このコンテンツは、弊社が看護師免許を確認した看護師が執筆しておりますが、ご自身の責任のもと有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。
昨今は看護の現場でもアサーションが広く浸透しており、各施設において積極的にアサーションを導入しているところが増えてきているといわれています。アサーションは別名「疲れない生き方」でもあります。
看護師が心身ともに健康であるためには、アサーションは絶対に欠かせないものです。
今回は看護の現場で活かす「アサーション(assertion)」について説明します。
看護におけるアサーションについて
アサーションとは自分も相手も大切にしたコミュニケーション技法です。人間関係においてその場に即した自己表現を実践するというコミュニケーション・スキルになります。
人間関係を上手く構築するトレーニングスキルである
看護におけるアサーションは、教育や看護、福祉といった臨床の現場に広く活用されています。
看護師が人間関係を上手に構築するためのトレーニングスキルが、アサーションスキルです。
アサーションの自己表現方法は3つのタイプがある
アサーションの自己表現は受身的・攻撃的・アサーティブの3つのタイプがあります。それぞれ具体的にどのようなタイプなのか、どのような人物に当てはまるのか説明します。
【表現方法】 | 【人物の例】 |
受身的な自己表現 | お人好しな人 |
【具体的なタイプの説明】 ・自分の欲求や感情、行動、基本的人権を後回しにしてしまい、自分よりも相手を優先してしまうタイプ。 |
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攻撃的な自己表現 | 傲慢で威圧的な人 |
【具体的なタイプの説明】 ・自分の欲求や感情、行動、基本的人権を優先して相手をないがしろにしてしまうタイプ。 |
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アサーティブな自己表現 | 自分も相手も大切にする人 |
【具体的なタイプの説明】 ・自分や相手の欲求、感情、行動、基本的人権を必要以上に抑えることなく、上手にコミュニケーションを構築していくタイプ。 |
こうしてみると自分がどのタイプであるのか、客観的にも知ることができます。
看護師は状況に応じて3つの自己表現方法を使い分けると良い
看護師はアサーションの自己表現である、受身的・攻撃的・アサーティブの3タイプを状況に応じて上手に使い分けていくことができれば、自分の持ち味にもなります。
看護師もひとりの人間ですから、忙しい臨床の現場で、相手のことまで気遣う余裕がないことは誰でも百も承知のはずです。
その場にふさわしい方法で自己表現することが重要
看護におけるアサーションで大切になるのは以下のような姿勢を持つことです。
- 相手が同じように表現することを奨励する姿勢
- 自分も相手の人権と自由を尊重しようとする姿勢
つまり、その場にふさわしい方法で自己表現することがアサーションで重要になります。
Win-Winの関係を目指す自己表現が良い
その場にふさわしい方法で自己表現をする場合は、両者の関係がともに勝つ関係(Win-Winの関係)を目指しましょう。例えば、自分からすがすがしい歩み寄りをかければ、相手もさわやかになる、という関係のことです。
看護師のアサーションが活かせる場所とは
アサーションは看護師間のコミュニケーションをはじめ、
- 患者への対応
- 新人看護師への教育指導
- 役員への対応
- 来客への接客
など、看護の現場に限らずあらゆるところで活用できます。
職場で何かしら役職についている看護師の場合、人間関係の幅も広いため、あらゆる場でアサーションを活かすことが可能です。
また、アサーションは利用すれば向上していくスキルでもあります。
看護師がアサーションスキルを身につける方法
アサーションスキルを身につけるには、
- 最初に自分のコミュニケーションタイプを知る
- 次に考え方を変えてみること
が大事です。
これから、自分のコミュニケーションタイプを知り、そのタイプに合わせて考え方を変える方法について説明していきます。
自分のコミュニケーションタイプを知る
コミュニケーションの中で自分を表現する方法は、
- 攻撃的に主張するタイプ
- 非主張的なタイプ
- アサーティブに問題解決するタイプ
にわけられます。
例えば、3つのうち自分がどのようなタイプに該当するのか知るためには、以下の状況で、どのような返事をするのかで判断ができます。
【状況の説明】
- 自分はチームの患者Aを迎えに行っている最中
- 同期の看護師に「Bさんの点滴を繋いでほしい」と声をかけられる
それぞれ「攻撃的に主張するタイプ」「非主張的なタイプ」「アサーティブに問題解決するタイプ」がどのような答え方をするのか見てみましょう。
【タイプ別】 | 【答え方】 |
攻撃的に主張するタイプ | 今からAさんのお迎えに行くから、無理です※1 |
【該当する看護師の特徴】 ・相手からのお願いを断る方法をとることが多い ・自分の意見をはっきりと示してすっきりしておきたいと考える |
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非主張的なタイプ | わかりました、やっておきます |
【該当する看護師の特徴】 ・断り切れない・自分の意見を相手に伝えることができない ・自分を大切にできていない ・人の役に立ちたい思いが強い |
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アサーティブに問題解決するタイプ | 今からAさんのお迎えに行くためBさんの点滴を繋ぐことはできないけれど、11時ごろには帰ってくるので、それからだったら手伝えます |
【該当する看護師の特徴】 ・自分の意見を伝え相手の意見を尊重する姿勢をとる |
※1:緊急の場合、素早くはっきりと相手に意見を伝える必要があります。少しの伝達ミスや判断ミスが患者の命に関わることがあるため、このような言い方になってしまうこともあります。
攻撃的に主張するタイプ・非主張的なタイプのデメリットについて
「攻撃的に主張するタイプ」「非主張的なタイプ」、この2つのコミュニケーションタイプにはそれぞれ以下のようなデメリットがあります。
攻撃的に主張するタイプ | 周囲から孤立してしまう可能性がある |
非主張的なタイプ | 周囲から良いように使われることがある |
どちらのコミュニケーションタイプも間違いではありませんが、「攻撃的に主張するタイプ」「非主張的なタイプ」に偏ることでデメリットが生じるという点は理解しておきましょう。
アサーティブに対応するために考え方の視点を変える
看護師は、ちょっとしたコミュニケーション不足によって、患者のみならず自分も危険にしてしまうことがあります。
ここでは、
- 攻撃的に主張するタイプ
- 非主張的なタイプ
に該当する看護師に対して、アサーティブに対応するために考え方の視点を変える方法を説明します。
攻撃的に主張するタイプがアサーティブに対応するためには
攻撃的に主張するタイプは「自己主張をする」ということはできているため、あとは、「相手を尊重する」ということができるようになればいいのです。
具体的な方法としては、
- 相手が今、何を考えているのか
- どのような状態なのか
という上記のポイントを、コミュニケーションを取る前に考えるようにするようにしましょう。
非主張的なタイプがアサーティブに対応するためには
非主張的なタイプの看護師は、相手のことを大切に思うように、自分のことも大切にしましょう。
このタイプの方の中は、自分のことを自虐的とも思えるくらい後回しにされる方もいますが、自分を大切にしても良いのです。
最後に
看護師は病んでいる人を毎日観察して日々看護に取り組んでいます。そんな看護師だって暴走してしまうときもあるし、病んでしまうこともあるのです。そのようなときはアサーションを意識して目の前の看護に取り組んでいきましょう。
そして、看護師としても、ひとりの人間としても、不健康な生き方にならないように、自分が健康であるために、そして自分らしく生きていけるように、今日からアサーションを意識して看護の現場に突入していきましょう。