ホリスティックナーシングとは?看護師が学ぶ方法と実践例

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ホリスティックナーシングとは?看護師が学ぶ方法と実践例
   
青木 看護師 看護師
青木 看護師さん(看護師)

このコンテンツは、弊社が看護師免許を確認した看護師が執筆しておりますが、ご自身の責任のもと有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。

ときどき看護系雑誌でもとりあげられていますが、ホリスティックナーシングとは何でしょうか。米国看護協会でも看護専門領域の一つとして取り入れられているこのスキルは、どんなスキルなのでしょうか。

看護師に向けて、気になるホリスティックナーシングについてまとめました。

ホリスティックナーシングとは

ホリスティックナーシングとは

日本ホリスティックナーシング研究会では、ホリスティックナーシングとは、

「身体(body)だけでなく心(mind)と魂(spirit)、あるいは霊性も包括し、社会や自然環境との調和の中で生きていける全体的(ホリスティック)な存在として人々をケアする看護」
引用:日本ホリスティックナーシング研究会

として、ホリスティックナーシングを説明しています。

主に看護方法としては、

1 セルフアセスメント
2 ナースコーチング
3 認知行動療法
4 セルフ・リフレクション
5 栄養学
6 ヨガや気功等の身体の動き
7 ユーモアや笑いと遊び
8 リラクゼーション
9 イメージ
10 音楽療法
11 アロマセラピー
12 マッサージやセラピューティック・タッチ等の手を使った療法
13 関係療法
14 穏やかな死のマネージメント
15 体重マネジメントカウンセリング
16 禁煙援助
17 中毒離脱補助カウンセリング
18 変化へのファシリテート
19 コミュニケーション

等の科学的根拠に基づいた補完代替療法を用いて看護ケアを実践します。

科学的根拠のある癒しのスキル

科学的根拠のある癒しのスキル

看護自体が患者全体をケアするものですので、ホリスティックナーシングも患者全体をケアするという点では同じように感じられます。

しかし現代医療を受けている患者は専門分化した医学を中心とした、疾患や治療の切り口からアセスメントされがちです。

その上、ホリスティックナーシングの対象はより範囲が広く、患者そのものと患者をとりまく環境や社会に着目し、科学的根拠に基づいて「ケア」し「癒す」ことが第一の焦点となります。

日本では専門看護や認定看護のように専門性が確立されているとは言えませんが、アメリカでは看護協会がホリスティックナーシングをひとつの専門領域として位置づけています。

看護師自身がケアされていること

ホリスティックナーシングでは対象へケアを実践するために、まずは看護師自身のセルフアセスメントがなされ、ケアされていることを前提とします。

自分自身に心配事や睡眠不足、ストレス、ケガなどがあったりすると他人にも集中できないというのは感覚的にわかります。

ホリスティックナーシングを自分自身に使いケアできていることが真のホリスティックナースということですね。

ホリスティックナーシングの原点

ホリスティック(Holistic)とはギリシャ語で「全体性」を意味し、ホリスティックナーシングの原点はフローレンス・ナイチンゲールの教えにあります。

哲学に関連することになりますが、その教えとは、全体論の原理、つまり、統一性・ウエルネス・人間と環境の相互作用に焦点を当てて看護することです。

ホリスティックナーシングは看護の原点とも言えそうですね。

ホリスティックナーシングを学ぶにはどうすればいいの?

ホリスティックナーシングを学ぶにはどうすればいいの?

当サイトの調べですが、看護師がホリスティックナーシングを学ぶ場合、「日本ホリスティックナーシング研究会」に参加する方法と、ホリスティックケアプロフェッショナルスクールに参加し「臨床アロマセラピスト」の資格を受講する方法があります。

個人的には、日本ホリスティックナーシング研究会に参加し、まずはセミナーなどを受講する方が費用的にも安く、学べるきっかけになると思います。

日本ホリスティックナーシング研究会に参加する

ホリスティックナーシングを学ぶには、日本ホリスティックナーシング研究会(http://www.jhna.jp/)が開催しているホリスティックナース養成講座を受講する方法があります。

2年以上臨床経験のある看護師であれば申し込みができ、年8回の講習と課題を修了することで研究会認定のホリスティックナースとして臨床で活躍できます。

受講資格 (ア) 看護師の資格を有する者
(イ) 看護職として勤務経験が 2 年以上ある者(常勤・非常勤の別、勤務場所は問わない)
(ウ) JHNA の会員であり、資格の取得に向けて明確な動機をもつ者
受講料 5万円(受講料3万円、認定料2万円)
コースの内容 ・第1回 ホリスティックナーシングの哲学と理論
・第2回 リラクセーション
・第3回 リフレクション
・第4回 コミュニケーション
・第5回 コーチング
・第6回 癒しの環境
・第7回 ホリスティックナーシングの倫理
・第8回 ホリスティックアロマセラピー
・課題作成
・JHNA研究会・課題発表
・閉講・認定式

相談しだいでは受講期間の延長もできるようなので、1年間で全回数出席が難しそうだという方も参加できそうですね。

ホリスティックナーシングの会費について

入会金 3,000円
正会員(看護職) 7,000円/年
一般会員(看護職以外) 5,000円/年
学生会員(大学院生は除く) 3,000円/年

看護師だと入会金3,000円と年会費7,000円で1万円程度の費用がかかります。

また、定期的に行っているセミナーを受講するため、1回に5,000円~6,000円程度の費用がかかります。

ホリスティックケアプロフェッショナルスクールに参加する

株式会社ホリスティックケアジャパンが運営している「ホリスティックケアプロフェッショナルスクール」にて、ホリスティックナーシングの一部である、「臨床アロマセラピー」を学ぶことが出来ます。

また、HCPS認定の「臨床アロマセラピスト」の資格を取得することが可能です。主な内容や費用に関しては公式ホームページを確認してください。

どの看護師でも実践できるものではない

ホリスティックナーシングでは人間をスピリチュアルで無限な存在として捉え、独自の視点でアプローチします。

そのため、ホリスティックナースは、ホリスティックナーシングならではの身体に対する知識・洗練された技術をもち、科学的根拠裏付けのための研究を行い、ある一定の水準を満たす看護師のことで、誰もがすぐ実践できるわけではありません。

そのためホリスティックナーシング特有の哲学や理論、倫理、実践論を学ぶ必要があります。

ホリスティックナーシングの実践例

具体的な技術として、ホリスティックナーシングは独自の視点からのアセスメントをもとに、上記に紹介したような様々な代替療法を用います。

看護師自身、病棟、外来、介護施設、訪問看護等、看護があるところにホリスティックナーシングもあります。

臨床アロマセラピー

アロマセラピーを臨床で様々な疾患、症状をもった患者に実践していくもので、外来や訪問看護で実際に使用されています。

臨床でアロマを使用するにあたり、精油の選び方や使い方を学ぶ必要がありますが、そういったノウハウを学べるスクールもあります。

マインドフルネス

瞑想法を主体としたエクササイズを用いて自分に集中し現実をありのままに受け入れる方法です。

現在エビデンスを積み上げているところで、患者に対して実践例があるかはわかりませんが、看護師に対して体験として使用されています。

音楽療法

看護師自身が行うにはスキルが必要ですが、小児科、リハビリテーション科や緩和ケア科で使用例があり、患者へもプラスの効果がでたことが紹介されています。

最後に

ホリスティックナーシングは看護の原点ともいえる分野だと思います。

数ある補完代替療法の中で、科学的根拠のあるものを使用するという難しさはありますが、患者をとりまく環境までを包括し、患者全体をケア・ヒーリングするという根本の考え方は、今の看護に疲労を感じている看護師に新しい視点をもたらしてくれそうです。

   
執筆・監修看護師
青木 看護師
青木 看護師
  • エリア:神奈川県
  • 保有資格:看護師
  • 施設経験:がん専門病院(病棟・外来)、クリニック
  • 専門分野:化学療法科、血液腫瘍科、消化器外科、在宅緩和ケア、プライマリケア

がん専門病院で勤務後、がん・緩和ケア分野リーダーシップコース修士課程を海外で修了。その後、年300件以上の在宅看取り件数のある在宅緩和ケアクリニックで勤務。施設訪問も経験あり。現在は臨床研究をメインに活動中。看護師は嫌なことも、迷うこともたくさんあると思うので、皆さんに少しでも役立つような情報を発信できればと思います。

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