胆嚢炎の患者の看護(症状、看護計画、注意点、必要スキル)について

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胆嚢炎の患者の看護(症状、看護計画、注意点、必要スキル)について
   
しゅう 看護師
しゅうさん(看護師)

このコンテンツは、弊社が看護師免許を確認した看護師が執筆しておりますが、ご自身の責任のもと有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。

胆嚢炎(たんのうえん)は、偏った食生活が原因なっていることが多いために、比較的年齢が若い患者も多くみられます。

治療方法もいくつかあるため、それらの知識や患者の苦痛や不安を取り除く技術は当然必要ですが、患者の年齢や状況に合った生活指導や患者の状態のアセスメントをしていく事が求められます。

特に再発予防のための指導をおこなう際に、患者が積極的に取り組んでいくことができるように工夫をしていく事がとても重要です。

このページでは看護師に向けて胆嚢炎(たんのうえん)についての患者の症状、看護の注意点、看護計画、看護する際に必要なスキルについて詳しく説明していきます。

胆嚢炎の患者の症状

胆嚢炎の患者の症状

胆嚢炎は、胆汁がうっ滞することによって引き起こされ、細菌感染が原因となり、胆嚢が炎症を起こす疾患です。胆嚢炎のほとんどが、胆石によるものです。

胆石は、コレステロールが胆汁内に多すぎるとできるため、暴飲暴食や脂質の多い偏った食事、運動不足など不節制な生活習慣が原因となります。

経過によって、急性胆嚢炎と慢性胆嚢炎に分けられます。

急性胆嚢炎の症状

急性胆嚢炎では、右季肋部痛、上腹部・心窩部痛、発熱、悪心・嘔吐、吸気時の腹痛(マーフィ徴候)です。

他覚的所見では、右季肋部の圧痛、腹壁の緊張、筋性防御を認めます。

補足説明!

補足事項
血液検査の結果としては、白血球増加、CRPの上昇、胆道系酵素、トランスアミラーゼの上昇が認められます。画像結果では胆嚢腫大、胆嚢壁の肥厚を認めます。

慢性胆嚢炎の症状

慢性胆嚢炎では、自覚症状は軽度であり、右季肋部痛、軽度の悪心や不快感を認めます。

血液検査の結果においても、異常値は軽度です。

画像結果では、胆嚢の委縮、胆嚢壁の肥厚、胆嚢変形を認めます。

胆嚢炎の患者で看護師が注意すべき症状とは?

胆嚢炎は重症な場合であると、胆嚢壊死、穿孔、胆嚢周囲炎を起こし、腹膜炎から、敗血症などとなることもあります。

そのため、早期の治療が必要であるため、症状の観察は重要です。

急性胆嚢炎の重症な場合では、黄疸が現れ、白目の部分や皮膚が黄色く変化します。また、画像結果において、胆嚢周囲に滲出液の貯留が認められることがあります。

胆嚢炎の患者の看護計画

胆嚢炎の患者の看護計画

胆嚢炎の一般的な治療は、絶飲食、輸液、抗菌薬の投与、痛みが強い時には鎮痛剤の投与を行います。

重度の場合は、患者の全身状態が良い場合は早期に胆嚢摘出術を行い、全身状態が不良な場合や高リスクな疾患を有しているような場合は早期の経皮経肝胆嚢ドレナージをおこないます。

どちらの治療にも共通する看護計画と治療別の看護計画を順に説明していきます。

共通する看護計画

看護目標:胆嚢炎による苦痛症状が緩和される

観察項目
(OP)
・バイタルサイン
・痛みの程度・部位
・悪心・嘔吐
・検査データ(血液検査結果、画像検査結果など)
ケア項目
(TP)
・絶飲食のため、輸液管理をおこなう
・安楽な体位を促す(膝を曲げて腹圧を下げるなど)
・医師の指示のもと、鎮痛剤を使用する
・寝衣や寝具で体を締め付けないようにする
教育項目
(EP)
・痛みが強い時は我慢しないように説明する
・絶飲食の必要性を説明する

看護目標:自宅での生活で再発を予防できる

観察項目
(OP)
・既往歴
・生活習慣
・食生活
・嗜好品
・喫煙の有無
ケア項目
(TP)
・栄養士と連携して食事指導をおこなう
教育項目
(EP)
・高コレステロールなどの偏った食事をしている場合は改善の必要性を説明する
・適度な運動をおこなう事の必要性を説明する
・家族に協力してもらい、生活習慣の改善を試みてもらう

胆嚢摘出術を受ける患者の看護計画

看護目標:手術に対する不安が解消される

観察項目
(OP)
・バイタルサイン
・表情や言動
・睡眠状態
ケア項目
(TP)
・手術室看護師と連携し、手術の説明をおこなう
・患者の不安に感じている事を話しやすい環境づくりをする
教育項目
(EP)
・不安に思っている事は、医師や看護師に気軽に伝えてほしいと説明する

看護目標:術後の合併症を予防できる

観察項目
(OP)
・バイタルサイン
・創部痛の有無
・ドレーン挿入部の状態(発赤、腫脹の有無)
・ドレーンの排液量や性状
・呼吸状態
ケア項目
(TP)
・創部・ドレーンの管理をおこなう
・創部に異常がみられる場合は速やかに医師に報告する
・早期離床を促す
教育項目
(EP)
・早期離床の必要性を説明する
・痛みが増強した場合は伝えてもらうよう説明する

胆嚢ドレナージを受ける患者の看護計画

看護目標:ドレナージによる苦痛が最小限となる

観察項目
(OP)
・バイタルサイン
・カテーテル刺入部の発赤・腫脹の有無
・痛みの有無
・治療に対する理解度
ケア項目
(TP)
・ドレナージの方法や必要性について不安な点を聞く
・痛み

看護目標:ドレナージの治療が適切におこなうことができる

観察項目
(OP)
・胆汁の性状、量
・ドレーンチューブの状態(屈曲していないか、固定がはずれていないか等)
・黄疸
・腹痛・腹部膨満感
・便の色
・水分出納量
ケア項目
(TP)
・排液ボトルは逆流しないように腰より下に付ける
・ドレーンチューブを正しく固定する
・排液量が少ない場合は、医師に速やかに報告する
・刺入部周辺を清潔に保つ
教育項目
(EP)
・不注意により抜去しないように、患者に説明する
・痛みがある場合は、伝えてもらうように説明する

胆嚢炎の患者の看護の注意点

胆嚢炎の患者の看護の注意点

胆嚢炎患者への看護師としての注意点を2つお伝えいたします。

治療が円滑に進むための援助が必要

胆嚢炎は、状態によって処置の治療の方法が違いますが、最近では、胆嚢摘出術は腹腔鏡下で行われることが多く、比較的負担が少ない手術が主流となっています。

しかし、ドレナージを行う場合も、手術で胆嚢摘出する場合も、胆嚢炎そのものの症状による苦痛と、処置による苦痛が伴います。

そのため、患者の不安を取り除くとともに、適切なケアを行い、合併症を予防できるように観察することが必要です。

退院後の生活指導が重要

胆嚢炎は、偏った食生活など生活習慣の乱れが原因です。胆嚢摘出後であっても、食生活に気をつけてもらうために援助をしていく必要があります。

胆石の再発を予防するために、コレステロールの多い食事や、糖質の多い食事を控えてもらうように説明し、持続できるように家族など協力してもらえる人にも同様に伝えていくといった退院指導がとても重要になります。

補足説明!

補足事項
また、胆嚢摘出後は、胆汁の貯留ができずに下痢を引き起こす場合もあるのでそのような術後の変化を説明しておくことも、退院後の生活でも不安を取り除くために必要なことです。

胆嚢炎の患者への看護で求められるスキル

胆嚢炎の患者への看護で求められるスキル

胆嚢炎患者の看護を行う上で必要な看護スキルについてご紹介します。

術後またはドレナージ挿入後の管理

術後の場合は、創部やドレーンの排液の観察など術後の合併症を予防するための看護力が大切です。

侵襲の少ない腹腔鏡下手術であっても、手術時の患者の状態は、黄疸や発熱がある状態であったりするため、術後も患者の全身状態に十分に注意する必要があります。

高齢患者はバイタルサインの変化への対応

特に高齢者の場合は、症状が出現しづらいこともあるのでバイタルサインの変化に特に注意しなければなりません。

ドレナージ挿入後の対応

ドレナージ挿入後は、皮膚にドレナージのチューブが固定されるので、適切な固定と観察をおこなう技術が必要です。

テープを上手く固定しないと、チューブが閉塞したり、認知症を伴う患者など体動によってチューブが逸脱するなどのトラブルが起こることがあります。

補足説明!

補足事項
また、皮膚の弱い患者は、テープによって皮膚が荒れてしまう場合もあるので、皮膚の状態の観察をしながら固定部位をずらしたりするなどの工夫も必要です。他にも、ドレナージによる腹膜炎を起こす事もあるので、刺入部の観察や腹部症状の観察も必要です。

患者の生活習慣をアセスメントするコミュニケーション能力

前述したように、胆嚢炎は偏って生活習慣による胆石ができる事が原因で起こる事が多いです。

そのため、患者の生活を把握し、入院中に退院後の生活を指導していくことが必要です。

質問を並べて聞き出すという方法も良いのですが、患者によっては責められているような気持ちになり、食生活を改善しようという気持ちが薄れてしまうという場合もありますし、信頼関係のない看護師から指導をされても事務的に感じて聞き流してしまうという患者もいます。

そのため、入院中の会話の中で、把握したい事を聞き出せるようなコミュニケーション能力はとても重要で、常に患者を知ろうという気持ちを持って接していく事が必要です。

まとめ

胆嚢炎は、偏った食生活が原因なっていることが多いために、比較的年齢が若い患者も多くみられます。

治療方法もいくつかあるため、それらの知識や患者の苦痛や不安を取り除く技術は当然必要ですが、患者の年齢や状況に合った生活指導や患者の状態のアセスメントをしていく事が求められます。

特に再発予防のための指導をおこなう際に、患者が積極的に取り組んでいくことができるように工夫をしていく事がとても重要です。

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