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頸動脈狭窄症とは、脳に血液を送る血管(内頚動脈)が動脈硬化を生じ狭窄する疾患で、高血圧・高脂血症・糖尿病がある中高年の男性に多い疾患です。
狭窄によって血液の流れが悪くなると脳への血流が減少し、血栓ができやすくなり脳梗塞の原因となります。
検査としては、頸動脈エコーで狭窄が認められるとさらに詳しく調べることができるMRA検査・脳血管造影検査などで診断します。
今回は、頸動脈狭窄症患者の症状と看護師が注意すべき症状、看護計画や注意点について説明していきます。
頸動脈狭窄症患者に看護師が注意すべき症状と治療法
頸動脈狭窄症患者の狭窄が軽度の場合は無症状のことが多いです。
狭窄が重度の症状は、片麻痺、言語障害(失語・構音障害)、片側の手足のしびれがあり、一時的に片側の視力が低下することもあります。
これらの症状は、24時間以内(早ければ1時間以内)に良くなることがあり、これを一過性脳虚血発作と言います。
一過性脳虚血発作に注意!
頸動脈が狭窄し、脳に血栓が生じると一過性脳虚血発作の症状がでます。一過性脳虚血発作は、何度も繰り返すと脳梗塞を発症する危険性があるため早期の治療が必要です。
看護師は、患者の手足の麻痺や言語障害、しびれの有無に注意して観察しましょう。患者が脳梗塞を生じると、意識レベルが低下することもあるので注意が必要です。
手術後の合併症に注意!
看護師は、頸動脈狭窄症患者の手術後の合併症を1番注意すべきです。頸動脈狭窄症患者には、抗凝固薬を使用するので特に出血に注意することが必要です。
穿刺部からの出血を予防するために、患者・家族に安静の必要性を説明します。高齢者は、認知力の低下で安静が守れない場合もあるので頻回に訪室するなど注意しましょう。
また、外傷による出血を防ぐため離床後の転倒転落にも注意を要し、点滴ルートの長さの調節や環境整備を行い危険予防に努めます。
頸動脈ステント留置術後に注意する合併症と原因
合併症 | 原因 |
脳梗塞 | ・血管拡張時に血栓が脳内に入るため |
脳出血 | ・ 狭窄部位がステントにより拡張、脳血流が改善されて急に多量の血液が流れるため |
血管解離 | ・血管の拡張により血管壁が避けることがあるため |
再狭窄 | ・ステントの内側や近くの血管内膜の増殖が起こることがあるため |
皮下血腫 | ・安静が足りず穿刺部位から出血が起こるため (痛みを伴い場合によっては血腫を除去する手術が必要となる) |
頸動脈狭窄症患者の治療法
頸動脈狭窄症患者の治療方法として、狭窄が軽度の場合は高脂血症薬や抗血小板薬、糖尿病薬の内服治療と、食生活や禁煙、運動などの生活指導を行います。
そして、搾取が80%以上ある場合は外科的治療を行います。
外科的治療には頸動脈内膜剥離術と、頸動脈ステント留置術があります。
頸動脈狭窄症患者の看護計画
頸動脈狭窄症患者は、頸動脈エコーで狭窄が確認できればMRA検査・脳血管造影を行い詳しく調べた後、治療法が決定します。
その後、狭窄の度合いによって内科的治療もしくは外科的治療を行います。以下に、外科的治療の頸動脈ステント留置術についての看護計画について説明していきます。
脳血管造影検査から手術前の看護計画と、手術から退院までの看護計画に分けて説明します。
検査から手術前の看護計画
まず、検査終了後は退院し手術のために再度入院する流れが多いです。
脳血管造影は、局所麻酔下でカテーテルを用いて大腿動脈や上腕動脈から穿刺し造影剤を注入して血管を撮影します。
終了後は、圧迫止血を行い検査後約8時間は床上安静にし、穿刺部位は屈曲禁止です。1時間程で終わる検査ですが、安静時間が苦痛に感じる検査です。
看護目標 | 安心・安全に検査が受けられるように援助する |
OP (観察項目) |
・バイタルサイン ・頭痛、嘔吐 ・麻痺の有無、徒手筋力テスト(MMT)で判断 ・失語 ・しびれ ・瞳孔不同、対光反射の有無 ・意識レベル ・検査についての理解度 ・睡眠状況 ・不安や顔色 ・穿刺部からの出血、血腫 ・足背動脈の触知 |
TP (ケア項目) |
・麻痺やしびれがある場合は危険のないように身の回りの介助をする ・検査の流れや必要物品について説明する ・鼠径部の剃毛など検査前処置を行う ・安静時間内の排泄や食事の介助をする ・安静時間内は患者の手元にナースコールを置いておく |
EP (教育項目) |
・検査後の床上安静の必要性について説明する ・穿刺部位は屈曲禁止であることを説明する ・気分不快など何かあればすぐにナースコールを押すように説明する |
手術から退院までの看護計画
頸動脈ステント留置術は、局所麻酔で大腿動脈からカテーテルを通して血管の中から狭窄部位を広げる手術です。
頸動脈の狭窄部位に、ステントと呼ばれる金属製の網状の筒を留置して血管を拡張させます。
頸動脈ステント留置術は、侵襲が少ない治療法のため約1週間で退院できます。手術当日は、床上安静で穿刺部位は屈曲禁止のため当日はICUで管理されることが多いです。
看護目標 | 術後合併症に注意し異常の早期発見に努める |
OP (観察項目) |
・バイタルサイン ・頭痛、嘔吐 ・麻痺やしびれの有無 ・失語 ・穿刺部の出血・血腫 ・意識レベル ・瞳孔不同、対光反射の有無 ・不安や顔色 ・水分バランス ・足背動脈の触知 |
TP (ケア項目) |
・鼠径部の剃毛など術前処置を行う ・安静時間内は安静が守れるように身の回りの介助を行う ・転倒転落のないように環境整備を行う ・点滴管理 |
EP (教育項目) |
・安静時間が守れるように必要性について説明する ・気分不快など何かあればすぐにナースコールを押すように説明する ・退院後必ず受診日には受診すること、内服をきちんと行うことを説明する |
まとめ
参考文献は以下の通りです。
頸動脈狭窄症は、脳外科ではよくある疾患で脳血管造影は、頸動脈狭窄症患者や、くも膜下出血などの患者の検査としても行うため看護師が脳外科に勤務すると何度も経験する検査です。
そのため、検査の流れや観察点について頸動脈狭窄症と伴に覚えておくと非常に役に立ちます。
脳の疾患は、見当識障害があり安静の必要性が理解できず動こうとする患者も多いので、看護師の頻回の訪室や環境整備や状態観察はとても重要です。
頸動脈狭窄症の手術は、他の脳疾患の手術に比べて手術時間も短く、創部も非常に小さいです。
しかし、手術による合併症やリスクは高いので意識レベルや神経症状に注意し異常の早期発見に努めていきましょう。
看護師は、頸動脈狭窄症患者の観察点や注意点についてしっかりと覚えておくことで、落ち着いて看護することができます。頸動脈狭窄症患者と接する看護師に少しでも参考になれば幸いです。