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逆流性食道炎は、胃酸を含んだ胃の内容物が食道へ逆流する事によって食道が炎症を起こす疾患です。食道には、酸から粘膜を防御する機能がないため、強い酸である胃酸にさらされると、食道粘膜は炎症を起こしてしまいます。
症状で最も多いのが胸やけで、他にも胸痛や、喉の違和感、咳、呑酸(酸っぱい液体が口の中にまで上がってきてしまうこと)、声がかれるなどがあります。
このページでは、逆流性食道炎患者の看護について、注意すべき症状、看護計画、看護の注意点を詳しく説明していきます。
看護師が注意しなければならない症状
- 胸やけをする頻度が高い
- 痛みが背中やみぞおちなど広範囲に広がっている
- 出血がある
などの症状がある場合は、炎症が悪化している可能性があるので注意が必要です。
放置している期間が長い程、炎症が深くなったり、広範囲に広がったりするため、症状もひどくなっていきます。
そのため、痛みのアセスメントをすることが必要です。
慢性的に患者に症状が見られる場合について
慢性的に症状がある場合、食道に狭窄が生じる事があります。それによって嚥下障害を訴えることがあります。
嚥下障害により、食物が詰まりやすくなり吐きだそうと嘔吐を繰り返す人もいます。
しかし、嘔吐をすると、逆流性食道炎をさらに悪化させることがあるので、嘔吐にも注意していく必要があります。
ポイント!
自覚症状が全く見られない場合もあるので、呼吸器系疾患や心疾患などの鑑別をする必要もあります。
逆流性食道炎患者の看護計画
逆流性食道炎の患者に対する治療は、基本的には、消化性潰瘍の治療に準じて行われます。
薬物治療は、
- 胃液分泌抑制薬
- 制酸薬
- 粘膜保護薬
- 消化器機能促進薬
などを併用し、長期間内服治療をおこないます。
看護師の役割として、病院だけではなく自宅でも継続して治療をおこなうことができるように援助していくが重要です。
以下3つの看護計画をご紹介します。
看護目標:食道の炎症による痛み等の症状が改善する
OP (観察項目) |
・胸痛・背部痛 ・胸やけ ・呑酸の有無 ・嘔吐 ・嚥下困難感 ・検査データ (上部内視鏡検査の結果、PPI試験結果など) |
TP (ケア項目) |
・医師の指示に基づいて、鎮痛剤や制吐剤の使用 ・薬物療法が確実に行う事が出来るように援助する ・薬剤師に薬の説明を依頼し、薬の説明を受けた後も患者の理解度を確認する ・逆流を予防するために寝る時には上半身を挙上するなど、なるべく安楽な姿勢を取ることを援助する ・痛みによる不安な思いに対して傾聴する |
EP (教育・指導項目) |
・痛みは我慢せずに、医師や看護師に相談するよう説明する ・処方された薬は、中断するなど自己判断しないことを説明する |
看護目標:生活習慣の改善の必要を理解し、セルフケア能力を向上することができる
OP (観察項目) |
・食生活のスタイル(暴飲暴食の有無、高蛋白質食や高脂肪食の摂取量) ・喫煙歴 ・アルコール摂取量 ・カフェインの過剰摂取の有無 ・ストレスによる精神的負担 ・長期的な治療の必要性に対する理解度 |
TP (ケア項目) |
・個別性に応じた生活指導ができるような資料の作成 ・自宅での生活で不安要素の有無をアセスメントする ・逆流性食道炎の治療に関しての理解度をアセスメントする |
EP (教育・指導項目) |
・指示された薬を中断することなく正しく服用してもらうように説明する ・アルコールや喫煙、暴飲暴食を控えるように説明する ・できるだけ重い荷物を持たないようにしたり、コルセットやガードルなど腹部を締めつけたりしないように説明する ・食事摂取後は胃の内容物が逆流しやすいため、食後すぐに横になることは避けるように説明する ・肥満の患者は、適度な運動や食事内容の見直しをおこない、肥満解消を目指すよう説明する ・家族の協力が得られる場合は家族にも同様に長期の治療が必要な事を説明し、一緒に生活習慣を見直してもらう |
看護目標:必要な食事量を苦痛なく摂取することができる
OP (観察項目) |
・食事摂取量 ・嚥下困難感 ・食事形態 ・嘔吐の有無 |
TP (ケア項目) |
・食事の形態を見直し、患者が楽で無理なく摂取できるように援助する ・必要時、栄養士に協力を得て、食事指導を依頼する |
EP (教育・指導項目) |
・少しずつゆっくりと嚥下するように説明する ・刺激物の多いものや、酸性の強いものの摂取は控えるよう説明する ・水分の多い食事を中心に摂取することを勧める ・嚥下困難があっても、無理に嘔吐しようとしてはいけない事を説明する |
逆流性食道炎患者の看護の注意点
逆流性食道炎の患者に対する看護で大切なことは、患者が自宅でも治療や予防を持続していくことができるように説明することです。
逆流性食道炎を引き起こす原因としては、
- アルコールや喫煙、肉など高蛋白な食事、コーヒーや紅茶などカフェインの過剰摂取により、胃酸分泌が増加するため
- ストレスによる食道が過敏になるため
- 前かがみの姿勢、重いものを持ち上げる、肥満など胃内圧の上昇によるもの
以上になります。
つまり、日常生活に逆流性食道炎となる原因があるので、その生活スタイルを変えていくことができるように、生活指導をすることが大切です。
再発防止のための治療の大切さを意識させること
逆流性食道炎の治療は、個人差はありますが、1か月程で症状は改善します。
しかし完治するまでには数カ月と長期に渡ります。
症状が良くなってきたからといって、内服治療を自己判断で中止してしまったり、暴飲暴食をするなど逆流性食道炎を引き起こした生活習慣を再び始めてしまっては、再発してしまいます。そのため、持続した治療の大切さや長く続けることを意識し個別性を重視した指導が必要です。
まとめ
参考文献:
- Nursing Selection2 消化器疾患(初版)/株式会社 学習研究社
- 看護過程に沿った対症看護(改訂版)/株式会社 学習研究社
逆流性食道炎は、最近では高齢者だけでなく若い人の発症も増えています。
発症の原因をみても、食生活が影響しているし、ストレスは仕事をしている人が多く抱えている場合も多いです。働き盛りの人であると、多忙であるため症状さえ改善したら、治療を自己判断でやめてしまったり、通院も中断してしまう場合も多くあります。
そのため、患者と関わる事ができる間に、疾患について、持続した治療が必要で根気を持つ事、続けていくことができる生活習慣の折り合いを見つける事を、患者と話し合いながら説明していくと良いです。外科的な治療を行う場合もありますが、内科的な治療をする患者も多いです。
症状が軽快すれば良いというだけではないということを、コミュニケーションを取って患者自身に理解してもらえる事を意識して関わっていくことがポイントです。