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皮膚がんのほとんどが手術にて腫瘍部位を取り除くことが主要な治療となりますが、がんの種類や腫瘍の場所により看護師が配慮するポイントは変わってきます。
このページでは皮膚がん、特に代表される基底細胞癌、有棘細胞癌、悪性黒色腫の看護について説明をしていきます。
皮膚がんの種類とその症状と治療
皮膚は上層から表皮、真皮、皮下組織から構成されます。(上画像)
表皮はさらに基底層、有棘層、顆粒層、角質層の4層(上画像)に分かれています。
皮膚がんはこの皮膚を構成する細胞から発生し、発生した場所やがん細胞の種類によって区分されます。
以下で簡単に皮膚がんの種類やそれぞれの症状と治療について説明します。
基底細胞癌
皮膚がんの中で最も頻度が高く、局所浸潤を主とし、転移することは稀です。顔面特に鼻周囲・眼瞼・耳周囲に多発します。
治療について
手術にて切除を行いますが、多くが顔面に発生するため、切除後の皮膚欠損部位に対して見た目を損なわない再建手術をすることもあります。
有棘細胞癌
基底細胞癌に次いで発生頻度の高い皮膚がんです。顔面や手背など露光部に多くみられます。放置すると深部の筋・骨中に浸潤し、所属リンパ節転移や血行性転移をきたして死の転帰をとることもあります。
治療について
まずは手術にて切除をしますが、再発を防止するために、病巣よりも一回り大きく皮膚を切除します。進行している場合は手術前に放射線治療や化学療法を行うこともあります。
有棘細胞がんで用いられる抗がん剤の代表的な例として、以下があげられます。
- CA療法:シスプラチン(もしくは、カルボプラチン)+ドキソルビシン(もしくは、エピルビシン)
- FP療法:フルオロウラシル+シスプラチン
- 塩酸イリノテカン
- PM療法:ペプロマイシン+マイトマイシン
- PEP療法:ペプロマイシン
悪性黒色腫(メラノーマ)
メラニンを合成する細胞、メラノサイト系細胞のがん化によって生じる悪性腫瘍であり、転移を生じやすく、極めて悪性後の高いがんです。
悪性黒色腫の早期症状として、ABCDEの5つの特徴があるといわれています。
- Asymmetry(不規則型)
- Bordeline irregularity(境界不鮮明)
- Color variegation(色調多彩)
- Diameter enlargement(拡大傾向:直径6mm以上)
- Elevation of surface(表面隆起)
病型分類について
悪性黒色腫(メラノーマ)は、さらに以下の4つに分類されます。
末端黒子型黒色腫 | 日本人にもっとも多く、足の裏や手のひら、手足の爪などに発生します。 |
表在拡大型黒色腫 | 白人に多い病型ですが、近年では日本人にも増加しています。ほくろの細胞から発生すると考えられ、体幹や手足に発生します。 |
結節型黒色腫 | 全身のどこにでも発生します。 |
悪性黒子型黒色腫 | 高齢者に多く、顔面、首、手背など日光に照射されやすい露出部位に発生します。 |
治療について
治療方法は進行の程度や体の状態などから検討されます。基本的には原発巣の切除を行います。転移がない場合は必要に応じてセンチネルリンパ節生検を行います。
この時に転移がみとめられればリンパ節郭清を行います。また、皮膚転移・皮下転移がある場合は拡大切除、薬物療法、放射線治療を行い、リンパ節郭清を行います。
ポイント!
どの病期でも治療後は再発・転移の予防を行います。方法としては定期的な経過観察やインターフェロン治療、薬物療法を行います。
薬物療法について
悪性黒色腫は非常に予後の悪い疾患であるにもかかわらず、薬物治療の進歩が長年ありませんでした。そのため、進行症例の予後の改善はなされないままでした。しかし近年、多くの新規薬剤が出てきており、我が国でも以下のように保険適用となっています。
- 免疫チェックポイント阻害薬(抗PD-1 抗体)ニボルマブ;2014 年7 月承認
- 低分子性分子標的薬(BRAF 阻害薬)ベムラフェニブ:2014 年12 月承認
- 免疫チェックポイント阻害薬(抗CTLA-4 抗体)イピリムマブ;2015 年7 月承認
- 低分子性分子標的薬(BRAF 阻害薬)ダブラフェニブ,(MEK 阻害薬)トラメチニブ:2016年3 月承認
皮膚がんの患者の看護計画
皮膚がんの治療方法の第一選択は腫瘍切除となります。ここでは手術に必要な看護計画をあげていきます。
手術による創部感染リスク状態
看護目標 | ・創部が感染を起こさず治癒することができる ・創部の安静を保つことができる ・植皮部・採皮部の消毒を患者自身で行うことができる |
OP (観察項目) |
・検査データ(CRP、WBCなど) ・バイタルサイン ・倦怠感 ・疼痛の有無 ・手術創の観察 ・発赤、熱感、疼痛の有無の確認、出血の有無、ガーゼ汚染の確認、掻痒感 |
TP (ケア項目) |
・創部の処置を行う ・創部の安静を保つことができるよう必要であれば枕を使用する ・入浴許可がおりるまで清拭で対応し、創部安静のために体位制限があれば介助し、全身の保清を行う |
EP (教育・指導項目) |
・創部を安静に保つよう指導を行う ・創部を圧迫しないよう指導を行う ・退院に向けて創部の洗い方や消毒の方法、必要であれば軟膏塗布の方法を説明する |
手術後の安静やボディイメージの変化に対する不安
看護目標 | ・創部の状態を受け入れることができる ・不安について自由に表出することができる ・安楽に入院生活を送ることができる |
OP (観察項目) |
・睡眠状態 ・不安言動の有無 ・食欲、食事摂取量 ・創部に対する発言 |
TP (ケア項目) |
・患者の思いを傾聴する ・医師の指示に従って必要時は眠剤を使用する |
EP (教育・指導項目) |
・患者、家族へ手術前に手術後の安静はどのような状態になるのか説明する (ベッド上でできる、気分転換のできるものを事前に用意をしてもらう。) ・患者の考えや感情を自由に表現してよいことを伝える ・創部は時間にたつにつれ徐々に目立たなくなることを説明する |
皮膚がんの患者の看護の注意点
皮膚がんの患者で看護師が注意しなければならない症状は以下の通りです。
創部感染 | 手術後、創部に感染がないか観察することや清潔に保つことが重要です。 |
・バイタルサイン ・検査データ ・ガーゼ汚染(浸出液や出血の確認) ・皮膚の様子(発赤、熱感、疼痛) ・倦怠感の訴え |
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植皮術や皮弁形成術を行った場合 | 皮膚が生着しているか、安静を保つことができているのか観察する必要があります。 |
・皮膚の色(血色不良はないか) ・植皮部位を圧迫しない体位になっているか観察を行う |
手術部位、手術方法を把握し手術後の状態を想像する
腫瘍の種類や大きさ、部位によって形成術を行ったり、ドレーンが入ったりします。
特に再建手術を行う場合は欠損部位へ皮弁術を行う場合もあるため、皮膚が生着するために、皮膚を圧迫させないよう患者へ指導を行ったり、皮弁が血行不良を起こしていないか観察を行う必要が出てきます。
そのため、事前に患者へ手術後はどのような状態で安静となるのか説明したり、患者が安楽に過ごすことができるよう枕の調整を行います。
手術後のベッド上安静はかなり苦痛で精神的ケア
特に、下肢に創部がある場合は下肢を挙上してのベッド上安静となります。さらに手術部位を圧迫しないようできる体位も制限が出てくるため、患者の精神的苦痛は大きくなります。
そのため、手術前にどのような状態でベッド上安静になるのかや、安静中は日常のケアは看護師で介助することを説明することにより患者は安心できますし、心構えすることもできます。
この説明により、安静中に気分転換ができるものを事前に用意する患者もいます。
ボディイメージの変化に対する不安の説明
特に顔面の手術になると目立つ部位のため、不安に感じる患者もいます。
時間の経過とともに目立たなくなることを説明する必要があります。
退院後の創部の処置
退院後もしばらく創部を消毒したり、時には軟膏を塗布する必要があります。
また、入浴もしばらくできない場合もあります。患者が安心して退院ができるよう創部の対応方法を患者や患者の家族へ指導を行う必要があります。
まとめ
参考文献:
- 系統看護学講座専門(16)皮膚(医学書院、2008)
- 人体の構造と機能からみた病態生理ビジュアルマップ[5](医学書院 2010)
- 「悪性黒色腫(メラノーマ)薬物療法手引き」version 1.2016 一般社団法人日本皮膚悪性腫瘍学会様
- 「皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン第2版」日本皮膚科学会ガイドライン 様
皮膚がんは、がんの種類やがんの位置によって、予後や手術方法、術後の安静方法が変わります。
局所麻酔で切除してすぐに退院できる場合もあれば、全身麻酔後、長期間ベッド上安静をしたあと、化学療法をそのまま行う場合もあります。
それぞれの患者に合った看護を行っていきましょう。