このコンテンツは、弊社が看護師免許を確認した看護師が執筆しておりますが、ご自身の責任のもと有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。
川崎病の代表的な症状は、急性期では、5日以上続く発熱、全身の不定形発疹、眼充血、口唇紅潮、苺舌、四肢末端の紅潮・硬性浮腫、頚部リンパ節腫脹、BCG痕の発赤が挙げられます。回復期に近づくと、四肢末端の膜様落屑が現れます。
また、合併症として、冠動脈瘤の形成を起こす恐れがあることに注意が必要です。
当ページでは、川崎病の患者への看護師が注意すべき症状、看護計画、看護の注意点について説明していきます。
川崎病患者の看護師が注意すべき症状
川崎病は、小児がかかる疾患になります。看護師が注意すべき川崎病の症状を4つお伝えします。
熱型:発熱何日目なのかを把握
川崎病では、多くの場合発熱が持続します。そのため、熱が出始めたのはいつかを必ず確認し、発熱何日目なのかを把握しておく必要があります。
入院時には、診断に必要な症状が出揃わず、入院中に経過を観て診断をつけることも少なくないため、川崎病と診断されている患者に限らず、発熱や発疹で入院してきた患者も川崎病の可能性を考え、熱型を意識して観察しておくことが大切です。
冠動脈瘤の有無
川崎病は、全身の血管炎であり、炎症が心臓を栄養する冠動脈に達することもあります。特に、罹患から14日~21日後にかけて、冠動脈瘤を形成しやすい期間であるため注意が必要です。
冠動脈は、心エコー検査にて定期的に確認します。検査時に、冠動脈瘤の有無や、冠動脈の太さを診るため、看護師は検査後には結果を確認することが大切です。
冠動脈瘤形成時には、不整脈が現れることがあるため、心電図検査の結果も併せて見ておきます。
冠動脈の腫脹や冠動脈瘤の形成がある場合
冠動脈の腫脹や冠動脈瘤の形成がある場合には、心筋梗塞を起こす可能性があり、急変する恐れがあるため、24時間呼吸心拍モニタリングを行い、常に観察しておく必要があります。
ガンマグロブリン副作用の有無
川崎病の治療の一環として、ガンマグロブリン大量療法があります。ガンマグロブリンは血液製剤であるため、副作用としてショック症状を起こす可能性があり、注意が必要です。
重篤な副作用を起こさないため、初回投与時は低速で投与し、徐々に流速を上げていく指示であることがほとんどです。副作用の早期発見のため、モニタリング、定期的なバイタルサインの測定が大切です。
アスピリンの内服に伴う出血傾向
川崎病の治療で用いられるものとして、アスピリンの内服が挙げられ、退院してからも長期に渡り服用します。そのアスピリンの副作用の中に、出血傾向があります。
川崎病は、小児がかかる疾患
川崎病は、小児がかかる疾患であるため、走り回ったり、転んだり、危険を予知できない子供が、転倒や転落で外傷、出血を負ってしまうと、多量に出血してしまう可能性があるため、注意が必要です。
川崎病患者の看護計画について
- (1)発熱による消耗がある場合
- (2)ガンマグロブリンの副作用症状が起こる可能性がある場合
- (3)冠動脈瘤形成に伴う全身状態の変調を起こす可能性がある場合
- (4)アスピリン内服中であり、出血傾向にある場合
- (5)患者に合った方法で、確実に内服する必要がある場合
- (6)家族の不安がある場合
川崎病の患者への看護計画を以上6つご紹介いたします。
発熱による消耗がある
看護目標 | ・解熱する ・十分な睡眠や休息をとることができる |
OP (観察項目) |
・熱型 ・四肢冷感、悪寒の有無 ・発汗の有無 ・睡眠時間 |
TP (ケア項目) |
・クーリングを行う ・冷感や悪寒がある場合、足元や手先を温める ・室温や衣服の調整 ・ケアや処置は短時間で行う |
EP (教育・指導項目) |
・悪寒や発汗がある時には看護師に知らせるよう伝える |
ガンマグロブリンの副作用症状が起こる可能性がある
看護目標 | ・ショック症状を起こさない |
OP (観察項目) |
・バイタルサイン ・発疹の有無 ・点滴が正しくされているか |
TP (ケア項目) |
・投与量が適切であるか必ず確認する ・投与中は呼吸心拍、SpO2モニタリングする ・副作用出現時は直ちに薬を止め医師に報告する |
EP (教育・指導項目) |
・呼吸がゼーゼーしたり、新たな発疹が出てきた場合は、 直ちに看護師に知らせるよう家族に伝える |
冠動脈瘤形成に伴う全身状態の変調を起こす可能性がある
看護目標 | ・冠動脈瘤形成による異常が早期に発見される |
OP (観察項目) |
・心音、心拍数 ・不整脈の有無 ・顔色、四肢末端の皮膚色 ・心エコー、心電図の検査結果 |
TP (ケア項目) |
・冠動脈の太さに異常がある場合、モニタを装着する ・検査を安全に受けられるよう補助する ・不整脈発見時は医師に報告する |
EP (教育・指導項目) |
・顔色が悪かったり、ぐったりしている時は、 看護師に知らせるよう家族に伝える |
アスピリン内服中であり、出血傾向にある
看護目標 | ・出血を起こさない |
OP (観察項目) |
・出血の有無 ・活動状況 ・採血結果 ・アスピリン内服量 |
TP (ケア項目) |
・座位や立位が安定していない場合は、 必ず看護師か家族が付き添う ・角のあるおもちゃや棚に注意する |
EP (教育・指導項目) |
・内服の影響により出血しやすいことを家族、 本人に伝える ・患児が転倒、転落しないよう注意して 見ていてもらうよう家族に伝える |
患者に合った方法で、確実に内服する必要がある
看護目標 | ・指示量を確実に内服できる |
OP (観察項目) |
・薬の量、回数 ・内服状況 ・児の食事の好み ・家族が患児に与薬する時の様子 |
TP (ケア項目) |
・家族と共に、患児にあった内服方法を探る |
EP (教育・指導項目) |
・家族に与薬方法を指導する ・家族に内服の必要性を説明する |
家族の不安がある
看護目標 | ・家族が不安を表現することができる ・退院に際した家族の不安が軽減される |
OP (観察項目) |
・家族の言動、表情 ・患児の疾患に対する家族の理解度 |
TP (ケア項目) |
・家族の訴えを傾聴する ・児の状態を家族が把握できるよう、 医師からの説明の場を儲ける ・家族に質問の有無を確認する |
EP (教育・指導項目) |
・疑問や不安がある場合、 いつでも看護師に知らせるよう家族に伝える |
川崎病の患者の看護の注意点
最後に川崎病患者への看護師としての看護の注意点を3つご紹介いたします。
急性期は患者が不機嫌となることがあるため、安楽に過ごせるよう援助する
発熱による倦怠感や、口唇発赤、四肢末端の硬性浮腫に伴う疼痛があり、不機嫌様に啼泣する患者が少なくありません。
泣き続けることで体力も消耗します。患者がなるべく安楽に過ごせるよう、ベッド上でもできる遊びを提供したり、好きなものが食事に出るようにする、できる限り母と過ごせるようにするなど、配慮していくことが大切です。
本人に合ったアスピリンの内服方法を見つける
治療で飲み続けなければならないアスピリンは、水に溶けにくい薬です。小児の内服といえば水で溶かしてスポイトで与薬するのが一般的ですが、アスピリンの場合はそうもいきません。
そのため、乳児には粉のまま口に入れすぐに授乳を行う、幼児には、少量のお薬ゼリーで薬をサンドしてスプーンで与えたり、好きなおかずやデザート少量に、本人に見えない場所で薬を混ぜて食べさせるなど、月齢や本人の好みに合った工夫が必要です。
ポイント!
長期で内服するため、無理やり与薬する方法ではお互いにストレスになってしまうため、なるべく本人が嫌がらない方法を家族とともに見つけていき、家族だけでも与薬できるよう指導していく必要があります。
家族の不安を軽減する
患者が発熱が続きぐったりしていたり不機嫌であることが多く、心臓の合併症を起こす可能性もあることから、不安を抱える家族が多いです。家族が、状態の変化や検査結果の情報を共有できるよう調整しましょう。
また、いつもと違う様子の子どもに付き添うことで家族も疲弊しやすいため、不安を傾聴し、まめに声をかけていくことが大切です。