気胸患者への看護(症状・看護計画・注意点・スキル)について

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気胸患者への看護(症状・看護計画・注意点・スキル)について
   
雪村 看護師
雪村さん(看護師)

このコンテンツは、弊社が看護師免許を確認した看護師が執筆しておりますが、ご自身の責任のもと有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。

気胸とは、肺から空気が漏れて、肺が小さくなった状況のことです。

原因によって気胸は、自然気胸・外傷性気胸・医原性気胸に分類され、自然気胸の中でも原発性自然気胸と続発性自然気胸に分けることが出来ます。

原発性自然気胸はブラ、ブレブの破裂によるもので、続発性自然気胸は基礎疾患に伴う気胸となります。

このページでは、看護師に向けて気胸についての患者の症状・看護の注意点・看護計画・看護する際に必要なスキルについて詳しく説明していきます。

気胸の患者の症状

気胸の患者の症状

自然気胸の場合、20歳前後・長身・やせ型・男性が好発しやすいと言われています。

それでは、気胸患者の症状について見ていきましょう。

呼吸困難・胸痛・咳嗽など

気胸とは突然肺に穴が開き、胸腔に空気が貯留してしまう疾患のため、症状としては「突然の呼吸困難」「胸痛」「咳嗽」などがあります。

程度が重いものになると、チアノーゼ・頻呼吸・血圧低下なども挙げられます。

聴診でも呼吸音の異常が分かる

胸部の診察では、患側打診での鼓音・呼吸音の減弱が認められ、聴診でも著明に呼吸音の異常が分かり、胸部X線や胸部CTで肺の虚脱が発見されることがあります。

外傷性気胸や医原性気胸でも、基本的には症状や所見は同様と言えます。

軽度・中等度・高度気胸に分類される

気胸は、軽度・中等度・高度に分類され、自覚症状が少なく軽度気胸の場合は、安静にして外来で経過観察し様子をみることが多いです。

中等度以上の気胸については、入院し胸腔ドレナージによる持続的な脱気、または手術が必要となります。

気胸の患者で看護師が注意すべき症状

気胸の患者で看護師が注意すべき症状

看護師が気胸患者の看護をする際に注意しなけれがならない症状は、どのようなものがあるでしょうか。

以下で確認していきましょう。

呼吸困難に注意する

気胸の患者で看護師が注意しておきたい症状は、呼吸困難です。

呼吸困難出現時には呼吸方法を指導し、体位の工夫を行うなど速やかに援助することが必要です。

ポイント!

ポイント呼吸困難感として酸素飽和度の計測以外にも、表情や呼吸状態の観察を行うことで、変化にいち早く気づくことが大切です。

気胸患者の看護計画

気胸患者の看護計画

気胸の治療方法は、保存的治療もしくは外科的治療となり保存的治療には、胸腔ドレナージ・胸膜癒着術・気管支鏡下機関紙塞栓術が挙げられます。

再発を繰り返す場合や空気漏れ(リーク)の持続例、両側性の気胸などに対しては、胸腔鏡下手術または開胸手術で、肺部分切除術やブラ焼灼術などが行われます。

治療方法によっても看護内容が異なり、看護師としての関わりも異なりますが、予測される一般的な看護計画を説明していきます。

安静治療

看護目標 ガス交換障害が改善され肺の再拡張をはかることができる
OP
(観察項目)
・呼吸数
・呼吸パターン
・呼吸困難の有無
・酸素飽和度
・咳嗽
・呼吸音の聴取
・胸痛の有無
・左右呼吸音の非対称程度
・胸部X線検査データ
・血液ガスデータ
TP
(ケア項目)
・安楽な体位の工夫
・心身の安楽を図り酸素消費量をおさえる
・環境整備
・不安軽減の援助
・酸素投与と管理
EP
(教育・指導項目)
・呼吸困難時は速やかに伝えるように説明する
・胸腔内圧を高めないためにもなるべく努責はかけないようにするよう指導する。

保存的治療

看護目標 胸腔ドレナージが効果的に行われ、呼吸困難が軽減する
OP
(観察項目)
・呼吸数
・呼吸パターン
・呼吸困難の有無
・咳嗽
・呼吸音の聴取
・左右呼吸音の非対称程度
・胸腔ドレーンのエアリークの有無
・胸腔ドレーンの排液(血性・漿液性・混濁・量)
・胸腔ドレーン挿入部の皮膚の状態
(発赤・腫脹・疼痛の有無)
TP
(ケア項目)
・胸腔ドレーンの固定を確実に行う
・胸腔ドレーンの屈曲や捻転を防ぐ
・胸腔ドレーンバッグの固定を行う
・環境整備
・医師の指示のもと活動量を調整する
EP
(教育・指導項目)
・ドレーン挿入部の疼痛を我慢せずに伝えるよう説明する。

外科的治療

看護目標 術後合併症を起こさない
OP
(観察項目)
・疼痛の有無・部位・程度(フェイススケール)
・胸腔ドレーンの観察
(エアリークの有無・呼吸性変動・排液)
・胸腔ドレーンの固定
・ドレーン挿入部の皮膚の状態
・検査データ(WBC・CRPなど感染徴候)
・バイタルサイン
・呼吸状態(呼吸音の減弱、ラ音、痰量、酸素飽和度)
・食事摂取量
・睡眠状況
TP
(ケア項目)
・適切な鎮痛薬の投与(創部痛を緩和して深呼吸しやすく、喀痰喀出を促し早期離床に繋がる)
・創部に負担をかけないポジショニング
・身体の保清
・排泄介助
EP
(教育・指導項目)
・排痰法や咳嗽方法の指導
・胸腔ドレーンの取り扱いについて指導
・呼吸困難や胸痛があればすぐに看護師に伝えるように説明する

不安が緩和され退院できる

看護目標 不安が緩和され退院できる
OP
(観察項目)
・入院前の日常生活と退院後の日常生活
・疾患の理解や受け止め方
・必要としている情報の内容と量
・患者の表情や言動
TP
(ケア項目)
・患者の思いや症状の理解を聞く
・家族の思いや病状の理解を聞く
・必要時、医師や多職種の説明が聞けるように調整する
EP
(教育・指導項目)
・退院後の日常生活で留意する事の説明をする

気胸の患者の看護の注意点

気胸の患者の看護の注意点

気胸患者を看護する場合の看護師の注意点については、以下の通りです。

急性期の発症ということを念頭に置く

第一に気胸が予期せぬ急性期の発症ということを念頭におくことが重要です。

呼吸困難という症状は、日常で経験することは少なく死を連想させるため、そんな経験をした患者を理解して不安を和らげ、症状の緩和や治療に生じる疼痛を少しでも取り除く看護が必要です。

再発予防に向けた看護をする

気胸という病態を理解した上で、再発予防に向けての看護も重要と言えるため、疾患に対する理解を深めセルフケア行動が出来るように指導することが大切です。

気胸の患者への看護で求められるスキル

気胸の患者への看護で求められるスキル

看護師が気胸患者への看護をする際には、どのようなスキルが求められるのでしょうか。

以下で紹介していきます。

変化に迅速に対応するスキル

気胸患者のドレーン管理を怠れば、気胸の改善が見込めないだけではなく、感染症を引き起こしかねないため、しっかり観察して変化に迅速に対応するスキルが必要です。

補足説明!

補足事項ドレーンの屈曲・捻転・閉塞は、有効な脱気が図れなくなるだけではなく、排液が胸腔内に貯留することにつながります。

精神的援助のスキル

気胸患者は、突然の事態の変化から不安を抱えているため、精神的援助のスキルが必要です。

治療を受けるにあたって入院や手術というものは日常生活の中断を意味し、中断を余儀なくされた状況は社会的立場にも影響する事でしょう。

ポイント!

ポイント急性期は家族も不安に直面しているため、家族の不安や疲労についても十分に配慮をすることが必要です。

まとめ

参考文献は、以下の通りです。

気胸患者の看護を行う際には、突然の発症や呼吸困難から不安感を抱きやすい状況であることを理解し関わることが大切です。

気胸の分類によっても好発年齢が異なるため、年齢に応じて背景にある発達課題も踏まえて援助することが必要です。

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