このコンテンツは、弊社が看護師免許を確認した看護師が執筆しておりますが、ご自身の責任のもと有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。
脳炎、脳症はウイルスやなんらかの原因により脳が浮腫みを起こし、痙攣や意識障害などの重篤な症状が現れることがあります。
急性期は命に直結する重篤な症状が起こりうるため、看護師には観察力と患者・家族へのケアが求められます。
ここでは、脳炎、脳症の症状と看護計画についてご紹介します。
脳炎、脳症の患者の症状
脳炎は、細菌やウイルス感染に続発して起こるもの、ウイルスが直接脳に感染し起こるものがあります。そのため、感染症状として、発熱を伴うことが多いです。
他の症状として、炎症により脳が浮腫み血圧が上昇することで、初期では頭痛、嘔気、嘔吐を示すことがあります。
また、注意が必要な症状として意識障害や痙攣が挙げられます。
脳症は、何らかの原因によって脳が浮腫を起こし、痙攣や意識障害、血圧や呼吸の変調を来している状態です。原因がはっきりしていない状態を急性脳症といいます。
補足説明!
脳炎を引き起こすウイルスで主なものとしてはインフルエンザウイルス、ヒトヘルペスウイルスなど、細菌ではマイコプラズマなどがあります。
このようなウイルスへの感染環境が周囲にあったかどうか確認する必要があります。
脳炎、脳症の患者で看護師が注意しなければならない症状
脳炎・脳症の患者で看護師が注意しなくてはいけない症状についてご紹介します。
痙攣を起こしていたらよく観察する
脳炎、脳症では、多くの場合痙攣を起こします。もし痙攣を起こしている場合には、以下のことを観察します。
- 顔色
- 呼吸の有無
- 意識レベル
- 痙攣時の体の動き
- 眼球の向き
- 持続時間
発熱時、または非発熱時であったかも記録しておくと良いです。
痙攣時に無呼吸やチアノーゼを伴う場合は、低酸素状態が長時間続き、低酸素脳症を起こす可能性があるため注意が必要です。
早期対応のための観察や準備が重要
痙攣へは早期の対応が必要なため、観察がとても重要です。
定期的に巡視をしたり、バイタルサインのモニタリングを行ったりすることで痙攣の早期発見に繋がります。
また、脳炎脳症が疑われる場合、
- ベッド周りに酸素や吸引をすぐに使用できるようセッティングしておく
- 痙攣時の対応についての指示を医師に確認しておく
(痙攣があったらすぐに医師に連絡をするのか、一定時間以上持続したらその時点で抗てんかん薬を使うのか)
などしておくことで、痙攣が起きてしまった際にも早期に対応することができます。
「いつもと違う」意識障害に注意する
意識障害に注意が必要です。痙攣していなくても意識を失っているなどする場合があります。
- それまで普通にしていたのに急に呼びかけに応じなくなる
- 寝てばかりいる
- 視線が合わない
など、いつもと違った様子があれば注意が必要です。
ポイント!
特に小児は、言葉でのコミュニケーションをまだ十分に取ることができないことや、月齢的にまだ視線が合わないという時期もあるため異変に気付きにくいです。
そのため、普段の様子を思い返して「いつもと違った様子」ということに気付くことが重要です。
早期発見のためには活気や機嫌の観察が大切
上記のような異常に早期に気付くためには活気や機嫌の観察がとても大切です。
意識障害後、一度は普段通りに戻っても、再度意識障害を起こすことがあります。
意識レベルを継続して評価していく必要があり、JCSやGCS等のスケールを用いると分かりやすいです。意識レベルが下がっている場合は医師に報告をします。
麻痺や発達遅滞などの後遺症に注意する
急性期を脱しても、脳へのダメージが大きいと、身体の麻痺や発達遅滞といった形で後遺症が現れることがあります。
麻痺により、転倒転落リスクや誤嚥のリスクが上がるため注意が必要です。
また、発達の後退や遅滞により日常生活へも影響が出てきます。
脳炎、脳症の患者の看護計画
脳炎、脳症の患者の看護計画についてご紹介します。
#1 痙攣や意識障害を早期に発見する
看護目標 | 痙攣や意識障害を早期に発見する |
OP (観察項目) |
・意識レベル(JCSやGCSを用いて評価する) ・痙攣(型、持続時間、意識の有無、無呼吸の有無、チアノーゼの有無、痙攣時の状況) ・バイタルサイン ・機嫌 ・採血結果(WBC、CRP、Na、K、アンモニア、Glu、CK、血ガス) ・髄液検査結果(細胞数、糖) ・検査結果(脳波、CT、MRI、脳血流) |
TP (ケア項目) |
・PRモニタ、SpO2モニタを装着する ・痙攣時は医師の指示に基づき対応する (すぐに報告し医師に対応してもらうのか、ナースサイドで座薬などを使用するのかあらかじめ指示をもらっておく) ・痙攣時や突然の意識消失時、外傷を負わないよう環境整備を行う ・医師の指示に基づいた投薬を行う ・意識レベル低下時は医師に報告する |
EP (教育・指導項目) |
・家族が痙攣やいつもと違った様子を発見した時には、 ナースコールですぐに看護師に知らせるよう説明する ・不安や疑問はいつでも看護師に相談できることを説明する |
#2 適切に検査を受けることができる
看護目標 | 適切に検査を受けることができる |
OP (観察項目) |
・検査の種類とスケジュール ・睡眠、覚醒リズム ・眠剤使用時、覚醒度、副作用の有無 |
TP (ケア項目) |
・眠った状態で受ける必要のある検査の場合、睡眠導入への援助を行う ・検査前に眠くなるよう生活リズムを調整し、眠剤の使用を最小限に留めるよう援助を行う ・検査に付き添い、検査中も症状の観察を行う |
EP (教育・指導項目) |
・検査があることが前日までに分かっている場合、本人や家族に知らせておく ・眠剤の必要な検査の場合、検査の時間に合わせて眠くなるよう生活リズムを調整するよう伝える |
#3 後遺症があっても、日常生活を安全に送ることができる
看護目標 | 後遺症があっても、日常生活を安全に送ることができる |
OP (観察項目) |
・麻痺の有無、程度 ・日常生活動作の自立度 ・発症前の発達状況 ・発症後の発達状況 |
TP (ケア項目) |
・麻痺がある場合、転倒、転落しないよう環境整備を行う ・治療の前、中、後で定期的に発達評価をする (デンバー式、遠城寺式などスケールを用いる) ・本人ができる部分は自分自身で行ってもらい、できない部分を援助する ・コメディカルと連携し、発達を維持または促す機会を作る |
EP (教育・指導項目) |
・麻痺がある場合、転倒、転落しやすいため、家族が側を離れる際は看護師に知らせるよう説明する ・発達を促すために、本人が発症前に好きだったおもちゃなどがあれば家族に持ってきてもらう ・不安や疑問がある際はいつでも看護師に伝えるよう説明する |
脳炎、脳症の患者の看護の注意点
脳炎、脳症の患者を看護する際に注意したい点についてご紹介します。
急性期は命に直結する重篤な症状が起こりうるため観察力を駆使する
痙攣や意識障害に早期に対応することが、命を守り後遺症の軽減にもつながるため、モニタリングを行ったり、バイタルサインの測定を頻繁に行ったりと、観察頻度を上げることが大切です。
一度は痙攣も治り、発症前と変わらぬ様子でベッド上で遊んでいた二歳児が、翌日だんだん会話がままならなくなり、夕方には再び痙攣したということもありました。
訪室頻度が少なかったらこのような変化にすぐに気付けなかったかもしれません。
後遺症に対する家族のケアを行う
急性期には静注鎮静をかけ、眠っている状態を目にすることが多いため、麻痺や発達の後退にあまり気づきません。
痙攣が落ち着き、本人の覚醒度が上がったところで徐々に目に見えるようになってきます。
危機を脱しても、この先長い生活への不安が続くというナイーブな状態に家族は陥りやすいです。
入院期間も長くなることが多いため、プライマリーナースをつけるなど、家族が不安を打ち明けられる場を持つことが大切です。
ポイント!
不安に寄り沿うだけでなく、できるようになったことを定期的に家族とともに評価すると良いです。
発達の進度が緩慢になったとしても、何かできるようになれば、それが家族の喜びになります。
発症前の発達状況を家族から聞いておく
小児では、月齢的に日常生活動作を十分行うことができなかったりするため、麻痺があっても評価しにくいです。
また、発達においても、月齢により習得状況が違い、更に個人差もあります。
そのため、発症前の発達状況を家族に細かに聞き取り、情報を得ておくことが重要となります。
まとめ
以下のウェブサイトを参考にさせていただきました。
脳炎、脳症は急性期から慢性期まで経過が長く、その時々に合った看護が必要とされます。
痙攣や意識障害など、見た目にも不安を与えやすい疾患であることから、適切な看護をきめ細やかに行っていくことで、患児やその家族の負担や不安を軽減することにつながります。
退院後もフォローが必要となる場合があるため、入院中から退院を見据えた個別性のある看護を行えると良いでしょう。