慢性腎不全患者の看護(症状・看護計画・注意点)

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さよ 看護師
さよさん(看護師)

このコンテンツは、弊社が看護師免許を確認した看護師が執筆しておりますが、ご自身の責任のもと有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。

慢性腎不全とは数カ月から数十年の長い年月をかけて腎臓の機能が低下するものをいいます。

慢性腎不全の原因となる疾患は糖尿病、慢性糸球体腎炎、IgA腎症、ネフローゼ症候群などがあります。

慢性腎不全は進行すると失われた腎機能が回復することは困難であり、末期の状態になると最終的に透析や腎移植が必要となります。

このページでは慢性腎不全患者の症状について、看護師が看護する場合の注意する点、慢性腎不全患者の看護計画について詳しく説明していきます。

慢性腎不全患者の症状について

慢性腎不全患者の症状について

進行がゆっくりなため腎機能の低下が軽度の初期では自覚症状がないことが多いです。

そのため健康診断などで血尿、タンパク尿、高血圧などで疾患が発覚することが多いです。腎機能がかなり低下していくと夜間の頻尿、手足の浮腫、食欲低下、倦怠感などが出現します。

  ステージ1 ステージ2 ステージ3 ステージ4 ステージ5
腎機能 >90% 90〜60% 60〜30% 30〜15% <15%
症状 正常 自覚症状なし
(蛋白尿)
・高血圧
・夜間頻尿
・貧血
・浮腫
※1
・高血圧
・倦怠感
・食欲不振
・浮腫
・疲労感
・息切れ
・嘔気
・浮腫
・掻痒感
・呼吸苦
・意識低下
治療法 ・生活指導
・食事療法
・薬物療法
・生活指導
・食事療法
・薬物療法
・生活指導
・食事療法
・薬物療法
・透析療法
・腎臓移植

※1(自覚症状がない場合もある)

慢性腎不全患者で看護師が注意しなければならない症状

腎機能が低下すれば手足の浮腫、疲労感、貧血などの症状が現れます。末期になると尿毒症の症状が出現します。

尿毒症の症状は、

  • 頭痛
  • 意識障害
  • 高血圧
  • 嘔吐
  • 呼吸困難
  • 尿量減少

などがあります。

腎機能によって症状が違うので、新たな症状の出現や症状の変化に注意しなければいけません。

慢性腎不全患者の看護計画

慢性腎不全患者の看護計画

慢性腎不全は不可逆性のため治療としては保存的療法が中心となります。

腎機能の低下の程度によって治療は異なり、食事制限、内服治療、透析、腎移植などがあります。ここでは、食事制限や内服治療を行なっている患者に対しての看護計画について説明します。

慢性腎不全の患者には退院後の生活指導がとても重要になるためそれも含めた看護計画について説明します。
看護目標 症状の悪化を防ぎ、退院後も自己管理ができるように指導する
観察項目(OP) ・バイタルサイン
・嘔気、気分不快
・浮腫の有無
・倦怠感
・呼吸苦、呼吸数、呼吸音
・体重の変化
・尿量
・末梢の冷感
・皮膚の乾燥
・検査データ(血液、尿)
・食事摂取量
・家族構成、生活スタイル
・患者・家族の疾患の受け止め方
ケア項目(CP) ・毎朝同じ時間に体重を測定
・水分制限がある場合守れるように援助する
(患者が分かりやすいように表の作成や、毎食決まった量の水分を配るなど)
・皮膚の清潔を保ち乾燥を防ぐ
・患者の思いを傾聴する
・必要時今後の経過について説明する
(透析など)
教育項目(EP) ・体重測定、尿量測定が行えるように説明する
・水分制限がある場合制限が厳守できるように指導、必要性を説明
・退院後の食事について栄養士や医師と連携し指導(塩分、カリウム制限など)
・毎日皮膚を清潔にするように指導
・退院後も内服が管理できるよに指導
・定期受診は必ず受診し、何か症状の変化があればすぐに受診するように説明
・同居家族がいる場合家族にも上記内容を指導する
・何か不安や分からないことがあれば遠慮なく伝えるように説明
・症状が強い場合は無理に動かず休息するように説明

慢性腎不全患者の看護の注意点

慢性腎不全患者の看護の注意点

症状の変化に注意

慢性腎不全の患者は腎機能の低下が軽度だと症状がない人が多く、腎機能が低下するほど症状が出現します。

腎機能の状態によって症状が違ってくるので症状の変化や出現に注意して観察していく必要があります。

ポイント!

ポイント
腎機能の状態で治療法も異なります。そのため症状の早期発見がとても重要になります。

退院指導が重要

慢性腎不全は低下した腎機能が回復することは困難なため腎機能が低下しないように退院後の自己管理がとても重要な疾患です。自己管理の内容として、内服、食事、休息、飲水制限(医師の指示で必要な人のみ)などがあります。

自己管理ができるように入院中からしっかりと指導していく必要があります。特に食事指導には塩分制限やカリウム制限など細かい内容は患者の状態によってそれぞれ異なるため患者だけではなく、実際に食事を作る家族も含めての指導が必要です。

補足説明!

補足事項
患者自身が食事を作る場合でも家族にも同じように患者の食事について意識してもらうために栄養士からの食事指導に同席してもらうのも良いでしょう。

精神的フォロー

慢性腎不全の患者は今後透析や腎移植が必要になる可能性があります。

腎機能の低下状態により症状が出現すれば透析になるかもしれないという不安を感じる患者もいます。そのため患者や家族の思いや不安を傾聴しフォローしていくことが必要になります。精神的フォローをすることで積極的に患者が退院後も自己管理できることにも繋がります。

また、医師と相談し必要時不安が軽減するように透析についての説明が必要になる場合もあるので透析や腎移植についての知識も看護師は必要です。

まとめ

まとめ

慢性腎不全の患者の看護は症状の観察と、腎機能が低下しないための自己管理ができるように患者を指導・援助していくことが重要になります。

自己管理するための患者指導はただ指導するだけでなく疾患の受け止め方や理解度を確認しながら家族も含めた指導が必要です。低下した腎機能が回復することは困難なことも含めて説明し、しっかりと疾患を受け止めるように働きかけていく必要があります。

この記事が少しでも慢性腎不全の患者に関わる看護師の役に立てば幸いです。

   
執筆・監修看護師
さよ 看護師
さよ 看護師
  • エリア:京都府在住
  • 保有資格:看護師
  • 施設経験:大学病院(混合病棟)、総合病院
  • 専門分野:脳神経外科、呼吸器内科、腎臓内科、放射線治療科、皮膚科、麻酔科、血液内科、内分泌内科

地方の大学病院で約6年勤務し、その間妊娠・出産も経験し出産後も子どもを保育園に預けながら中核病院で正社員として働いていました。その後京都に移り住み現在は子育てしながら訪問入浴・デイサービス・健診など派遣看護師として働いています。私自身子どもを育てながら色々な勤務形態で勤務した経験があるのでママさんナース、これから結婚・出産を経験する方々に私の経験をもとに情報を発信していきたいと思います。

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