乳がん患者の看護(症状・役割・看護計画・注意点)について

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乳がん患者の看護(症状・役割・看護計画・注意点)について
   
あずさ 看護師
あずささん(看護師)

このコンテンツは、弊社が看護師免許を確認した看護師が執筆しておりますが、ご自身の責任のもと有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。

女性の12人に1人が、生涯のうちに乳がんになると言われています。そのため、女性はみな乳がんになる可能性を考える必要があります。

今回は乳がん患者に対する看護知識として、看護師が知っておくべきポイントを4つに分けて説明していきます。

乳がんの患者と症状について

乳がんの患者と症状について

乳がんは初期症状があらわれにくく、比較的進行の遅いがんだと言われています。ここでは乳がん患者について、主な症状やどのような治療が行われるのか説明していきます。

乳がん患者にみられる主な症状について

乳がんを早期発見するためには、乳がん患者に見られる主な症状を知ることが大事です。乳がんの症状としては下記になります。

  • 乳房や脇の下付近にしこりがある
  • 乳房の発赤や浮腫がある
  • 授乳中ではないのに乳汁が出る
  • 乳房のくぼみや変形がある
  • 脇の下が腫れる

上記した症状が見られないか、鏡で胸の左右を比較することや、手で触れてしこりがないか確認するといったセルフチェックが推奨されています。

補足説明!

補足事項

乳がんの発見は基本難しく、乳がんが転移しやすい肺や骨に症状があらわれてから発見される場合もあります。

看護師は乳がん患者の治療に対する看護を行う

多くの乳がんは自覚症状があらわれてから発見され、それから治療法を選択することになります。看護師は乳がん患者の治療法の選択、治療過程であらわれる症状に対する看護をすることになります。

患者の治療法によって術後の症状が異なる

乳がんの治療法は主に手術療法で、その他に放射線療法、抗がん剤治療などを併用する場合もあります。そのため、治療過程、治療法によってあらわれる症状が異なるので以下のような注意が必要です。

乳がん患者のステータス 注意する症状
手術が必要な乳がん患者 ・術前術後の周手術期症状の変化に注意
・合併症にかからないように注意
手術が不必要な乳がん患者 がんの進行による急変に注意
・放射線療法を行う乳がん患者
・抗がん剤治療を行なう乳がん患者
投薬、服薬する薬の副作用に注意

乳がんの患者の看護計画について

乳がんの患者の看護計画について

乳がん患者の看護計画は検査時、術前、術後と3ステップに分けて立てる必要があります。そして、末期の乳がん患者への対応も必要です。では3つのステップごとの看護計画と末期の乳がん患者に対する看護について説明していきます。

乳がんの検査時の看護計画について

最初に乳がん患者の検査時に立てる看護計画について説明します。

看護目標 検査の必要性を理解できる
OP
(観察項目)
・バイタルサイン
・アレルギーの有無
・今までの生活習慣(喫煙など)
・乳がんの自覚症状の有無、部位の状態
・検査の内容が理解できているか
・表情、言動
TP
(ケア項目)
・検査の日時を正確に伝える
・検査の注意事項を伝える
・不安や恐怖に寄り添い、安全に検査が行なえるよう介助する

乳がんの手術前の看護計画について

次に乳がんの手術前に立てる看護計画について説明します。

看護目標 納得して手術方法を選択し準備できる
病状を理解し、手術に対する恐怖や不安を表出できる
OP
(観察項目)
・バイタルサイン
・排泄状況
・乳房の状態
・自分の病状について理解できているか
・手術方法を理解し納得できているか
・手術に対する恐怖や不安が表出できているか
・合併症予防訓練の実施状況
・睡眠状況
・表情、言動
TP
(ケア項目)
・納得のいく手術方法を選択できるよう情報提供をする
・病状、病期の受容ができるよう患者が表出する思いを傾聴し不安の軽減に努める
EP
(教育・指導項目)
・手術当日までの流れを説明し把握してもらう
・手術経過に加えて手術のリスク説明
・手術による合併症や障害について患者の理解が得られるよう説明する
・合併症予防訓練の方法を説明する

乳がんの手術後の看護計画について

乳がんの手術後に立てる看護計画について説明します。

看護目標 術後合併症をおこさず苦痛を最小限にできる
術後の自身のボディイメージの変化を受容できる
OP
(観察項目)
・呼吸の状態
・IN、OUT
・疼痛の有無
・創部、ドレーンの状態
・リンパ浮腫の有無
・患側上肢の循環状態、リハビリ状況
・睡眠状況
・ボディイメージに対する発言
TP
(ケア項目)
・術後経過に伴い観察を行なう
・リハビリテーションを行なう
・痛みの評価を行い、疼痛緩和を図る
・創部の状態を順を追って術後のボディイメージを受容するよう関わる
EP
(教育・指導項目)
・患側上肢で行なってはならない内容を説明する
・術後に注意する症状について説明し、すぐに知らせるよう伝える

末期の乳がん患者に対する看護について

がんが進行するとさまざまな苦痛があらわれます。一例をあげると、

  • 身体の痛みを伴う苦痛、家族や仕事の問題による苦痛
  • 不安や恐怖
  • 怒りなど受容する過程でおこる苦痛
  • 死への恐怖や霊的なものに対する苦痛

など、これらの苦痛が次から次へと患者を襲います。末期の患者の場合、手術を含む治療法を行なわない選択をする患者もいます。

患者の余生と良い最後を迎えられるように支援する

受容までの期間も患者によりさまざまのため、病状の変化への看護だけでなく、患者ごとにあわせた関わりが求められます。そして患者自身が余生をどう過ごすのかを考え、よい最期を迎えられるよう支援していきます。

乳がん患者の看護をする看護師の役割

乳がん患者の看護をする看護師の役割

乳がん患者の看護で注意しなければならないのは、その病期における症状を早期発見し合併症を予防することです。退院して病院から離れると看護師の目が届きません。そのため、

  • 患側上肢のリハビリ方法
  • 下着や服装の選択方法
  • 感染予防

など注意しなければならないことを、入院中に徹底して指導することが必要です。

抗がん剤から受ける影響の対して適切なフォローをする

乳がん患者には手術が終わってからも抗がん剤などの治療を続ける患者もいます。退院後にも治療を継続しながら社会復帰できるよう支援をすることも大切です。そのためには、

  • 手術によって失った乳房を再建する方法
  • 医療用ウィッグの存在
  • 活用できる社会資源

などについて情報提供していくとよいでしょう。

入院から外来へと医療者が密に連携しておくことも大切

外来治療を継続する乳がん患者は、医療者との信頼関係が今後の患者の生活と治療に大きく関係してきます。患者が社会復帰したことで新たに出てきた不安や困惑、再発への恐怖を表出できるよう、入院から外来へと医療者が密に連携しておくことも大切です。

乳がん患者に対して看護師が注意することとは?

乳がん患者に対して看護師が注意することとは?

乳がんの患者がどの病期にあるのか、どの治療法を選択したのかによって、注意しなければならない症状が変わります。今回は、多くの乳がん患者が直面するボディイメージの変容に対して、看護師が注意しなければならないことについて説明します。

手術前と手術後の患者の心の症状に注意が必要

たとえ手術をして乳がんが根治できたとしても、乳房の形が変化してしまう、乳房を失うことにより、心を塞いでしまう患者は多いです。今までと変わってしまった自分の身体に失望し、悲しみから抜け出せなくなるのです。

そのため、手術前、手術後の患者の心の症状に注意して観察しなければなりません。

ポイント!

ポイント

乳房を失うことを思うと、胸にメスを入れること自体、女性としてなかなか受け入れられない患者はたくさんいます。

乳がん患者の悲しみを正しく理解することができるか

下記するように、乳房を失った悲しみは、いろいろな形で表出されます

  • 涙を流し悲しさを素直に表現できる患者
  • 食事を拒否して感情を殺してしまう患者
  • 医療者に怒りをぶつけ悲しさとは反対の行動をとる患者

そのため、患者が手術に対して、また手術後の自分の身体に対してどんな思いでいるのかを表出できるよう関わることが大切です。

まとめ

乳がんは女性にとっていつ自分の身に降りかかるかわからない怖い病気です。女性看護師であれば、乳がん患者に深く寄り添った看護ができると思われがちですが、なかなか難しい場面も多々あります。

乳がん患者の看護は、看護師としても女性としても、知識や経験が重要になります。難しくデリケートな病気だからこそ、患者の回復がみられると大きなやりがいを感じられるでしょう。

少しでもこちらの記事が参考になれば幸いです。

   
執筆・監修看護師

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