急性肝炎患者の看護(症状・看護計画・注意点)について

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急性肝炎患者の看護計画と注意点
   
しゅう 看護師
しゅうさん(看護師)

このコンテンツは、弊社が看護師免許を確認した看護師が執筆しておりますが、ご自身の責任のもと有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。

急性肝炎の原因は肝炎ウィルスやその他のウィルス感染や、薬物によるもの、アルコールによるもの、自己免疫によるものがあります。それらによって肝細胞が炎症・壊死を起こす事によって症状が現れます。

その症状は、全身倦怠感、食欲不振、悪心・嘔吐、発熱等感冒症状です。急性肝炎は、ウィルスが原因となる事が最も多いですが、その中でもA型肝炎が一番強く症状が現れます。

反対にC型肝炎であると症状が比較的軽く、感染したウィルスの違いによって症状の強さが異なります。

このページでは、急性肝炎の患者の看護について、看護師が注意しなければいけない患者の症状、看護計画、患者への看護の注意点についてご紹介していきます。

急性肝炎の患者で看護師が注意しなければならない症状

急性肝炎の患者で看護師が注意しなければならない症状

急性肝炎の患者を観察する際に最も注意しなければならないのは、劇症化の徴候です。劇症肝炎となると肝不全の症状が現れます。

その5つの症状を説明します。

肝性脳症

肝性脳症となると、意識障害がみられます。軽度であると傾眠傾向や、物を取り違えるなどの行動の異常が見られます。重度となると、せん妄状態であったり、昏睡状態とまでなってしまう場合もあります。

補足説明!

補足事項
肝性脳症の分かりやすい症状としてはばたき振戦があります。腕をまっすぐ前に伸ばし手のひらを前に向けるようにすると、不規則に震えます。このような事も肝性脳症の判断の1つです。

腹水

広範囲で肝細胞が壊死すると、肝機能が低下することによって低アルブミン血症となり腹水や浮腫がみられます。

黄疸

ビリルビンの代謝障害となることで黄疸があらわれます。白目の部分や皮膚に色が黄色く変化しますが、それに伴い、尿の色が濃くなったり、全身に痒みが出現したりもします。

出血傾向

肝臓が出血を止める凝固因子を生産しているので、それらの生産が低下することで、出血しやすくなります。手や足などをぶつけるとすぐに皮下出血となりますし、怪我など傷ができるとなかなか出血が止まらなくなります。

補足説明!

補足事項
日常的なことですと、歯磨きをした時に歯茎から出血しただけでも、出血が止まるまで時間がかかります。

肝性口臭

肝臓でアンモニアが分解されずに残ってしまうため、呼吸をする際にアンモニアの臭いがします。

急性肝炎患者の看護計画について

急性肝炎患者の看護計画

急性肝炎は、治療方法としては、安静に過ごすことがとても重要です。

自覚症状が強くみられる場合は苦痛が伴いますし、患者や家族は不安を感じ精神的にも不安定になります。それらの身体面や精神面に対して、看護目標を設定していく事が大切です。

看護目標:症状を緩和し、苦痛を軽減させる

OP
(観察項目)

・バイタルサイン
・全身倦怠感
・関節痛等の感冒症状
・腹部膨満感
・悪心
・食事摂取量
・搔痒感
・水分出納量
・出血の有無
・血液検査データ
(AST、ALT、γ-GTP、ALP、ビリルビン値、プロトロンビン時間、血清アンモニア値等)
・画像検査データ
(腹部CT画像、腹部超音波検査の結果など)

TP
(ケア項目)
・補液、薬物治療(肝庇護剤)の援助
・安楽に過ごせるよう環境を整える(室温の調整、衣類・掛けものの調整)
・食事療法の援助(肝庇護食)をし、必要時分割食を検討する
・搔痒感がある場合、就寝前の保清をおこなう
・転倒を予防する
EP
(教育・指導項目)
・安静臥床の必要性を説明する
・禁煙・禁酒の必要性を説明する

劇症肝炎への悪化を予防する

OP
(観察項目)
・バイタルサイン
・意識障害
・黄疸の有無
・尿の性状
・排便の有無
・睡眠パターンの変化
・記銘力の状態
・羽ばたき振戦の有無
・血液検査データ
(AST、ALT、γ-GTP、ALP、ビリルビン値、プロトロンビン時間、血清アンモニア値等)
・画像検査
(腹部CT画像、腹部超音波検査の結果など)
TP
(ケア項目)
・薬物療法の援助(抗ウィルス療法等)
・排便コントロール
(排便が無い場合は、腹部マッサージ、医師の指示のもとで緩下剤の服用や浣腸を実施する)
・意識障害や記銘力障害等がみられた場合は医師に速やかに報告する
・感染予防
(手指消毒、汚染物の処理を適切におこなう)
EP
(教育・指導項目)
事前に劇症肝炎の症状について家族にも説明し、状態の把握について協力を得る

疾患や症状に対する不安を解消する

OP
(観察項目)
・患者の表情・言動
・睡眠の状態
・食欲の有無
TP
(ケア項目)
・患者とのコミュニケーションを図り、話を傾聴する
EP
(教育・指導項目)
・病状や治療方法について説明し、必要以上に不安を感じないように配慮する
・感染性の肝炎である患者に対しては、具体的な感染予防の方法を説明し、安心感を与える
・不安が強い時期は、家族や面会人にも協力を得て言動に注意してもらう

急性肝炎の患者の看護の注意点

急性肝炎の患者の看護の注意点

急性肝炎の患者と関わる上で、注意しておくべき点が2つあります。

感染予防を徹底すること

前述したように、急性肝炎はウィルス性によるものが最も多いです。そのため、ウィルス性の肝炎患者に対しては、院内感染の予防に努める事が大切です。

手指消毒はもちろん、衣類や寝具、使用した器具の消毒を確実におこなう必要があります。

A型肝炎の場合

A型肝炎は発症1週間前から発症時ころに糞便中にウィルスが排出されるので、汚染物の廃棄時に感染しないように注意が必要です。

B型肝炎、C型肝炎の場合

B型肝炎、C型肝炎は血液を介して感染するので、血液検査やルート確保の際など、手袋を装着するなどして針刺し事故を起こさないようにする必要があります。

注意点!

注意点
万が一、感染の恐れがある場合は施設のマニュアルに基づいて速やかに対処しなければなりません。

精神面のサポートが必要であること

急性肝炎になり、症状が発現すると自覚症状によって身体的にも精神的にも苦痛を感じます。

反対に、自覚症状がそれほど強くない場合でも、身体的にそれほどの苦痛が無い状態で安静を強いられるとストレスがたまってしまう場合もあります。また、感染性であると、周りの人に負い目を感じたり、自分がこれからどうなるのかとても不安になったりもします。

患者の外見的に変化に対するサポート

他にも、黄疸や腹水があると、外見的に変化が見られるので、自分の姿にショックを受け落ち込んでしまうこともあります。

このような様々な状態が自身に起こるため、疾患に関してもなかなかしっかり受け止められず、治療に専念できなくなってしまうので、患者の不安な思いを聞き、対処法を説明する必要がありますし、疾患に関して正しい知識を提供する事も必要です。

ポイント!

ポイント
このような精神的なサポートをおこなっていくためには、身近な家族にも同様に説明をし、サポートを得られるような体制を整えていくことにも注意して接していく事が大切なポイントです。

まとめ

まとめ

参考文献:

急性肝炎の原因は様々ですが、重症化しないために日常生活の様子から全身状態の変化を把握すると同時に、患者や家族の恐怖感も解消できるように、身体面と精神面の両方を慎重にサポートしていかなければなりません。

そのためには、正確な知識を持って患者と接し、ちょっとした変化も見逃さないように信頼関係を築いていけるように関わっていくことが重要です。

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