IgA腎症患者の看護(症状・看護計画・注意点)について

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IgA腎症患者の看護計画と症状
   
さよ 看護師
さよさん(看護師)

このコンテンツは、弊社が看護師免許を確認した看護師が執筆しておりますが、ご自身の責任のもと有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。

IgA腎症は2014年に指定難病された腎疾患で、腎臓の糸球体に免疫グロブリンIgAという蛋白が沈着し糸球体が炎症を起こす病気です。

原因は、はっきり分かってはいませんが扁桃腺炎を発症すると体内でIgA抗体が作られ、繰り返し扁桃腺炎を発症することによってIgA抗体が糸球体に沈着して発症すると言われています。

ここでは、IgA腎症についての知識と看護について説明します。

IgA腎症患者の症状と看護師が注意すべき症状

IgA腎症患者の症状と看護師が注意すべき症状

IgA腎症は、腎生検によって診断を行い治療します。子どもから大人まで発症する病気で後発年齢は、10代後半から30代前半で男性が多いです。

ゆっくりと進行していく病気なので、治療を適切に行えば予後良好の可能性が高い疾患ですが、進行してしまうと腎機能が低下し透析が必要になることもあります。

IgA腎症患者の症状

IgA腎症には、ほとんど初期症状がありません。多くの患者が、学校や会社での尿検査によって尿潜血や尿蛋白を指摘されて初めてわかるというケースです。

扁桃腺炎を患ったあと肉眼的血尿が出現してからわかるという人もいます。初期では、自覚症状はありませんが進行すると肉眼的血尿、浮腫、高血圧が起こります。

IgA腎症患者で看護師が注意すべき症状

IgA腎症の患者にはほとんど症状がないので、入院時には自覚症状がない患者がほとんどですが風邪などの感染状態には注意が必要です。

それまで自覚症状がない患者でも、風邪を患って肉眼的血尿が出現するということがあります。そして、風邪などの感染状態になると病気が進行する可能性があります。

特にステロイドの治療中は、副作用で感染しやすいので感染予防についての指導を行うことや感染兆候がないか異常の早期発見に努める必要があります。

IgA腎症患者の看護計画

IgA腎症患者の看護計画

IgA腎症患者は、腎生検のあと確定診断をつけ扁桃腺摘出を行い、その後ステロイドパルス療法を3クール行って退院するというのが一般的な入院過程になります。

この3つのステップは、それぞれの間に1度退院することが多いので、それぞれのステップの退院指導も含めた看護計画について説明します。

腎生検での看護計画

看護目標 検査の必要性を理解し安静が守れるように指導する
OP
(観察項目)
・バイタルサイン
・患者の表情、睡眠状況
・検査の理解度
・自覚症状の有無
・穿刺部位からの出血・血種の有無
・血尿の有無
・腰痛の有無
TP
(ケア項目)
・検査の日時、流れ、注意事項について説明する
・男性のみ検査前に必ず排泄するように声掛けする
(検査終了後2時間は腹臥位での安静になるため。
女性はバルンカテーテル挿入するため不要)
・不安な気持ちに寄り添い安全に検査が行えるよう介助する
・検査終了後の夕食は臥床したままでの摂取のため必要時介助する
・可能ならば夕食のメニューを臥床したままでも食べやすいもの変更する
(おにぎりなど)
・腹臥位後は腰の位置に枕を入れて腰痛の緩和をする
(翌朝まで仰臥位で安静にさせるため)
EP
(教育項目)
・検査後の安静の必要性を説明する
・退院後肉眼的血尿など自覚症状があればすぐに受診するよう説明する
・次の扁桃腺摘出術までに風邪をひかないよう感染予防について指導する

扁桃腺摘出術時の看護計画

看護目標 安心して手術を受け、術後合併症を起こさず退院できるように援助する
OP
(観察項目)
・バイタルサイン
・自覚症状
・手術の方法・必要性についての理解度
・睡眠状況
・不安の有無や表情
・術後出血の有無
・術後の食事摂取量
・咽頭部の痛みの程度
・痰の有無
TP
(ケア項目)
・手術当日の流れについて説明する
・術後は創部の感染予防のためイソジンでの嗽を促す
・咽頭部の痛みが強く食事摂取が進まない時は食べやすい食事を提案する
(例えばお粥などにして飲み込みやすい食事にする)
・痛みが強い場合は医師の指示のもと鎮痛剤を使用し疼痛の緩和を行う
EP
(教育項目)
・分からないことや、不安なことがあれば何でも言うように説明する
・退院後は感染予防に努めるように指導する

補足説明!

補足事項

扁桃腺摘出術時は耳鼻咽喉科での入院になることが多いです。

ステロイドパルス療法中の看護計画

IgA腎症の患者の治療は、ステロイドパルス療法を行うことが一般的です。

この治療は、3日間ステロイドの点滴を投与し4日間ステロイド(プレドニン)の内服を行うという7日間の治療を3クール行います。

その後は、退院し隔日にステロイド(プレドニン)の内服を行うという流れになります。退院後の内服期間は患者の状態によって異なりますが、短い人で1年間ぐらいです。

看護目標 ステロイドの副作用に注意し治療を安心して受けられるように援助する
OP
(観察項目)
・バイタルサイン
・治療内容やステロイドの副作用についての理解度
・検査値(WBC、CRP、血糖値、尿潜血、尿蛋白)
・体重
・睡眠状況
・不安の有無や表情、言動
・満月様顔貌の有無
・食事摂取量
TP
(ケア項目)
・ステロイドの治療中は易感染状態になるので手洗い、嗽、マスク着用を促す
・不眠時は睡眠導入剤を使用できることを説明する
・多毛やニキビ、満月様顔貌は薬の量が減少すれば良くなることを説明する
・副作用により精神障害を起こしやすいので不安なことはないか声掛けを行う
EP
(教育項目)
・入院中も退院後も感染予防するように指導する
・毎日入浴し皮膚を清潔に保つように指導する
・口腔ケアはやわらかい歯ブラシを使用し口腔内を清潔に保つように指導する
(副作用で歯肉出血しやすくなるため)
・副作用で食欲増加・血糖値上昇があるので間食は控えるように指導する
・退院後規則正し食生活やバランスのとれた食事を摂取するように指導する
(腎機能の状態によって食事制限がある患者もいる)
・退院後、ステロイドは隔日での内服になるので飲み忘れのないように指導する

IgA腎症患者の看護の注意点

IgA腎症患者の看護の注意点

IgA腎症患者の看護で1番注意すべき点は、ステロイドの治療中です。

ステロイドには副作用が多く、入院中は感染状態、血糖値の上昇、精神状態などについて注意して観察しなければいけません。

IgA腎症は、ステロイドの治療を行うと寛解する可能性がある疾患ですが、最近では患者の40%の確率で20年後慢性腎不全になり人工透析が必要になるとも言われています。

患者に副作用の指導をしっかり行うこと

腎疾患は、退院後のセルフコントロールが非常に重要になるので退院後もステロイドの副作用を理解し、予防行動ができるように入院中からしっかり指導することが必要です。

若年層の患者も多い疾患なので、その場合は保護者も含めた指導が必要です。

患者の精神的ケアを行う

入院時は、自覚症状がない患者がほとんどですがステロイドの治療を行うことで副作用が出現し不安になる患者もいます。

特に女性の患者は、副作用で多毛やニキビ、満月様顔貌など外見の変化に戸惑い受容できない患者もいるので患者の思いや不安を傾聴し安心して治療を継続できるように精神的ケアも大切です。

ポイント!

ポイント

退院後も指導内容を実施できているか、必要時は外来看護師とも連携をとります。

まとめ

まとめ

IgA腎症は、初期ではほとんど自覚症状がなく若年層の患者も多いので病気に対しての危機感がない患者が多いです。

しかし、IgA腎症の患者は退院後のセルフコントロールがとても重要なのでしっかりとした退院指導が行えるように知識とコミュニケーション能力が必要です。

看護師の退院指導が重要なので、とてもやりがいや達成感を感じられるでしょう。IgA腎症の患者について、少しでもこの記事が参考なれば幸いです。

   
執筆・監修看護師
さよ 看護師
さよ 看護師
  • エリア:京都府在住
  • 保有資格:看護師
  • 施設経験:大学病院(混合病棟)、総合病院
  • 専門分野:脳神経外科、呼吸器内科、腎臓内科、放射線治療科、皮膚科、麻酔科、血液内科、内分泌内科

地方の大学病院で約6年勤務し、その間妊娠・出産も経験し出産後も子どもを保育園に預けながら中核病院で正社員として働いていました。その後京都に移り住み現在は子育てしながら訪問入浴・デイサービス・健診など派遣看護師として働いています。私自身子どもを育てながら色々な勤務形態で勤務した経験があるのでママさんナース、これから結婚・出産を経験する方々に私の経験をもとに情報を発信していきたいと思います。

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