SCU(脳卒中ケアユニット)看護師の心得!脳神経外科の看護体制

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SCU(脳卒中ケアユニット)看護師の心得!脳神経外科の看護体制
   
林みずほ 看護師
林みずほさん(看護師)

このコンテンツは、弊社が看護師免許を確認した看護師が執筆しておりますが、ご自身の責任のもと有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。

SCU(Stroke Care Uni)をご存知でしょうか。脳卒中ケアユニット・脳卒中センターとも呼ばれ、その名の通り脳卒中の患者が入院する病室のことを言います。ここで勤務する看護師は脳神経外科急性期のスペシャリストです。

これから脳神経外科で勤務する人や脳神経外科で働きたいと思う人にはぜひ知っておいてほしいSCU看護師の心得をその解説とともにお話いたします。

脳卒中とSCUについて解説

脳神経外科に興味があったり今から脳神経外科で働こうと思っている看護師に向けて、脳卒中とSCUについてご紹介いたします。脳神経外科の看護師として勤務するにあたり、知っておいたほうが良いのでしっかり頭にいれておいてください。

脳卒中とは

脳卒中とは、脳血管が破裂したり閉塞を起こしたりして、意識障害や麻痺などの脳機能の障害を起こした状態のことを言います。脳卒中は大きく分けると脳出血と脳梗塞に分けられます。

  • 脳出血:脳出血・クモ膜下出血
  • 脳梗塞:脳血栓症(非心原性)…血栓、アテローム、ラクナ梗塞・脳塞栓症…心原性脳塞栓症

これは基礎中の基礎なので、すぐに答えられるようにしておいてください。

SCUとは

脳卒中(脳梗塞・脳出血・クモ膜下出血)の患者が、その発症直後から専門的な治療・リハビリを行うために入院する病室のことをいいます。SCUでは脳卒中の発症から数えて14日間までは1日5700点の入院管理料が算定できます。

このSCUには入院するにあたっては細かな以下のような規定があり、厳しい施設基準も設けられています

  • 入院管理料が算定できるのは脳卒中の患者だけであること
  • SCUに入院する患者は概ね8割が脳卒中であること
  • 専門医の常駐、看護師は3対1以上の看護体制であること(夜勤でSCUの患者と他の患者を併せて受け持つことは不可)
  • 専任の常勤リハビリスタッフが必要なこと
  • 治療に必要な器械・器具を常備していること
  • CTやMRI・血管造影などの検査ができること

このような厳しい条件をクリアしてはじめて、SCUとして稼働することができます。

超急性期患者への脳神経外科の看護体制とは

超急性期患者に対しては、主に「t-PA静注療法」を行います。2005年に国内で保険適応となったt-PA静注療法ですが、この治療は脳梗塞の患者なら誰でも受けられるわけではなく様々な条件があります。

まずは発症から治療開始までの時間が4.5時間以内であることや既往歴や現在の内服薬などの詳しい問診が必要となります。また事前の検査などを全て時間内に済ませなければいけないのでとにかく時間との闘いとなります。

様々な条件をクリアして、医師がt-PA治療適応と判断したら薬剤が準備されます。

薬投与後の視察も業務のうち

患者の体重で投与量が決まるので体重測定は先に済ませておきます。まず投与全体量の10%を1~2分かけてボーラス投与し、残りは1時間かけて点滴静注します。36時間以内は症候性頭蓋内出血を起こす危険性があるため、投与後も厳重な観察が必要になります。

意識レベルの観察・神経兆候の観察

t-PA投与後の観察方法は以下の通りです。

  • 投与開始~1時間→15分毎
  • 投与後1時間後~7時間→30分毎
  • 7時間~24時間→1時間ごと

時間を計って患者の様子を見に行くのは大変ですが、何か起きてからでは遅いのでしっかり時間を守って観察することが必要です。

血圧測定も大事な業務

脳卒中の患者は超急性期~急性期に症状が悪化することが多いことから、SCUではその基準で看護体制なども厳しく決められており、血圧測定も大事な業務となってきます。

  • 投与開始~2時間→15分毎
  • 2時間~8時間→30分毎
  • 8時間~24時間→1時間毎

この観察時間を見てわかるように看護師はほぼ付っきりになってしまいます。小さな変化を見逃さないようにするため患者からは目が離せない状況です。

超急性期患者に対する脳卒中の観察項目

脳神経外科の看護師の必需品はペンライトと瞳孔計です。常にアイサインを観察することが重要となるため、ペンライトを持っていないと仕事になりません。ここがほかの診療科と異なる一番のポイントかもしれません。

それでは観察項目を確認していきましょう。

  • 意識レベル
  • バイタルサイン
  • 不整脈の有無
  • 瞳孔サイズ、瞳孔不動の有無、共同偏視の有無、眼球運動など
  • 麻痺の有無、程度(MMT)
  • 言語障害の有無、程度
  • 感覚障害の有無、程度
  • 嘔気、嘔吐の有無
  • 水分出納バランス

今までなかった症状が突然現れたり、著しく意識レベルが低下するなど、決して見逃してはいけないポイントが多々ありますので、自分で判断できないときにはすぐに誰かに一緒に確認してもらうこと、すぐに医師への報告を行うことも重要です。

脳神経外科での急性期患者への看護体制について

急性期もまだまだ症状が不安定な時期なので、神経学的症状や意識レベルの変化に注意が必要です。

脳卒中の患者は早期のリハビリテーションも重要となるので、治療と並行して早期に床上リハビリなどから開始します。十分なリスク管理のもとリハビリテーションを行うことで廃用症候群の予防や早期のADL拡大を目指します。

急性期患者の治療はチームワークが鍵

SCU看護師は患者の状態を見極め、治療とリハビリが円滑に進むような調整を行う必要があります。その人の目指すADLに合わせた目標設定が必要となりますのでリハビリスタッフとのチームワークが鍵となります。

患者と家族への心のケアが必要な場合がある

患者によっては強い麻痺などが残ると車椅での生活になったり、利き手交換などを余儀なくされる場合もあります。そのような残存する障害を受け入れられるような心のケアも看護師には求められます。

急な発症に戸惑う家族も多く、後遺症が残りやすい脳卒中ではその家族支援も重要な鍵です。早い段階でソーシャルワーカーの介入を行うなど、SCUでは多くの医療スタッフが一丸となって患者やその家族をサポートしていきます。

まとめ

SCU看護師は患者の変化を見逃さないために常に緊張を強いられます。しかしその分、非常にやりがいのある職場でもあるのです。

麻痺による嚥下障害がある患者が食事を食べられるようになったときや、歩けなかった患者が歩けるようになったときにみんなで喜びを分かち合える、そんな素敵な場所なのです。

最近ではt-PAなどの治療が開始され、来院時にあった麻痺が治療後数時間で改善していく様子が見られたりもします。脳神経外科はとても奥が深く、勉強すればするほど嵌っていく、そんな診療科です。

「脳神経外科」というとやや難しいイメージから敬遠されがちなのですが、ぜひ挑戦してみてほしいと私は思います。

   
執筆・監修看護師

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