看護師のモニター心電図の知識

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モニター心電図の知識(看護師)
   
有田 看護師
有田さん(看護師)

このコンテンツは、弊社が看護師免許を確認した看護師が執筆しておりますが、ご自身の責任のもと有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。

看護師にとってモニター心電図の知識については、どの病棟でも必要になってくる知識です。

そこで、このページでは、モニター心電図を正確に読めるようになるために知っておきたいポイントを紹介していきます。正常なモニター心電図の波形を理解して、異常な波形を認識できるようになりましょう。

モニター心電図とは

病棟で心臓の動きを観察するための方法としては、12誘導心電図とモニター心電図がまず挙げられます。同じ心臓の動きを観察するものですが、その観察する目的はそれぞれ異なります。

モニター心電図の目的

モニター心電図の目的は、命の危機に繋がる危険な不整脈を素早く発見し対応するため、また突然発生する心停止が起こった場合すぐに対応するため、必要に応じて装着したり、24時継続して使用されます。

病棟や患者の状態によっては、終末期のモニタリングのために使用されることもあります。

正常な波形と異常な波形

心臓のいわゆるP波が出た後にQRS波が出る洞調律以外の徐脈や頻脈、あるいは何らかの心臓におけるリズムの異常がみられるものものを不整脈といいます。

不整脈はただちに対処しないと致命的状態をもたらすものや、致命的な不整脈に移行しやすい危険なもの、あるいは緊急性がなく経過観察でも大丈夫なものなど、臨床的な意味合いで分類することができます。また、洞房結節や心房、心室など異常の発生する場所や、頻脈性や徐脈性などによる分類、刺激生成異常や伝導障害などの発生する原因によっても分類されます。

その一つ一つを理解することは確かに必要になりますが、まず第一に覚えるべきことは正常な波形は何かということです。正常が何かを自分の言葉で他者に伝えることができなければ、何が異常なのかは曖昧なままです。正常な波形を洞調律と呼びますが、まずはそこから始めましょう。

洞調律を満たす条件

以下の条件を満たす場合、洞調律といいます。

  • 心拍のリズムが不整ではなく、心拍数が60~100回/分みられる
  • P波がきちんと見られる
  • PQ(PR)間隔が正常にみられる
  • QRS波が形、幅ともに正しくみられる
  • 全体のリズムを乱す異常波形がみられない

モニター心電図で観察するのは心臓の動き

モニター心電図の使用する目的はわかりましたね。では、モニター心電図を使用する際に欠かせない知識は、何と言っても心臓です。

心臓の位置について

まず心臓は体の胸部に存在し、左右の肺の中間にあり、胸骨と脊椎に挟まれるように位置しています。大きさは、人の手の握りこぶしくらいとされ、重さは体重の1/200程度と言われています。

胸の真ん中に位置しているとイメージする人がいるかもしれませんが、実はそうではないのです。

余談ですが、心尖部が第5肋間、鎖骨中線上付近にあること、そして心尖部と心基部を結ぶ線が水平面に対して50~60度傾いているということも意外と知られていないかもしれません。

体循環について

全身に酸素と栄養を供給する循環系です。大循環とも呼ばれており、血液が左心室を出てから右心房に戻ってくるまでの一周に要する時間は約50~60秒と言われています。

1回の拍出量はおよそ80mlで、体重65kgの人の場合、約4500mlの血液が循環しています。

肺循環について

右心室から送り出された血液は、左右の肺動脈に分かれて左肺と右肺に入り、肺胞でガス交換が行われます。ガス交換によって、血液中の二酸化炭素が放出され、新たに酸素が供給されます。

供給された酸素が血球中のヘモグロビンと結びついて左心房に戻ってくる循環を肺循環と呼びます。肺循環に要する時間は大変短く、およそ3~4秒ほどです。

ちなみに、左心房に戻ってきた血液は左心室から全身に送り出され、身体の隅々に運ばれます。そして行きついた先で酸素を供給し、二酸化炭素を受け取り、また心臓に戻ってきます。

刺激伝導系について

心臓は収縮と拡張を繰り返して動いていますが、不規則に繰り返しているわけではないです。

ペースメーカー細胞と呼ばれる洞結節からの命令によって収縮を開始します。 洞結節からの命令は、左右の心房を伝わった後に房室結節に伝わります。

ここで一瞬命令が遅れてヒス束に命令が伝わった後、左脚・右脚に伝わり、プルキンエ繊維を通って左右の心室の収縮が開始します。これを順番に書くと、【洞結節⇒左右の心房⇒房室結節⇒ヒス束⇒左脚・右脚⇒プルキンエ線維⇒左右の心室】となります。

洞房結節からの命令は適当に伝わっているのではなく、きちんとした経路を伝わっています。その伝導路を刺激伝導系と呼びます。そして、その刺激伝導系の命令を簡易的で視覚的に表したものがモニター心電図となります。

モニター心電図を読む上で必要になる知識

モニター心電図を見ると、小さな波や大きな波が見えると思います。それぞれをP波、QRS波、T波と呼びますが、一つ一つ意味合いがあります。それを理解することで、心臓の動きもイメージすることができると思います。

また、「心臓で何が起こっているか」をイメージできれば「どのような心電図の波形になるか」ということも推測できるようになると思います。

そして、モニター心電図で見られる波形の大きさは、電極の位置、瘦せ型や肥満体型、またはそのときの体位など、さまざまな観察環境によって変化しますが、P波が出た後にQRS波が出てくる時間などの時間間隔は観察環境にほぼ左右されることはありません。

P波とは

洞房結節から発生した命令が心房内を伝わって、左右の心房が収縮する過程に対応しています。

QRS波とは

命令が左右の心室全体に拡がり収縮する過程に対応しています。この波形以降から心室の収縮が始まります。

最初に現れる下向きの波をQ波、次の上向きの大きい波形をR波、その後に現れる下向きの波をS波といい、合わせてQRS波ともいいます。

T波とは

興奮した心室が電気的に回復していく過程に対応しています。QRS波からT波の終わりまでが心室の収縮期間に相当します。

不整脈について

モニター心電図の目的は、致死的な不整脈を見逃さないためのモニタリングです。心臓を一方向から観察しているため、心筋梗塞や狭心症などの診断はできません。では、その見逃してはならない致死性不整脈とはなんでしょうか。

緊急性の高い不整脈とは

主に心室細動、脈拍が触知できない心室頻拍、無脈性電気活動(PEA)です。

心室細動(Vf)

心室細動とは、いわゆるVf(Ventricular fibrillationb)と呼ばれるもので、心室が細かく動いているだけの状態です。細かく動くため血流が保たれず循環動態は破綻します。そのため、血圧の低下に伴い意識は消失し、見逃したままでは間違い亡くなるでしょう。

何はともあれ除細動器(いわゆる電気ショック)を使用して、心臓の動きを一度リセットする必要があります。とにかく一刻も早く除細動器です。それが届くまでは心臓マッサージを行い、心拍を確保し血流を途絶えないようにします。

エピネフリンや抗不整脈薬の使用が考慮される場合は血管の確保も必要になります。

心室頻gg拍(VT)

心室頻拍はVT(Ventricular Tachycardia)と呼ばれ、Vfと同じく略語で呼ばれることが多々あります。

心室頻拍とは、異所性刺激と呼ばれる心室のどこかの心筋細胞が勝手に心臓を収縮させるための電気刺激を出しているせいで心室が頻回に収縮を繰り返している状態です。

循環動態が保ている場合は心室細動に移行しないような対応になりますが、循環動態が保てない場合は直ちに除細動の適応になります。

心室頻拍の怖いところは、心臓が十分な拡張を行うことができず、血液が心房に戻ってくる前に心臓が収縮を始めてしまうところです。全身の血液が心房に十分戻ってくる前に心臓がまた収縮を始めるため、空打ち状態のイメージになり、血流を保つことができる循環動態が破綻してしまう可能性があるからです。

モニター心電図で心室頻拍を発見したら、まずは患者を見に行きましょう。大体の場合は臥床から座位になったり、モニター心電図が外れていたり、歯磨きしてたりと身体を動かして正しく測定できていないことがあります。

また、仮に本当に心室頻拍だったとしても循環動態が保てているかどうかで対応は変わりますし、循環動態が保たれているかどうかはベッドサイドに行き患者の表情を観察したり、意識レベルの確認、脈拍の触知や血圧測定をしないかぎり評価できません。

まずは患者の元に足を運びましょう。循環動態が保たれていない場合は心室細動と同様、まずは除細動器や心臓マッサージです。

要観察が必要な不整脈とは

血圧が維持している持続性心室頻拍。血圧が維持できている発作性上室性頻拍など循環動態は保たれているものの、心停止につながるような不整脈です。

発作性上室性頻拍

発作性上室性頻拍とは、PSVT(Paroxysmal Supra Ventriccular Tachycardia)とも呼ばれ、突然発生して、しばらく続いた後に止まる頻脈です。上室性とは、心室より上側を指しますが、洞房結節からの刺激で発生しているかもしれないし、心房のどこかの心筋細胞から刺激が発生しているかもしれないため、大まかに上室生と表現されています。

突然心臓が頻回に拍出を行っているため、モニター心電図では、突然に幅の狭いQRS波が起き、突然に見られなくなります。房室接合部周辺より刺激が出ていることが多いので、P波は確認できないことが多いです。

モニター心電図で発見したら、患者の元に行きましょう。発作性上室性頻拍でもやはり、循環動態が保てているかどうかで対応は変わりますし、循環動態が保たれているかどうかはベッドサイドに行き患者の表情を観察したり、意識レベルの確認、脈拍の触知や血圧測定をしないかぎり評価できません。

まずは患者の元に足を運びましょう。循環動態が保たれていない場合は心室細動と同様、まずは除細動器や心臓マッサージです。

心室性期外収縮

PVC(Puremature Ventricular Contraction)は臨床で多くみられる不整脈の一つです。

そして、日常生活をしている上で、誰にでも見られることがあります。そのため、既往歴に狭心症や心筋梗塞などの心疾患がなければ経過観察になります。

ただし、胸部症状が気になる場合は、患者の不安を軽減するためにも、薬剤を使用する場合もあります。

心房細動

臨床ではAF(Atrialt Fibrillation)と言われ、48時間以上経ったものを慢性心房細動と呼ばれます。慢性的な経過をたどることが多く、緊急で対応することや直接的に治療することはほとんどありません。

しかし、心房細動では頻脈になるため心拍出量が低下し、心房に血液が滞りやすくなっているため血栓ができやすくなります。そのため、血栓予防でワーファンリンなどの抗凝固療法を行う必要性が考えられます。

循環動態は保たれていますが、頻脈が続いている場合、血圧測定時や、脈拍を触診する際に不整を感じることができます。

まとめ

いかがだったでしょうか。異常な波形を認識できるようになるためには、日々モニター心電図の波形を見ておくことが大切になります。

また、モニター心電図の知識については、どの病棟でも、どの領域の看護師でも必要になる知識ですので、しっかりと理解して、また臨床で活用することができることが大切です。

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