このコンテンツは、弊社が看護師免許を確認した看護師が執筆しておりますが、ご自身の責任のもと有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。
眼科疾患には、通院で治療できるものもあれば、日帰り手術・入院手術が必要なものもあります。
その中でも、このページでは急に発症することがあり最悪の場合失明する可能性もある網膜剥離の症状やオペに関することについてまとめています。
網膜剥離の患者の症状と治療法
私たちが目で見たものを認識できるのは、目から入ってきた光を網膜でキャッチし視神経を通じて脳に伝達しているからです。
その光をキャッチする網膜が何らかの原因で剥がれてしまうのが網膜剥離です。網膜が剥がれてしまうと、網膜内の視細胞が栄養不足になり光をキャッチできなくなってしまいます。
網膜剥離をそのままにしておくと光を感じられなくなり、最悪の場合失明してしまうこともあるのです。
網膜剥離の症状
網膜剥離は失明する可能性もある恐ろしい病気のため、早期に治療を行なうことが大切です。そこで、網膜剥離がおこったときにあらわれる症状を挙げてみます。
- 黒い虫が飛んで見える
- 糸くずが浮いて見える
- 黒いカーテンのようなものが見える
- 光がちらつく
- 視界が欠けて見える
- もやがかかったように見える
このような症状が突然あらわれ、徐々に酷くなっていきます。また、左右の見え方の違いで気づくこともあります。
網膜剥離の治療法
網膜剥離の原因は大きく分けて2つあります。1つは網膜に小さな孔ができ、その孔から硝子体内の透明なゲル状の液体が漏れ出して網膜が剥がれてしまうものです。もう1つは、硝子体などが網膜を引っ張ってしまい網膜が剥がれてしまうものです。
網膜剥離がすでに起きている場合の治療法は、ほとんどが手術療法になります。しかし、網膜が剥がれておらずまだ孔が小さい場合は、レーザーを照射して行なう網膜光凝固術や網膜冷凍凝固術が選択され、外来治療で済むこともあります。
どちらにしても、早期発見できることが、早期回復につながり失明の危険性を減らすことにつながります。
網膜剥離のオペ前~オペまでの流れ
網膜剥離がすでに起きている患者の場合は、手術をして治療します。オペ前~オペまでの流れの中で、看護師・患者がするべき準備や注意点をご紹介します。
術前オリエンテーションで必要物やオペ後の安静度を伝える
オペ後には、眼を清拭する清浄綿など、病院ごとに患者に用意してもらうものがあります。オペ後は安静にしなければならないため、オペ前にそろえておくよう患者に説明しましょう。
網膜剥離のオペ方法の中には、網膜を目の内部から押さえつけるために空気やガス、シリコンオイルを入れることがあります。その場合、オペ終了からしばらくの間医師の指示した体位を取り続け、安静に過ごす必要があります。
そのため、患者には決められた体位で安静にしなければならない必要性をオペ前にしっかり説明し、十分に理解してもらうことが必要です。
使用中の内服や点眼薬に注意する
抗血栓薬や高血圧の薬、泌尿器疾患の薬などの中には、手術に影響を及ぼす恐れのある内服薬があります。
また、患者が普段から使用している点眼薬の中にも手術に影響を及ぼすものや、手術のために使用する点眼薬と同類のものがある場合があります。そのため、患者の内服薬、点眼薬の情報を正しく把握し、必要があれば中止してもらうなどの対応が必要です。
オペをする眼を再確認する
オペ前の準備をするときには、再度どちらの眼を手術するのか、看護師・患者との確認を忘れてはいけません。オペをする側の手首にバンドを巻く・オペをしない方の眼に眼帯を装着するなど、病院ごとで決められた対策を徹底しましょう。
オペ前には点眼を頻回にする
眼のオペをするときには、術野を広くするために点眼薬で瞳孔を開いておく処置が必要です。そのため、オペ前には頻回に点眼をささなくてはなりません。病院によっては、点眼を看護師が行なうこともあります。
患者に確実に何分おきで点眼をするのか、また看護師が点眼をさしに来るためお部屋にいてもらうように説明しておきましょう。
また、点眼をした結果、どの程度瞳孔が開いているのかを確認し、開き具合が悪いときにはオペを担当する医師に確認することも必要です。
点眼薬によって見え方が変わる
オペ前に瞳孔を開く点眼をしていると光が入りやすくなるため、チカチカとまぶしく見えることや、普段と見え方が変わるため気分が悪くなる方もいます。
前もってまぶしく感じるようになることや、ぼやけて見えるなどの情報を伝えておき、体調に変化がある場合はすぐに知らせてもらうように説明しましょう。
網膜剥離のオペ~オペ後の流れ
網膜剥離のオペ後は、主に医師が指示した安静度と体位が守れているか、体位が苦痛であればその苦痛を取り除く看護が求められます。オペをしたとは言え身体は元気な方が多く、活動が制限されるために情緒不安定になる患者もいます。
情緒不安定になっている患者に対しては、不安になっている原因を改善してあげる看護が必要です。以下に網膜剥離のオペ~オペ後の流れやオペ後の観察項目などをご紹介します。
オペのお迎え時にはすぐにバイタルサインを把握
手術から戻ったらすぐに全身状態の異常がないか、眼の痛みや違和感がないかを確認します。眼のオペであっても、手術中緊張していると終わった安堵感から体調が悪くなってしまう方もいるため注意して観察します。
部屋に戻ったらその場で注意事項を伝える
眼科オペの患者は、オペ後の安静や体位が指示されていても身体は身軽なので動くことが可能です。そのため、術前オリエンテーションで伝えていた安静度、必要な体位を改めて伝えておきましょう。
ポイント!
うつぶせに体位が指定されている場合は、今だけでなくしばらくその体勢が続きます。体勢がつらくないかを確認し、必要時クッションなどで楽な体位に調整しましょう。
患者の不安を安心に変える声かけを行う
患者は医師には大丈夫だと言われていても、実際にまだ黒いものがちらついている等の何らかの症状があると不安になってしまいます。
患者の不安を安心に変える声掛けを行うのも看護師の仕事です。よく訴えられる症状と安心に変える声かけの方法は以下の通りです。
「眼の中に泡が見える」という訴えに対する対応方法
「眼の中に泡が見える」と患者から訴えられた場合は、以下のように答えるのがベターです。
「オペは眼の中に器具を入れて行ないます。そのため、剥がれ落ちた組織が黒く動いて見えることや、空気やガス、シリコンオイルなどを入れていると眼の中に泡や空気の塊、油の膜などが見えることがあるようです。
オペは無事に終わっているけれど、オペのときに落ちた組織などが一時的に見えている可能性があります。もし、見え方が激しくなり、黒い塊が増えているようであれば、早めに伝えてください。」
このように説明し、安心してもらうように関わりましょう。
「ゴロゴロした感じがする」という訴えに対する対応方法
「ゴロゴロした感じがする」と患者から訴えられた場合は、看護師は患者がどんなオペを受けているのかを把握して原因となっていることを伝えるように答えるのがベターです。
「オペ方法によっては眼の内部で溶ける糸を使用していることがあり、その糸が原因でゴロゴロした感覚がある場合があります。
また、眼は小さなごみが入っただけでも違和感がありますが、ごみなどは自然と目やにとなって外に排出されます。あまり気になるようであれば、眼洗浄をしてみましょうか?」
このように説明し、安心させてあげてください。
補足説明!
痛みがある場合は、むやみに眼を動かさないことも大切です。
「眼がかゆい」という訴えに対する対応方法
オペ後はしばらく洗顔など眼に水が入る行為はできません。目薬をしていると眼の周りが不潔になり、かゆくなることがありますが眼をかくことはできません。
そのため、清浄綿などで拭き取って清潔にし、かゆみを防ぐようにしましょう。
「視力が前よりも落ちている」という訴えに対する対応方法
オペ後は常に眼帯をしていますが、点眼時・診察時には裸眼で見る機会があります。そのときに視力が落ちたと言われることがあります。
オペ後すぐに視力が回復する患者もいますが、徐々に時間をかけて回復する方もいます。そのため、個人差があり1ヶ月ほどかけて少しずつ良くなっていくことを伝えましょう。
まとめ
網膜剥離のオペをする患者の看護で重要なのは、オペ前は患者の理解力に合わせた説明を行い、オペ後は安心して退院できるよう関わることです。
糖尿病などの感染しやすく傷が治りにくい持病がある患者は、オペ前から血糖値なども注意して観察しなければなりません。
その他、持病をもってオペに望む患者がおり、どのような病気も悪化する可能性があるため、眼科疾患だけでなく全身の状態を把握し・観察・アセスメントしましょう。