先天性異常児の妊婦と看護師の看護・関わり方について

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先天性異常児の妊婦と看護師の看護
   
じゅん 助産師
じゅんさん(助産師)

このコンテンツは、弊社が看護師免許を確認した看護師が執筆しておりますが、ご自身の責任のもと有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。

最近は超音波診断技術の進歩により、妊娠中に胎児異常が発見されるようになり、それを知らされた妊婦は悩み、そして自分を責めます。

そんなとき、看護師は妊婦に対してどのように関われば良いのでしょうか。

今回は、先天的異常児を抱えた妊婦の悩みや妊婦と接するときのポイント、さらに信頼関係の築き方についてまとめました。妊婦と接するときの参考になれば嬉しいです。

先天性異常児を抱える妊婦が抱える悩みとは

先天性異常児を抱える妊婦が抱える悩みとは

看護師は、先天性異常児を授かった妊婦に、我が子の将来を想像できないことや人工妊娠中絶の可能期間の悩みなど妊婦や家族が知りたいことを提供する必要があります

また、前例ではどのような経過をたどったことがあるのか、を教えることも妊婦にとっては非常に大事な情報です。妊婦やその家族が抱える悩みについて、以下に詳しく説明していきます。

我が子の将来が具体的に想像できない

先天性異常児を授かった妊婦は、医師から今お腹の中で胎児に起こっていること、今後産まれるまでに起こるかもしれない事態について詳しく説明を受け、動揺します。夫や家族に話し、さらに動揺は広がります。

そんな動揺が広がる中で、これからの将来どうしていけばいいのか、生まれてからの注意点などを質問する機会が見つけられず、出産に至ってしまう妊婦が多くいるのです。

人工妊娠中絶が可能な時期を聞きにくい

人工妊娠中絶が選択できる期間を聞きたいが、妊婦からは聞きにくい状況があります。

そもそも家族が反対している場合もありますし、妊婦も家族も出産か中絶かどちらを選択した方がいいのかと悩んでいます。

妊婦は中絶を選択する後ろめたさがある

先天性異常児を抱える妊婦を取り巻く状況は、様々です。しかし、「中絶」を選択するのは後ろめたさから選択しにくいと多くの妊婦は感じています。

なぜなら、社会的に中絶を前向きに捉えていないからです。

障害を持った子どもを授かった後の様々な選択にせまられる

医師から診断を受け、出産をするか中絶をするか等をどうするか妊婦と家族で考えなければなりません。

しかし、医師から一通りの説明を受けてその場では理解したつもりでも妊婦や家族は迷い、なかなか決断が下せません。

先天的異常児は依然として社会の偏見が残っているため、生きにくい環境にあるからです。

先天性異常児の妊婦に看護師が接するポイント

先天性異常児の妊婦に看護師が接するポイント

看護師が、先天的異常児を持つ妊婦に対してどのように接していけば良いのかについて、そのポイントを以下に詳しく説明していきます。

妊婦に寄りそうこと

妊娠したということで既に妊婦には不安がありますが、先天性異常児を授かったとなれば、不安は更に大きくなります。看護師は、そんな妊婦の心に耳を傾け、医師には聞けなかった話ができる機会を作ることが重要です。

妊婦が、病院の中で医師や看護師の間で飛び交う非日常の会話内容を理解することは、容易ではありません。

補足説明!

補足事項

看護師は現状を妊婦に分かりやすく説明をすることや、妊婦がわからない部分や不安なこと、悩み事などを気軽に話せる存在であることが大切です。

先天性異常児の妊婦に対して普通に接すること

妊婦が障害を持っている子どもを授かっていると分かっていても、分け隔てなく接する事が大切です。

障害を持っている子どもは可哀想だと無意識に感じていると、障害を持っている子どもを授かった妊婦に対応する際、腫れ物に触るかのような関わりを持ってしまいがちだからです。

可哀想だと思っている看護師の感情は、敏感になっている妊婦には伝わります。

そして、「私は可哀想なんだ、産まれてくる子もやっぱり可哀想なんだ」と思い込み、自分を責め続けてしまいます。

ポイント!

ポイント

妊婦に余計なストレスを与えないためにも、看護師はどのような妊婦に対しても同じ対応をする必要があります。

子どもが障害を持っていても尊い命を育てている母親の一人

どのような子どもであろうと、我が子がお腹に居て育てていくという経過に変わりはありません。尊い命を育てている1人の母親として、障害を持っていても特別ではない普通の関わりが妊婦に対する敬意となるのです。

先天性異常児の妊婦家族に看護師が接するポイント

先天性異常児の妊婦家族に看護師が接するポイント

看護師が先天性異常児を抱える妊婦の家族に接する際、家族が妊婦を支えていることを認めることや、相談しやすい環境を提供することが大事です。具体的な接し方についてのポイントを以下に詳しく説明していきます。

家族が妊婦を支えるのは大切であると言うこと

看護師が出来る支援として、家族が妊婦を支えている事は非常に大切だと教えるべきです。

胎児に異常があると告知を受けた段階で、家族は素直に喜べなくなっています。

ポイント!

ポイント
なぜ、うちの子どもが障害を持っているのか、何かの間違いかもしれないと、家族の中に起きている現実を受け入れられるまでに時間が必要です。

相談しやすい環境を提供すること

看護師は、医師には聞きにくい話を気軽に聞ける環境を提供することが大切です。

夫や両親など家族は、妊婦と一緒に医師からの説明を聞いたり、妊婦と話し合ったりします。

家族は、自分たちが動揺しながらも不安に駆られる妊婦を支えようと、必死に頑張ってしまいます。そのような余裕のない状態だと、悩みや相談したいことがあるときに、それらを聞ける看護師の存在は非常に大切になってくるのです。

先天性異常児の妊婦と看護師の信頼関係の築き方

先天性異常児の妊婦と看護師の信頼関係の築き方

看護師が先天性異常児を抱える妊婦と信頼関係を築いていくためには、妊婦の気持ちを受け入れることや、妊婦が事実を受け入れられるまで、寄り添うことなどが挙げられます。

以下に妊婦との信頼関係の築き方について詳しく説明していきます。

診断後の妊婦の気持ちを受け止める

看護師は、初めて医師から児の診断について告知を受けた時の、妊婦の気持ちを受け止めることが大切です。

我が子に障害があると聞かされ、動揺しない妊婦はいません。

そんなとき、動揺を隠せない妊婦に対して看護師は、医師には言えなかった妊婦の気持ちを聴き、受け止めることが重要です。

そして、相手を思いやる気持ちでいたわりの言葉をかけることで、信頼関係は生まれていきます。

子どもの障害が受容出来るかは告知の印象次第

初めて妊婦が胎児の診断についての告知を受けた印象が、子どもの障害を受容できるかどうかに深く関わってきます。なぜなら、妊婦の心に寄り添えているかどうかで、妊婦が事実に対しての受け止め方が変わるからです。

妊婦が子どもの障害を受け入れられるまで寄り添う

看護師は、妊婦に対して慌てず、急かさず、妊婦の心と会話しながら必要な時間を共有し、寄り添っていくことが大事です。

なぜなら、妊婦が子どもの障害を受け入れるには時間が必要だからです。

妊婦のマイナスの気持ちを変えるきっかけを作る

看護師が、妊婦に対して家族の会を紹介するといった配慮をすれば、妊婦の気持ちを後押しすることにつながります。

補足説明!

補足事項
同じ病気を抱えた子を授かった両親や家族の話を聞くという機会は、悲しい、辛いというマイナスイメージしか持てなかった妊婦の気持ちをプラスに変えるきっかけになるのです。

まとめ

参考文献は以下の通りです。

看護師が、先天異常児を抱える妊婦やその家族に接する際には、普通の妊婦と同じように接することや、相談しやすい環境を整えることが必要です。

また、障害を持って産まれてくる我が子を受け入れる時間、我が子とともに歩いていく未来を想像する時間等の時間も必要です。

看護師は、このような時間を妊婦や家族に寄り添い、話を聞くことが重要です。医師は診断に重きをおきますが、看護師には看護師ができる力で少しでも妊婦や家族の支えになる必要があります。

   
執筆・監修看護師

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