このコンテンツは、弊社が看護師免許を確認した看護師が執筆しておりますが、ご自身の責任のもと有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。
虫垂炎は、盲腸の先端にある虫垂という部分に起こる炎症のことです。
このページでは、看護師が必要な虫垂炎患者の症状と看護の注意点、保存的療法と外科的療法の看護計画について説明していきます。
虫垂炎患者の症状と注意点
虫垂炎は、
- 炎症が軽度のカタル性虫垂炎
- 化膿性の炎症を伴う蜂窩織炎性虫垂炎
- 虫垂壁が壊死を起こす壊疽性虫垂炎
の3つに分類されます。
初期症状は上腹部痛、食欲不振、悪心です。
最初は軽度な腹痛程度であるが、次第に右下腹部痛に変化し、痛みも増してきます。
発熱は微熱程度ですが、穿孔をきたすと高熱となります。蜂窩織炎性虫垂炎や壊疽性虫垂炎では排ガス・排便が消失していきます。診断の際に有用な方法として、特定の部位の圧痛点の有無を確認します。
有名なものは、マクバーニー点で、虫垂炎であると、この部位に圧をかけて押すと痛みを感じます。
虫垂炎の患者で看護師が注意しなければならない症状
虫垂炎で注意しなければならない事は、虫垂穿孔です。
壊疽性虫垂炎は容易に穿孔を起こし、急性腹膜炎となり得ます。
穿孔の症状には十分注意すること
穿孔が起こると、腹痛が突然増強し、38.5℃以上の発熱を起こします。また、腹膜炎の時に腹部を触ると、筋性防御が起こります。筋性防御とは腹腔内に急性炎症が起こった時に反射的に腹壁が固く触れることです。
虫垂炎は進行が早いので、穿孔の症状には十分注意しておくことが重要です。
保存的療法:虫垂炎患者の看護計画
保存的療法は、抗生物質の投与や食事形態を変えることで様子を見ますが、再発する場合もあり、その際には手術が検討されることがあります。
カタル性虫垂炎の場合は保存的療法で治癒に至る場合が多いです。
状態の変化を早期発見できる
看護目標 | 状態の変化を早期発見できる |
観察項目 (OP) |
・バイタルサイン ・特定部位の圧痛点での痛みの有無 ・腹痛の増強の有無 ・悪心・嘔吐 ・倦怠感 ・検査データ (腹部単純X線検査、腹部CT検査・腹部超音波検査) ・血液検査データ(白血球数等の炎症反応) ・食事量 |
ケア項目 (TP) |
・抗生物質等の治療を確実におこなうことができるように援助する ・発熱の変化に注意する |
教育項目 (EP) |
・腹痛を繰り返したり、状態が悪化したりする場合は、手術になり得る事を説明する ・症状が増強した場合は、早急に医師や看護師に伝えるように説明する |
苦痛が軽減される
看護目標 | 苦痛が軽減される |
観察項目 (OP) |
・バイタルサイン ・感冒症状 ・腹痛 ・悪心・嘔吐 ・食事摂取量 |
ケア項目 (TP) |
・医師の指示のもと疼痛コントロールをおこなう ・医師の指示のもと悪心、嘔吐に対して薬剤の使用を検討する ・安楽な体位を援助する |
教育項目 (EP) |
・苦痛な症状は我慢せずに、伝えてもらうように説明する |
外科的療法:虫垂炎患者の看護計画
外科的療法となった場合、
- 開腹手術
- 腹腔鏡下での手術
上記の2パターンあります。
どちらも術後は、創感染や腸閉塞など合併症を起こす可能性があるので術後の管理がとても重要です。
また、腹腔鏡下であると入院期間も比較的短いので、術後は退院後の生活についても説明していく必要があります。入院や手術になる場合、患者本人が予期していない場合もあるため、これから行われる事に対して、不安や恐怖を強く感じます。そのような気持ちや慣れない入院の環境が、術後せん妄を引き起こすこともあります。
そのため少しでも気持ちを落ち着かせることができるようにケアすることが必要です。
手術に対する不安が軽減される
看護目標 | 手術に対する不安が軽減される |
観察項目 (OP) |
・既往歴 ・手術をした経験の有無 ・表情や言動 |
ケア項目 (TP) |
・術前の説明について分からないことはないか確認する ・家族に対しても、必要な物や手術における注意点などを説明する ・緊急手術でない場合は、手術室の看護師に手術の様子を説明してもらう |
教育項目 (EP) |
・医師に確認したいことがあれば、いつでも言ってももらうように伝える |
術後合併症を起こさない
看護目標 | 術後合併症を起こさない |
観察項目 (OP) |
・バイタルサイン ・検査データ ・出血量 ・ドレーンの排液量、性状、色、固定部位 ・創部の状態(腫脹、発赤、熱感の有無) ・腹痛の有無 ・腸蠕動の有無 ・排便の有無 |
ケア項目 (TP) |
・早期離床を促し、必要な日常生活行動を援助する ・排ガスの有無を確認する ・補液や鎮痛剤等の薬物治療の援助 |
教育項目 (EP) |
・疼痛や嘔吐など症状が悪化した場合はすぐ伝えるよう説明する ・早期離床の必要性について説明する ・退院後の日常生活での注意点について説明する |
虫垂炎の患者の看護の注意点
虫垂炎の症状は、他の疾患の症状と診断されることも多いため、他科であっても虫垂炎も念頭に入れて観察していくことが大切です。
また、婦人科疾患や他の大腸系の疾患との識別も大事になります。
子供、高齢者の患者は注意が必要
子供の場合は、症状を伝えきれない場合もありますし、高齢者の場合は、腹部症状が弱く、炎症を見る白血球の反応も微弱である場合もあります。特に高齢者の場合は、自覚症状の訴えだけを鵜呑みにするのではなく、少しの症状の変化も見逃さないようにしていく必要があります。
前述したように、虫垂炎は、進行が早いため、腹痛や熱型の変化を見逃さないように観察し、腹膜炎を引き起こさないように注意しなければなりません。
注意点!
虫垂炎は苦痛な症状が持続する中、突然入院となり場合によっては手術が行われます。そのため、患者は大きな不安を感じます。特に、手術になった場合は、術前から手術室看護師と連携をして手術や術後の説明をきちんとおこない、患者の不安を取り除くことができるように努めることが大切です。
まとめ
参考文献:
- Nursing Selection2 消化器疾患(初版)/株式会社 学習研究社
虫垂炎は、とてもポピュラーな疾患ですが、放っておくと重症化してしまうこともあります。
患者の自覚症状による訴えだけでなく、検査データや、穿孔による腹膜炎などを引き起こす徴候の知識を持ち、予測しながら観察していくことが大切です。
患者の中には、虫垂炎を軽視し、重症化して命に関わるような疾患ではないと思っている人もいますし、子供や高齢者など、一般的な経過や症状に当てはまらない場合もあります。
そのため、正しい知識を本人や家族に対して提供していき、必要以上に不安を与えないように、疾患について理解してもらう事も重要な役割です。