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他の診療科では診る機会がなかなかない、脳外科ならではの疾患であるもやもや病。脳梗塞やくも膜下出血などと違い、なかなか診る機会が無いからこそ、情報が少なく、看護の勉強もしづらい疾患ではないでしょうか。
今回は、まだまだ認知度も低い「もやもや病」とその看護についてまとめました。
もやもや病とはどのような病気なのか?
もやもや病とはウィリス動脈輪閉塞症とも呼ばれる病気です。脳の主幹動脈(前大脳動脈や中大脳動脈)が進行性に閉塞されることによって、脳底部に側副血行路として異常な細い血管が出現する疾患です。
もやもや病は循環障害を起こしやすいことが特徴
血管が細いため循環障害を起こしやすいことが特徴で、脳内出血やくも膜下出血を発症することもあります。日本人に多く年間200人前後の発症例があります。
ポイント!
現在のところ原因は不明ですが、もやもや病は反復する扁桃腺炎に罹患する人に多いと言われています。
症状の状態がもやもや病の名前の由来
もやもや病という名前は、この言葉通り異常な細い血管がもやもやと現れることからもやもや病と名付けられています。あまり聞きなれない患者や看護師もまだ多くいます。
もやもや病の患者の症状について
もやもや病の患者は小児から成人と幅広い層となります。しかし、もやもや病患者の症状は小児と成人で異なるため、それぞれどのように症状が異なるのか説明していきます。
もやもや病を患う小児の症状
小児がもやもや病を患うと以下のような脳虚血症状が出現します。
- 運動麻痺
- 言語障害
- けいれん
脳虚血症状では上記した運動麻痺や痙攣の他に、重症では一過性の意識消失を引き起こします。
もやもや病を患う成人の症状
成人では、側副血行路となる脳底部の穿通枝が破たんすることによって脳内出血を起こします。そのため、下記のような脳内出血の症状がみられます。
- 意識障害
- 片麻痺
- 運動障害
- 呂律障害
- 頭痛
- 嘔吐
成人がもやもや病を患うと、出血はしていなくても側副血行路は細いことから脳虚血症状が出現します。
もやもや病の治療方法とは?
もやもや病の治療は大きく分けた2つのケースで異なります。
- 脳虚血症状が出現している場合
- 脳虚血症状が出現している成人の場合
そのため、もやもや病の治療法も主に2種類の方法となります。さっそくそれぞれの治療法について具体的に説明していきます。
:脳虚血症状が出現している場合の治療法
脳虚血症状が出現している場合は、抗血小板薬を使用し、脳の血流を改善します。
けいれん発作に対しては抗けいれん薬を使用します。
:脳虚血症状が出現している成人の場合の治療法
脳虚血症状が出現している成人の場合は直接バイパスの他に脳硬膜血管縫着術や脳硬膜動脈・筋血管癒合術を行います。
バイパスとは浅側頭動脈―中大脳動脈吻合術を指します。
ポイント!
既に脳出血を発症している場合は、脳出血の治療法に応じて血腫の除去や脳室ドレナージが選択されます。
看護師がもやもや病患者の症状で注意するべきこと
もやもや病の患者で看護師が注意していなければならないのは、脳出血症状の有無です。
実際働いていても多いのが、無症状であるが、検査の結果もやもや病を発症していたために入院することになった人が治療中に脳出血を起こし病室で意識不明となっているという事例はよくあります。
意識障害が起こる前の症状の有無に注意する
意識障害は出血量が増えてくることで起こるため、意識障害が起こる前の下記のような症状の有無について患者の観察が必要です。
- 意識障害の前から患者に頭痛や嘔気の症状が無いか
- 会話をしている時に呂律が回っているか
- 片麻痺が出現しているか
少しでも意識障害の前触れとなる症状が確認できたら、注意してください。
もやもや病患者の看護計画は2つに分かれる
もやもや病の看護計は画下記のように、手術をするかしないかで計画が分かれます。
- 薬物のみで「もやもや病」患者の治療をする看護計画
- 手術をして「もやもや病」患者の治療をする看護計画
もやもや病の患者の2つの看護計画について説明していきます。
:薬物のみで「もやもや病」患者の治療をする看護計画
薬物療法では点滴管理をしっかりと行って薬物を確実にもやもや病患者へ投与していきます。
薬が確実に投与されていなければ十分な効果を発揮しないためです。
脳出血症状の有無は観察項目として重要
血液をサラサラにして流れが良くなることで稀に脳出血を発症してしまう例もあります。
脳出血症状の有無は観察項目として重要です。
薬物治療のみの場合は指導項目を看護計画にいれる
薬物治療のみで退院する患者の場合は指導項目を計画に盛り込んでおく必要があります。
喫煙は血管を狭くするため禁煙を指導し、アルコールを控えるように指導します。
ポイント!
歓送迎会や新年会や忘年会、納涼会のシーズンではその少し前にもやもや病で入院した患者が脳出血や脳梗塞を発症して運ばれてくることが多いので、特に指導は厳重に行う必要があります。
:手術をして「もやもや病」患者の治療をする看護計画
手術をする場合、脳への負担がかかる術式となるため、術後管理が重要となります。手術により脳の血流が良くなったことにより貧血症状が出現します。
そして、貧血症状が出現すると脳血管が血流不足に陥り脳梗塞となる可能性があるのです。
- 頭痛
- 嘔気
- 四肢のしびれ
- 言語障害
- 麻痺
そのため、上記のような脳梗塞症状である有無を観察項目に加える必要があります。
傷口の感染症状観察と移乗の早期発見が重要
手術をしていることで、皮膚から感染を起こす可能性があります。
そのため傷口の感染症状の有無も観察するなどとくに観察と移乗の早期発見が患者の予後を左右する重要なものとなってきます。
ポイント!
手術後も抗生剤や脳を保護する薬剤を治療として使用するため、確実な薬剤投与も看護をする上では大切です。
もやもや病患者の看護の注意点
もやもや病で薬物のみで治療をしている患者の看護の注意点は、元気だからこその症状観察は重要ということです。
患者はいたって普通の人、元気な人が多く、あまり注視されていないことや観察が後回しにされやすいのです。気が付いた時には症状が出ていたなんていうことがあります。
患者へ病気の意識付けがしっかりと出来でいるか
いかに患者に「もやもや病」という病気の意識づけをするかも看護をしていくうえでの注意するポイントになります。
症状が出現していないと、病識が薄いためついつい離院してタバコを吸いに行った、お酒をこっそり飲んでいることもあります。
手術後2週間以内に症状が出現すると永久に症状が残る可能性もある
手術の場合、初めて脳外科を担当する看護師でも診やすい術後となります。
しかし、手術後に出現した症状が予後を左右し、術後2週間以内に症状が出現すると永久に症状が残る可能性もあります。そのため特にもやもや病では観察を行うことが必要となります。
退院後の指導も重要になることを理解する
手術して普通の生活に戻れるとついつい検査を忘れて受けず、気づいたら悪化してまた入院という患者も多いです。
退院後は発作の経過を見ながら普通の生活に戻っていけるようになりますが、経過観察として検査を受けることになります。
ポイント!
術前だけでなく術後も患者に病識をもってもらい、定期的にケアしていくよう指導していくことが重要なポイントです。
まとめ
参考にさせていただいた文献等は以下となります。
- 学研 脳神経疾患ビジュアルブック124~126頁
- 地方独立行政法人秋田県立病院機構秋田県立脳血管研究センター様
いかがでしたでしょうか。もやもや病について勉強を行っている看護師はまだまだ少ないでしょう。
まずはもやもや病という病気がとても身近な病気であることを認識することが重要です。
今回の説明が、少しでも看護師の皆さんのお役に立てればうれしいです。