徐々に腫脹が軽減してくると明らかになる。
眼の障害 ・視力が眼球運動の異常や見えにくさを感じた見られた場合、眼科医にも診察してもらうことがある。
知覚麻痺 ・下眼窩神経の障害で下眼窩神経が骨折により圧迫されることにより起こる。
開口障害 ・疼痛がなくても開口障害が少しでもある場合は手術の対象になることが多い。

頬骨骨折の患者の治療方法

頬骨骨折の患者の治療方法

頬骨骨折の治療には、保存療法と手術療法の2つがあります。

それぞれについて詳しく見ていきましょう。

保存療法

「顔の変形」「眼の障害」「知覚麻痺」「開口障害がない」等の場合は、保存療法になることが多いです。

保存両方の内容としては、眼球運動の練習や開口練習、しびれに対しては内服薬(メチコバールなど)を服用します。

手術療法

「保存療法で改善が見られない」「顔の変形」「眼の障害」「知覚麻痺」「開口障害」等がある場合は、手術の対象となり、術式としては「観血的整復固定術」を行います。

観血的整復固定術では、骨折部を整復して元の位置に戻していき、全身麻酔下で行うため、必要に応じてプレート(チタン性・吸収性)などで固定します。

頬骨骨折の患者の看護計画

頬骨骨折の患者の看護計画

頬骨骨折の患者の看護過程について説明していきます。

#1手術施行に対する不安

看護目標 ・検査の必要性を理解し、手術のイメージつけ不安を軽減することができる。
OP
(観察項目)
・検査・処置、治療に対する理解度
・患者の表情・態度・発言の状況
・不安の程度
・食欲や食事量の状況
・睡眠状態
・本人や家族の手術に対する受け止め方
・術後の状態から社会復帰までの理解
TP
(ケア項目)
・術前検査の実施
(言葉遣いや態度に気を付ける)
(プライバシーの守れる場所の確保や時間に余裕を持って説明する)
・不安に対する訴えや態度に対してはしっかり対応する
・内容に応じては医師に説明をしてもらう
・不安による睡眠障害が生じる場合は医師に相談のもと睡眠導入剤の使用も検討する
・家族の協力が得られるように、医師の説明を聞き、現在の患者の状態を把握してもらう
・本人や家族の手術に対する受け止め方を確認し、必要に応じて補足する
・術後から退院、社会復帰までの不安を受け止める
EP
(教育項目)
・不安に感じたことがあった場合はいつでも話しても良いことを伝える
・患者からの訴えについては情報共有する
・検査や手術について理解できるまで何度も質問しても良いことを伝える
・不眠時は睡眠導入剤を使用できることを伝える
・術後から退院、通院の流れを段階に応じて説明する

#2手術後に疼痛がある

看護目標 ・疼痛の程度を患者自身伝えることができる
・疼痛を緩和することができる
OP
(観察項目)
・バイタルサイン
・疼痛の状態(強さ、持続時間など)
・患者の表情や訴え
・睡眠状況
TP
(ケア項目)
・医師の指示のもと、適切な鎮痛剤の使用を行う
・必要に応じて患部周囲をアイシングし冷やす
・安楽な体位にする
・創部に負担をかけないような良肢位を保持する
・疼痛時は患者のそばに寄り添い傾聴する
・疼痛に対する患者の忍耐を褒め、励ます
EP
(教育項目)
・疼痛時は我慢しないように説明する
・体位交換時は自分のペースでゆっくり行うように説明する
・どのような時に痛みが増強するのか患者自身で観察・理解し、伝えられるように指導する
・鎮痛剤の効果や効果時間などを説明し、患者自身でも観察・理解できるように指導する

#3創部の安静を守らなくてはならないことによる精神的ストレス

看護目標 ・創部の安静を守ることでプレートのずれが起こらない
・創部の安静を守りながら日常生活を安楽に送ることができる
OP
(観察項目)
・創部の状態
・視覚のチェック
・患者の表情や発言
・食事摂取量
・安静度の理解
・日常生活の自立度
・患者の表情・態度・発言の状況
TP
(ケア項目)
・術後数日は流動食にし、段階を踏んで食形態を上げていく
・不快に感じることがあればしっかり傾聴し対応する
・安楽な体位を取る
・タッチングやマッサージを行う
EP
(教育項目)
・変化した場合はその都度説明する
(安静の段階が日に日に変わるため)
・安静にすることの重要性を説明する
・創部固定部分には触らないようにする
・術後の行動範囲を確認し、気分転換などを図るよう指導する
・ストレスがある場合いつでも話しても良いことを伝える

#4術後感染

看護目標 ・創部の感染を起こさない
OP
(観察項目)
・バイタルサイン
・分泌物の性状・量(血性や膿様ではないか)
・ガーゼに付着している排出物の性状・量(血性や膿様ではないか)・臭気など
・発赤・腫脹の有無
・創部の疼痛の有無・程度
TP
(ケア項目)
・医師の指示の元、ガーゼ交換を実施する
・性状や量に異常がみられる場合はすぐに医師に報告する
EP
(教育項目)
・疼痛や違和感など生じる場合はすぐに伝えるように指導する
・自分でガーゼの交換や患部に触れないように伝える
・いつもと違う分泌物が排出されるようであれば伝えるように指導する

頬骨骨折の患者の看護の注意点

頬骨骨折の患者の看護の注意点

頬骨骨折の患者を看護する際の注意点には、どのようなことがあるでしょうか。

以下で紹介していきます。

完治までに時間がかかる

頬骨骨折は、完治するまでに約3カ月程度かかります。

完治するまでの間にプレート挿入部を強打する等してしまうと、固定しているものがずれて再手術になることもあります。

頬の周囲のしびれが出現する

骨折の程度によって神経を損傷した場合、頬の周囲のしびれが出現することがあります。

頬の周囲のしびれは改善することが少なく、内服薬(ビタミンB12 商品名:メチコバール)等の対処療法にて対応します。

開口障害が出現する

頬骨弓骨折で開口するために使用する筋肉の損傷が激しい場合は、術後も開口障害が出現することがあり、リハビリである程度改善しますが、元のような開口ができないといったストレスがかかります。

補足説明!

補足事項開口障害以外にも、かみ合わせが悪くなってしまうことが挙げられ、場合によっては口腔外科との連携を図ることもあります。

視覚障害が起こる

頬骨骨折では、「ものが2つに見える」等の視覚障害が出現することもあり、これは時間の経過と共に改善していきますが、不快な状態か続きます。

重症骨折の場合は、後遺症として残ってしまうこともあります。

頬骨骨折の患者への看護で求められるスキル

頬骨骨折の患者への看護で求められるスキル

看護師が頬骨骨折の患者への看護をする際は、「精神的なケアができる」「スピーディーで正確な対応ができる」といったスキルが求められます。

それぞれについて、詳しく見ていきましょう。

精神的なケアができる

頬骨骨折は、見た目からも顔面の変形や、眼球の位置が変化することから「この顔のままだったらどうしよう」「元の通りに治るのか」等、様々な不安が現れます。

そのため、看護師は患者の不安を1つ1つ丁寧に対応し、患者の訴えを傾聴していく精神的ケアが求められます。

ポイント!

ポイント看護業務は多忙であるため、ゆっくりと患者の話を聞く時間がないかもしれませんが、できるだけ患者の気持ちに寄り添うケアをしていくことが大切です。

スピーディーかつ正確な対応ができる

頬骨骨折の術後は、処置する部位も多く複雑ですが、形成外科で最も重要な「綺麗に治す」という部分での確実な処置と医師と呼吸を合わせて対応できるスピードさが大切です。

そのため、頬骨骨折の患者の看護をする際には、スピーディーかつ正確な対応の出来るスキルが求めまれます。

まとめ

参考文献は、以下の通りです。

頬骨骨折は、顔面骨折の中でも上位に上がるほど多い骨折です。

見た目にもはっきりと出てしまう頬骨骨折は、神経を損傷することで様々な後遺症が残ることもあるため、術後から退院まで患者とのかかわりを大切にして、術後の指導もしっかり行っていきましょう。

   
執筆・監修看護師

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